戦国異伝
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第百六十八話 横ぎりその十
「この小田原を拠点としてな」
「ですな、では」
「東に」
こうしてだった、北条の白い軍勢は小田原から東に進んでいった。北条家は武田と上杉が織田と戦っている間に関東を掌握せんとしていた。
それは西もだった。安芸の吉田郡山城にいる毛利元就もまた家臣達に告げていた。毛利家の緑の服が並ぶ中でだ。
「山名も浦上も倒してじゃ」
「山陽と山陰をですな」
「どちらもですな」
「そうじゃ、手に入れる」
まさにというのだ。
「よいな」
「それで父上」
隆景が元就に問うてきた。
「播磨はどうされますか」
「あの国か」
「完全に織田家のものになっていますが」
「四国もです」
四国については元春が言ってきた。
「伊予の他は全て織田家のものですが」
「そうじゃな、わしは天下は望まぬ」
このことをだ、元就はここで言った。
「決してな」
「では」
「織田家とは」
「争うつもりはない。しかしじゃ」
それでもだというのだ。
「織田家は天下布武を掲げておるな」
「即ち天下を全て織田家のものとするのですな」
嫡男の隆元だった、ここで言ったのは。
「そうなりますな」
「そうじゃ、だからな」
「こちらは攻めるつもりはないですが」
「織田家はそうは見ておらぬであろう」
それでだというのだ。
「一戦交え毛利の力を見せてな」
「国を守るというのですか」
「家もな」
毛利家もだというのだ。
「どちらも守る」
「その為にですか」
「そうじゃ、織田家とは一銭交えるのを覚悟しておる」
元就は息子達だけでなく家臣達にもはっきりと言った。
「しかし織田家の領国には興味はない」
「だから攻め取らぬのですな」
「播磨も四国も」
「うむ、全くな」
それはしないというのだ、元春と隆景への言葉だ。
「それは考えておらぬ」
「我等は山陰と山陽」
「その二つですか」
「それでよいのじゃ」
それ以上は望まぬというのだ。
「ではよいな」
「はい、では」
「東に」
「既に尼子は滅ぼした」
宿敵であったこの家をだ、毛利は遂に滅ぼしたのだ。
「まだ残党はおるがな」
「山中鹿之介ですな」
「そして尼子十人衆ですな」
「うむ、あの者達がおるがな」
「あの者達ですが」
その山中のことがここで話された。
「どうやら織田に」
「つくつもりか」
「その様です」
「ふむ。左様か」
「このことからもですな」
「尼子は放っておけぬ」
例えそれが残党だとしてもだというのだ。
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