ロックマンX~朱の戦士~
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第十五話 Fortress Tower
前書き
オクトパルドを下したルイン。
次は…。
ゼロはシグマの足どりを追いながら、イレギュラーを排除していたが、ハンターベースからの通信で街のシンボルとなるはずだったタワーにイレギュラー反応があると聞いて、タワーに侵入した。
タワー内部にはメカニロイドと緑色のレプリロイドがいたが、ゼロはバスターでそれを薙ぎ払いつつ、梯を登る。
途中の警備システムもかわしながら迅速に奥へと進むと昇降機に辿り着く。
昇降機はゆっくりとした早さで上がっていく。
ゼロ「ん…?」
微かな物音に反応し、上を見上げると真上からメカニロイドが降ってくる。
ゼロ「なるほど、そう簡単には行かせてもらえないわけか」
ゼロは真上から降ってくるメカニロイドをかわすとバスターで破壊する。
それを数回繰り返すとタワーの最上階付近まで着いた。
そして跳躍すると梯を掴み、上に登る。
途中で警備メカニロイドが攻撃を仕掛けてくるが難無くバスターで破壊する。
そして頂上の入り口に辿り着いたゼロは壁を蹴り上げ、砲台メカニロイドを破壊し、台座に乗り移る等を繰り返し、最後に梯を登り、扉の前に立つ。
ゼロはオペレーターから聞いた情報を検索する。
時空の斬鉄鬼…ブーメル・クワンガー
マンドリラーと同じく、第17部隊に所属していた。
行動が素早く、人間はおろかレプリロイドでさえ目に見えない速さで動き、イレギュラー達から恐れられていた。
また、頭部のハサミで相手を捕まえてそのまま天井に投げ上げるなど、細身の身体に似合わぬ怪力の持ち主でもある。
蜂起後は都市のシンボルになるはずだったタワーを制圧して、侵入者を迎え撃つ要塞に作り変えたらしい。
ゼロ「あのクワンガーもか…まあ、イレギュラーなら倒すまでだ…」
扉を強引にこじ開けると、すらりとした細身のフォルム。
人型でありながらも昆虫を窺わせる2本の角が装着された頭部。
赤を基調としたアーマーには優美な装飾が施されている。
ゼロ「クワンガー、お前をイレギュラーとして処分する」
クワンガー「ふむ、攻撃力、機動力、判断力…戦闘スペックは至って良好…いえ、それどころか向上している……やはりシグマ隊長が仰っていたように、あなたにもエックスとルインと同じように可能性がありそうです」
ゼロ「可能性だと?どういうことだ?」
クワンガー「本来なら機械である我々レプリロイドに“成長”という概念はない。レプリロイドは造られた時点で全ての能力が完成している。しかしあなた方3人は違う。エックスは戦いの中で悩みながら…あなた方は激戦を潜り抜ける度に凄いスピードで全てのステータスが上がっていく。」
ゼロ「それが可能性だと?ふざけたことを…お前もここで倒してやる。シグマと同じように妄想に取り付かれやがって」
腕をバスターに変形させてクワンガーに向ける。
クワンガー「やれやれ、相変わらず会話が通じませんねあなたとは。まあいいでしょう…ゼロ、今のあなたのスペックを見せてもらいましょうか」
クワンガーが凄まじい勢いで床を蹴ると神速の如き速度でゼロに肉薄する。
ゼロ「っ!!」
咄嗟にゼロは捻りながら横に回避し距離を取る。
フルチャージショットを喰らわせようにもまともに受けてくれる相手ではないので通常弾を連続で放つ。
老人により、バスターの通常弾の威力も上がっている。
クワンガーは装甲を極限まで削ぎ落として機動力を追求したレプリロイドだ。
それなりの効果は期待出来る。
クワンガー「反応速度も以前より上がっている…」
回避行動を取りながら冷静にゼロの戦闘力を分析する。
バスターの威力も弾速も以前とは桁外れだ。
クワンガー「どういう改造を行ったのかは知りませんが、見えているんですね、私の動きを…以前のあなたはその目で捉えることすら出来なかったというのに。今のあなたは、私を的確に捉えた」
ゼロ「…………」
クワンガー「どうやらこれは本気で行かなければならないようですね」
頭部のカッターを放ちながらクワンガーはゼロに接近し、手刀を振るう。
ゼロはそれを回避し、エネルギーを収束させた拳で殴り掛かる。
クワンガーはそれを苦もなく避けるも、拳から放たれた凄まじい衝撃波が壁をぶち抜いた。
ゼロ「チッ…“時空の斬鉄鬼”の異名は伊達ではないということか……」
クワンガー「あなたこそ、それでこそシグマ隊長に次ぐ実力者と言われた男ですね」
スピードではこちらが上回るが、かつての時から総合的な能力はゼロが上回る。
そして何より…。
かつてのゼロはシグマを追い詰めた程の実力者なのだ。
クワンガー「さあ、行きましょうか」
クワンガーが一気に跳躍する。
ゼロもそれを追うように跳躍して追い掛ける。
ゼロ「(速い!!)」
強化され、機動力も以前とは桁違いに上がっているはずなのに速度は僅かにクワンガーが上回っている。
クワンガーも自身について来るゼロを油断なく見つめる。
クワンガー「(やはり以前とは性能が桁違いですね…一体どうやってゼロの強化を…?)」
ゼロはエックス達と同じようにブラックボックスの塊でパーツを造ることもままならない。
今の時代にゼロの強化を行える科学者がいるわけがない。
なら…。
ゼロ「アースクラッシュ!!」
クワンガー「っ!!」
クワンガーに向けて放たれる衝撃波。
それを受ければ確実に破壊される。
クワンガーは直ぐさま回避する。
ゼロ「チッ!!」
避けられたことに舌打ちし、ゼロはバスターを再び放つ。
クワンガー「(考え事をしている暇はありませんね。一気にケリをつけなくては…)」
戦闘力の殆どはゼロが上回っている。
今は何とか速さでごまかしているがそれは時間の問題だろう。
ゼロに追い掛けられていたクワンガーは距離を取るのを止め、一気にゼロに突進する。
虚を突かれたゼロはまともに突進を受け、バランスを崩す。
更にゼロの銅を頭部の角で掴むとゼロを天井に叩きつける。
ゼロ「ぐっ!!」
ゼロは床に落下し、仰向けに倒れるが、すぐに起き上がる。
クワンガー「ほう、あれを受けて大してダメージを受けていないとは…」
ゼロ「………」
ゼロは再び拳にエネルギーを収束する。
クワンガー「無駄撃ちを止めて一撃必殺に賭けようとしているのでしょうが無駄な足掻きですよ」
ゼロ「無駄な足掻きかどうかは…やってみなければ分からん…!!」
クワンガー「ふふ…ではこれでどうです?久方ぶりに速度のリミッターを外させてもらいます」
クワンガーがリミッターを解除すると凄まじい速度でゼロに手刀を浴びせる。
しかし強化されたアーマーには僅かなダメージしか受けない。
しかし、目にも止まらない動きでゼロの全身に攻撃を加えていく。
ゼロ「ぐああああ!!」
クワンガー「ふははははは!!どうですゼロ?私がこうして絶えずに動き回り、あなたに一撃を与え、離脱を繰り返す。あなたの射程距離内にいるのはほんの一瞬だけ!!こうしてヒット&アウェイを繰り返しているだけであなたの体力は削られていくのです!!」
ゼロ「ぐっ…」
クワンガー「この勝負…私の勝ちです!!」
ゼロの全身に怒涛の凄まじい連撃が浴びせられ、ゼロは床に仰向けに倒れた。
ゼロ「(な、何て奴だ…速度だけならシグマと互角…いやそれ以上だ…)」
リミッターを解除したクワンガーの動きはゼロですら見切れない程であった。
ゼロ「(しかし、何故これ程の力を持っていながら最初からこれを使わなかった…?余裕か?いや、そんなはずはない…一撃を受けるだけで命に関わるような奴だぞ…)」
クワンガーは極限まで装甲を減らして機動力に特化したレプリロイドだ。
故に一撃を受けただけでも致命傷になりかねない。
ならば何故…。
ゼロ「…!!」
理由に気づいたゼロはクワンガーに気づかれないように拳にエネルギーを収束する。
クワンガー「さあ、止めですよゼロ。後でエックスとルインもあなたの後を追わせてあげましょう!!」
クワンガーが跳躍し、ゼロに向かって突進。
ゼロは内心でほくそ笑む。
ゼロ「アースクラッシュ!!」
床に拳を叩きつけると床に亀裂が入り、破片と衝撃波がクワンガーに直撃する。
クワンガー「ぐああああ!!」
破片と衝撃波をまともに受け、全身に亀裂が入り、身体から火花が出ている。
ゼロ「いくらお前でも空中ではまともな回避行動は出来ないだろう…それに仰向けになれば正面から攻撃するしかない…一種の賭けだったが…俺の勝ちだクワンガー!!」
クワンガーに向けて放たれたフルチャージショット。
クワンガー「(やはりそうでしたか…あなたもエックス達と同じ可能性を秘めし者。精々頑張ることですね、紅いイレ…)」
胸中の言葉を言い切る前に砲撃に飲み込まれるクワンガー。
装甲を極限まで減らしてまで機動力を追求したクワンガーに耐えられるわけがなく消滅した。
ゼロ「…何とか勝てたか……」
予想以上の強敵を倒したゼロも安堵の息を吐いた。
可能性という言葉に一瞬考えそうになるが所詮はイレギュラーの戯れ言だと思い、タワーを後にした。
後書き
クワンガーを撃破したゼロ。
一応この作品ではクワンガーは速度だけならシグマやゼロを遥かに上回る設定です。
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