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求道

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第二章


第二章

「とりあえず。剣の修行は続けるさ」
「それはか」
「ああ、続ける」
 それは変わりがないというのである。
「絶対にな。とりあえずは」
「何をするんだ?それで」
「大学卒業したら家の道場継ぐんだろう?」
「親父はまだ健在なんだよ」
 しかしここでこう皆に答えるのだった。
「ピンピンしてるさ。背筋も伸びててな」
「何だよ、じゃあまだ継がなくていいのかよ」
「それじゃあ」
「修行に出るつもりなんだよ」
 そしてこう述べるのだった。
「ちょっとな。修行に出るさ」
「修行かよ」
「何でも京都の山奥の方に伝説の剣道家がいるらしいんだよ」 
 彼は言った。
「その人のところに行ってみるさ」
「そこにかよ」
「ああ、とりあえずな」
 こう言うのである。
「行ってみる、京都にな」
 こうして彼は京都に向かうことに決めたのだった。大学を卒業してその京都に向かった。京都市を出て舞鶴の方に向かいさらに入っていく。するとそこに古い山寺があった。
 深い緑の木々の中に白い石の階段がある。あちこち割れていて端には苔や草がある。そうした古い年月を感じさせる階段を登っていきそれが終わると。そこに一人の女がいた。
「貴方は?」
「渡辺凌駕です」
 その女に答えるのだった。女は長い黒髪を後ろで束ね白い上着と黒い袴という出で立ちであった。切れ長の黒い目はやや狐を思わせるものがあり口元は引き締まっている。細長い顔は白く白狐を思わせる、そんな顔立ちをした凛とした美しさを持つ女であった。
「渡辺凌駕殿か」
「はい」
「話は聞いている」
 女は答えるのだった。
「何でも剣道の世界大会で優勝したそうだな」
「はい」
 その問いにまずは何も見せずに頷いた。
「それで御存知なのですか」
「若いながらもかなりの剣の腕と聞いているが」
「いえ、まだです」
 しかし彼はここで言うのだった。
「それはまだです」
「まだと申されるのか」
「はい。私は剣の道を極めたいと思っているのですが」
 こう女に語るのであった。
「その為にはまだまだ修行が必要と思い」
「どうされると」
「ここに参ったわけです」
「この山寺にか」
「聞いた話によるとここに優れた剣術家がいるとか」
 伝え聞いた話をそのまま語るのだった。
「それで参りました」
「優れた剣術家か」
「御存知ですか?」
「さてな。聞いたこともない」
 女は素っ気無く彼に言葉を返した。
「だが。この山寺には道場がある」
「あるのですか」
「そうだ。貴殿は剣道をしにこの山寺に参ったのであろう?」
「はい」
 女の問いにはっきりとした調子で頷いたのだった。
「その通りです」
「ならばだ。剣道をするがいい」
 そしてこうも告げるのだった。
「まずはな。相手もいる」
「相手もですか」
「そうだ、私だ」
 次に出した言葉はこれであった。
「私が相手をする。それでよいか」
「というとまさか」
 彼は女の今の言葉でわかったのだった。その伝説の剣術家とは誰なのかを。それでそのことを女に対して問わずにはいられなかった。
「貴女が」
「それでどうするのだ?」
 しかし女は答えてはこなかった。
「剣を交えるのか?どうするのか?」
「御願いします」
 彼の返答はこれしかなかった。
 
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