万華鏡
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第八十話 本番その四
「じゃあね」
「うん、いよいよね」
「本番よね」
「かなり緊張してきたわ」
琴乃は笑って四人に言った。
「本番かって思うと」
「ライブの時みたいよね」
彩夏は笑顔だ、だがその笑顔の中に確かにそれがある。
「緊張するわ」
「完走しようね」
里香はかなり切実な顔で仲間に言った。
「絶対に」
「うん、皆でね」
「完走しような」
景子と美優がその琴乃に応える。
「何があってもね」
「怪我をしないでな」
「準備体操しよう」
琴乃は里香達のやり取りを聞きつつこう提案した。
「身体ほぐそう」
「そうね、まずはね」
「身体をほぐしてね」
「身体をほぐしたらね」
それで、というのだ。
「怪我もしないし」
「しかもよね」
里香もこう言う。
「緊張もほぐれて」
「そう、緊張が過ぎたらね」
「かえってよくないからね」
「だからね」
それでだというのだ。
「身体ほぐして」
「そうしてね」
「走ろう」
こう言ってだ、自分からだった。
アキレス腱を伸ばす、すると四人もだった。
準備体操に入った、勿論里香もそれをして。
五人で輪になってそれで念入りに準備体操をした。それが終わってからだ。
里香は笑顔でだ、こう言った。
「身体ほぐれて」
「それで、よね」
「落ち着いたわね」
「うん、じゃあね」
それでとだ、里香はその笑顔で四人に言った。
「完走しようね」
「是非ね」
「頑張ろう」
五人は自然にだ、手を重ね合わせて。
「完走!」
「皆でね!」
五人で言い合う、そしてだった。
スタートラインに着いた、そこにはもう一年の女子生徒が全員いた。見れば誰もが緊張している顔である。
いよいよピストルが鳴る時だった、その時に備えて。
全員構える、走る構えを。
そうしてだ、遂に。
ピストルが鳴った、それと共に。
皆一斉に走りだした、勿論その中には琴乃もいる。琴乃は彼女のペースで走りながら進んでいた。すると。
その横に美優が来た、美優は走りながら琴乃に言ってきた。
「やっぱり速いよな」
「そうかしら」
「琴乃ちゃん中学はバスケ部だったんだよな」
「ええ、そうよ」
「やっぱり走ってたよな」
「うん、それなりにね」
そうしていたとだ、琴乃は走りつつ美優に答えた。
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