ハイスクールD×D 新訳 更新停止
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第3章
月光校庭のエクスカリバー
第70話 その間に…
前書き
今回、アルミヤとアンドセルの戦いの決着がつきます。
「……単純なトリックだな。幻術で本来の刃を風景に溶け込ませ、幻覚の刃を作り、回避したと見せ掛け、本来の刃によってダメージを与える。この肩と頬の傷はそれによる物と言う訳だ」
「……一度受け、一回よく見ただけで見抜くとは、流石ですね」
トリックを見破られたにも関わらず、彼は未だ余裕の表情をしていた。
「ですが、この聖剣の力はこれだけではありません!」
次の瞬間、彼の姿が揺らぎ、複数の残像が生み出されていた。
「……幻覚による残像か…」
「まだです!」
今度は周囲の風景が歪みだし、辺りの地面が盛り上がったり、陥没したりし、あげくには上下左右が反転しだした。
「いかがですか?この夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)の力は?」
「………」
「これで貴殿の視覚を封じたも同然でしょう」
……確かに、これだけ見ている風景を歪められた事で私の平衡感覚は少々こころもとない状態であった。
彼の言う通り、視覚はほぼ役にたたないだろう。
「貴殿の末路は私に倒される運命のみです!」
「………」
「フフフ、もはや言葉もありませんか?」
「………」
私は彼の言葉に耳を貸さず、瞑目する。
「諦めましたか。では、その命、神に捧げてあげましょう!」
ダッ!
「ハァァァッ!!!!ご覚悟をォォォッ!!!!」
「……ふぅ…」
ガキィィン!
金属同士が擦れ合う音が辺りに響く。
「何!?」
彼の驚愕の声が耳に入る。
先程の金属音は私が手に持つ聖剣で彼の半月斧(バルディッシュ)を受け流した時に生じた物であり、彼はその光景に酷く驚いたのだ。
「バカな!?どうやって私の攻撃を!?」
「視覚が役にたたないのであれば、他で補えば良いだけの話。耳を澄ませば、貴様の足音、半月斧(バルディッシュ)が空気を裂く音などが容易に聞き取れる。それに貴様は殺気を無駄に放出し過ぎている。さらに分かり安過ぎる。それでは自分の居場所を教えている様な物だ。が、一番の要因は私が戦闘時に普段から行っている感知方法による物だがな」
「……何?」
「自身を中心に聖剣のオーラを薄く放出し、反射による揺らぎで探知する、聖剣のオーラによるレーダー様な物による探知法だ。ただ、視覚を惑わすだけの幻術など、私には通用しない」
「……クッ、聖剣が、エクスカリバーの力が通用しないなんて言う事が…」
「違うな、貴様がその聖剣を扱いこなせていないだけだ」
「……グッ……オノレェェェッ!!!!」
両の手でそれぞれ半月斧(バルディッシュ)と聖剣を握り、彼は駆け出す。
私は駆け出しながら、手に持つ聖剣を前方に投擲し、新たな聖剣を作り出す。
「こんな物ッ!!」
ガキィン!
投擲した聖剣は半月斧(バルディッシュ)によって弾かれる。
が、その時には既に私は彼と肉薄していて、半月斧(バルディッシュ)での迎撃は不可能な状態であった。
「ハァッ!!」
彼はもう片方の手に握られている聖剣を振るう。
「………」
ガキィィン!
「フッ!!」
ズバッ!
「ガァァァァァッ!?!?!?」
振るわれた聖剣を片方の聖剣で受け流し、もう片方の聖剣で彼の聖剣を握っている腕を斬り飛ばす。
斬り傷から鮮血が吹き出、彼は絶叫しながら半月斧(バルディッシュ)を落とし、斬り傷を押さえ、膝をつく。
「グッ……ガッ…ガ…ガァ…ッ!?…」
「終わりだ」
「……まだです!…まだだぁぁぁぁッ!!!!」
彼は半月斧(バルディッシュ)を拾い上げ、斬り掛かってくる。
ズバッ!
私はそれを回避し、肩口から横腹にかけて聖剣を一閃する。
「……バカな…」
彼は力無く倒れ伏す。
が、未だに這いずりながらも立ち向かってくる。
「………まだ…だ……まだ…私は……ここで…終わる訳…に…は………彼女の……妻…の……かた…き…を……悪魔…共を……根絶や…し…に……す…るまでは………」
「………」
「…………主よ!……どうか私に……我に救いを!……」
「……貴様に救いが来る事は無い…」
私はトドメを指そうと、聖剣を握り締めた瞬間…。
「……ッ!?ガッ!?ガァァッ!?ガァァァァァッ!?!?!?」
「ッ!?」
何が起こってる!
突然、彼は胸を押さえ、苦しみ出した。
「何だこれはッ!?ガァァァァッ!?!?……ア…アア…………」
「………」
「……………」
私は彼の脈を測るが、既に絶命していた。
これは…一体?
(……考えても仕方がない。今はエクスカリバーの回収が先決だ…)
私は斬り飛ばした腕と一緒に飛ばされたエクスカリバーの下に向かおうと、そちらに視線を向けようとした瞬間…。
「ッ!?」
ドゴォォォン!
周囲に放出している聖剣のオーラに強い揺らぎを感じ、その場から跳び去った瞬間、巨大な何かが先程まで私が立っていた場所に叩きつけられた。
それは剣と棍棒を混同した様な物であり、そして、それを持つ者は異形な姿をしていた。
その姿は巨大で、巨躯の持ち主だったアンドセル・スミルノフの倍以上はある、まさに巨人であった。
『グォォォォォォッ!!!!!!』
巨人は咆哮をあげ、手に持つ矛を私に振るい出す。
「……グッ…」
私はなんとか回避を行うが、剣圧だけでも身体が抉られそうであった。
「……見た目通りの力…いや、見た目以上か…」
『グアッ!!ガアッ!!ウガアッ!!』
「……チッ…」
巨人は矛を縦横無尽に乱舞し、私はそれをなんとか避けるが、剣圧を受ける度に身体が引き裂かれそうであった。
「ッ!」
ガキィン!
避けきれない一撃が来た為、手に持つ聖剣で受け流そうとしたが、衝撃が強すぎ、後方に吹き飛ばされてしまう。
バキャン!
手に持つ聖剣が今の一撃で容易に粉々にされてしまう。
「……ふぅ…強度一点張りにしてコレか…」
……直撃は何が何でも避けなくてはならない様だ…。
「フフフ、どうですか?現時点での私の最高傑作は?」
声がした方に視線を向けると、男が一人、先程私がアンドセル・スミルノフの腕ごと吹き飛ばした夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)を持って立っていた。
「……たしか…カリス・パトゥーリア…と言ったか…」
「またお会いできましたね」
「……これも動く死者だと言うのか…」
「ええ。まあ、通常のと違い、あれこれ手を加えましたけどね。おかげでこの様なナリと狂暴性を持ってしまいましたが、戦闘能力は比べ物になりませんよ」
「……把握している…この身で味わったのだからな…」
「そうでしたね。ちなみに私は彼に死人の狂戦士(デッド・バーサーカー)と名付けました」
「……バーサーカー…狂戦士とはずいぶん大層な名前だが、戦闘能力はまさにその名の通りか…」
「さて、貴方には彼のデータ採取の為の相手になってもらいますよ」
『グゴガァァァァァッ!!!!!!』
彼がそう言った瞬間、巨人は咆哮をあげ、その巨体からは想像できない程のスピードで迫ってきた。
「……チッ…巨体の割りによく動く!…」
アンドセル・スミルノフと言い、あの死者の巨人と言い、どうやら私は巨体の割りに素早い者と縁がある様だな。
『グオアッ!!』
「チッ!」
私は再び聖剣を作り出し、応戦する。
私は巨人が振るう矛を、剣圧に耐えながら回避する。
「フッ!」
そして、一瞬の隙を突いて、首目掛けて聖剣を振るう。
パキン!
「ッ!?」
が、巨人の首は傷一つ付かず、逆に私の聖剣が刃こぼれしてしまう。
「……チッ…防御力も並大抵では無いな…」
……伊達で最高傑作のレッテルを張られていないと言う事か…。
『グオォォォォォッ!!!!!!』
「ッ!!しまっ…」
ドガァッ!
「ぐあッ!?」
ドガァッ!
巨人の攻撃を避けきれず、咄嗟に防御(ガード)した聖剣を砕かれながら吹き飛ばされ、木に叩きつけられてしまう。
「………ぐっ……ぐぅぅ…」
………これは……骨が何本かいったか…。
「どうやらここまでの様ですね。貴方はなかなかの素体ですから研究のしがいがありますね」
「……フッ…確かにこの戦い…私の敗北は揺るがないだろう…」
「この戦い、ですか。それは敗北はするが生き延び、次は勝利する、そう捉えればよろしいでしょうか?」
「……フッ、好きにしたまえ…」
「ん~、やはり侮れませんね、貴方は…。本当に勝ちそうで怖い。できるだけ綺麗な状態と言うのは諦めて、油断無く、躊躇い無く、殺せる時に確実に殺すべきですかね」
彼がそう言うなり、巨人に指示を出す。
巨人はゆっくりとだが、確実に近づいてくる。
私は立ち上がり、それぞれの手に聖剣を二本作り出す。
「フッ、精々怖がっていろ。その間に退散させてもらう」
「フフフ、させませんよ」
『グゴガァァァァァッ!!!!!!』
「シシシ♪」
「……チッ…」
「……クッ…」
「どうしたどうした♪ほら、もっと頑張れよ♪シシ♪」
クロト・シャルガが木の枝に乗って、見下ろしながら非常に楽しそうに言う。
「……クソ!コイツ、遊んでやがる!…」
ライ君は彼に付けられた傷を押さえながら毒づく。
ライ君の言う通り、彼はこの戦闘を遊んで楽しんでいる節がある。
まるで、ゲームの様に…。
さっきの聖剣の能力を使っての攻撃だって、確実にライ君を仕留められたはずなのに、彼はわざと死なない様に攻撃していたし、聖剣の能力もほとんど使っていない。
彼曰く「それじゃ面白くないからな♪こう言うのは制限を付けてやった方が良いんだよ♪」らしい。
「シシシ♪んじゃ、そろそろ行くぜ♪」
そう言うなり、彼の姿が消え始めた。
「ッ!」
透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)の能力による透明化…。
ライ君もこの力による奇襲で傷を負わされた。
「シシシ♪ハンディキャップで喋っておいてやるよ♪さて、俺は何処にいるでしょう?シシシシシ♪」
このままじゃ埒が明かない… 。
「……ライ君…」
「……分かってる…」
私はライ君と目配せした後、手に持つ刀を下ろして静かに目を閉じる。
「シシシシシ♪」
私は彼の笑い声に耳を貸さず、ただ静かにその場に立つ。
ドスッ!
「ッ!?」
私の肩を透明化した彼の槍が貫く。
でも私は貫かれると同時に肩の痛みに耐えながら空いている方の手で槍を掴む。
「ゲゲッ!?」
私はすかさず、手に持つ刀を振るう。
ガキィン!
「っぶね!!」
刀が何かで防がれる。
おそらく、彼の持つ聖剣だろう。
「んで次はアイツの銃撃ってか!」
「……そうとも限らねえぜ…」
「ッ!!」
「……吹っ飛べ!!…」
ドガッ!
「グヘッ!?」
ライ君が私を跳び越し、彼に強烈な蹴りを浴びせた。
「……いっつ~…テメェ…腹に風穴空いた状態でよくそんだけ動け…る…な…」
ライ君を見た彼は徐々に言葉を失っっていった。
「……テメェ……何で傷がねえんだよ!?…」
そう、彼の言う通り、ライ君のお腹にあった傷は跡形も無くなっていた。
「つか、テメェも傷が塞がり掛けてんじゃねえか!?」
私の肩の傷も徐々に塞がり始めていた。
「……回復系の神器(セイクリッド・ギア)使いって訳かよ…」
「……あいにく、俺もユウナも神器(セイクリッド・ギア)を持っちゃいねえよ」
「んじゃ、なん…ッ!……テメェら、その目…」
どうやら彼は気付いた様だ…。
私とライ君の瞳の色がさっきまでの色から赤く染まっていることに…。
「……テメェらまさか…血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)か!…」
後書き
アンドセルさん、早々の退場です。
死因はほとんどの方は予想ついてしまうでしょうね。
今回出てきたカリスの最高傑作こと死人の狂戦士(デッド・バーサーカー)ですが、モデルは思いっきりFate/stay nightのバーサーカーです。
最後に出てきた新しい単語、血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)の説明は次回。
ページ上へ戻る