戦姫絶唱シンフォギア/K
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EPISODE11 能力
~AM 10:00 私立リディアン音楽院地下 特異災害対策機動部二課本部~
「対聖遺物…ですか?」
了子の説明に響がおうむ返しに言葉を発する。アマダムに備わっている力の一旦としてネフシュタンの鎧の機能が著しく低下したのがその証明だと言う。
「クウガのから拳や蹴り、武器を通して打ち出されるエネルギーには発動した聖遺物を停止させる力があるの。これを封印エネルギーと呼ぶわ」
「あの棒も封印エネルギーの塊だ。手にした物質を自らの武器に変換し、それを相手に直撃させることで封印エネルギーを流し込み機能を停止させる。やりようによっては破壊や強制解除させて引っぺがすこともできるだろうな」
つまり、あの姿――――クウガの時の雄樹は対聖遺物のスペシャリストということになる。言い方を変えれば最終兵器ともなるだろう。本人はそれを絶対に望まないだろうが。だが戦力としてこれほど頼もしいものはない。次ネフシュタンが出てきてもこの力があれば対抗策としては充分すぎるほどのものだ。
が、そんな力になんのデメリットもないはずがない。
「一見有効なものに見えるけど・・・・雄樹君にとっては酷な話になるわ」
なるほど。この場に本人がいないのはその為か、と翼は考察する。
「このアマダム、一度装着すると二度と外せないんだ」
「二度とって、どういうことですか?」
「里友君」
オペレーターの里友あおいに促し、正面の大型モニターに雄樹のバイタルチェックの図とその際に撮られたレントゲン写真を表示する。身体中になにやら神経みたいなのがまるで蜘蛛の巣のように張り巡らされ、それが腹部を中心に広がっているのがわかる。そしてその中心にあるのが――――アマダムだ。
「見てわかるとおり、アマダムから糸のようなものが伸びてるわね。これ・・・・全部神経系のものなの」
「神経系…ってことは・・・・」
「ああ。アマダムと雄樹君の身体はまさに一心同体。全身張り巡らされた神経系を活発化させ、特殊なエネルギー波で鎧を展開。強化された肉体は人知を超えた力を発揮する・・・・その結果がクウガと言うわけだ」
「そんな…」と翼が驚愕しているのを見て響は一人話についていけずに首をかしげている。まだ砕いて説明する必要があるようだと了子は苦笑いした。
「つまり、クウガになっても生身で戦っているのとさほど差はないってこと。あれはあくまで強化服。ダメージを軽減したりはしてくれるけど切られれば血は出るし、腕を折るほどの衝撃が来れば骨も折れる。響ちゃんや翼ちゃんの纏ってるギアとは違って雄樹君の方はちょっとデリケートなのよ」
「ギアの場合、奏者を保護するための特殊なハーモニクスフィールドというものが常時存在する。これはノイズに対抗できる力の一旦としてあるが、クウガの場合それが存在しない。アマダムから伸びた神経が直接それと同等の力を放っているためにフィールドは存在せず、ダメージを受けた際の衝撃はかなりのものとなるだろう」
故に、対聖遺物の聖遺物としてある。ノイズへの対抗はあくまでもオマケであり、本来の目的は悪用された聖遺物に対しての対抗策として用いられていたということになる。いくら聖遺物の欠片といえど、悪用だれたりされない可能性がないとも言いきれないからだ。そのことを踏まえ、古代の人間たちはこれを作ったのだろう・・・・というのが、了子と弦十郎がだしたもっとも答えに近い推論。
暴走した力を抑制、あるいは消滅させるのもまた同じ力、というわけだ。
「着ければ計り知れないほどの力を、しかし代償として戦う宿命を背負うことになる・・・・この部分だけは私達と同じということか」
彼もまた、防人の運命を背負った者。望む望まないに関わらず一度手にしてしまったら二度と戻れぬ修羅の道。
「・・・・本人にはかいつまんでちょっとだけ説明してあるわ」
了子の言葉に響は引っかかりを覚える。かいつまんで、ということはごく一部のことしか説明されていないということ。つまり、この詳細を雄樹本人は知らない。
「なんで教えないんですか?こんな大事なこと!」
「・・・・彼の力は我々にとっても必要不可欠なものだ。コレを話して戦わないと言われれば強制的にやらざるを得なくなるからだ。すでにこれは各国政府にも通達されている。そうなれば――――」
「本人の意志に関わらず、コレを利用しようとする人間が出てくる。特に米国政府は黒い噂が絶えないと聞くからな」
「もし雄樹君がこの事を知って、戦うことを拒絶した場合。本人の意志を無視して強行手段をとる機関がでてくるってことよ。あなた達の戦闘記録とかは他の特異災害対策機関と共有しているから、それを見て利用しない人間もいないとは限らないのよ。・・・・あなた達子どもを守るのも、私達大人の役目ってこと」
それでも、と響は思う。大切な事実を知らされないままに戦うなんて、酷なことこの上ない。ましてや装着者本人がそれを知らないというのはいかがなものか。
でも、知らないほうがいいというのもあるのかもしれない。知らない方が迷いはない。
知らないという罪と、知りすぎる罠。はたしてどっちがいいのだろうか。難しいことを考えるのは得意ではないが、こういうことは考えてしまう。
「・・・・ま、今すぐ何かしらの危険があって、雄樹君がどうにかなっちゃうってわけじゃないから安心して」
了子が努めて明るく振る舞う。暗い流れを断ち切るように手をパン、と鳴らし、話を切る。
「そういえば雄樹さんは?」
「ああ、ユウ兄なら今学校ですよ。未来と一緒です」
後書き
とりあえずクウガ=対聖遺物用兵器、と考えていただければ。ノイズへの対抗はこれもまた聖遺物の為、設定が矛盾していることに触れてはいけない。
雄樹もまだ未成年。子供。それを守るのは弦十郎立OTONAの使命。戦うことを背負わせてしまう代わりに彼らの日常はせめてなにがなんでも守り、無事にそこに帰ってくるよう全力でサポートをするというのがやるべきこと。
そして次回は未来さんのターン。原作二期本編でどエライことになってますがまだこの未来さんは日常の象徴。未来は原作仮面ライダークウガでいう五代みのりさん的立ち位置かな、と。
いろんなキャラの葛藤があるのもシンフォギアだったりクウガだったり。十人十色という言葉があるようにいろんな考えや想いがあるからこそそこに物語はある。迷いのない人間なんて、ただの機械にすぎないのではと考察。
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