落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
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第16話 最後の殺し合い VS人の皮を被った化け物
前書き
第16話です。
今日、私の数少ない友人が即席で幼少期の勇人君を想像(実は勇人君の容姿は決まってない)で書いてくれました。ちなみに私は便乗して赤ちゃん勇人君を書きました。下手糞ですがね……。
別に私はぺド野郎ではないですよ? 念のため
勇人君の容姿は幼少期勇人君をそのままでっかくした感じだと思っていただけると幸いです。
(クソカメラの為、見えづらいですがお許しください)
ちなみに私は一瞬、幼少期勇人君を見て可愛いと思ってしまった。不覚……。
「どうしたんだ!! 雄一!! 「うわあああ!!!」!?」
電話の向こうから誰かの悲鳴が聞こえた。
「くっ!! 切るぞ!! 早く逃げてくれ!!」
「ちょっ――」
プープー……
「…………」
「ゆ、勇人君どうしたの?」
ドゴォ!!!
突然、轟音が響いた
「「「!?」」」
「お、おい、なんだ今の音!?」
「お姉さま危険ですわ!!
「あかりちゃん、大丈夫ですか!?」
『お客様へご連絡いたします!! ただ今外で爆発が起きました! 店内のお客様はスタッフの指示に従って非難してください!!』
「な、なにが起こっているの!?」
「どっかのバカがテロでも起こしたんだろう……僕は雄一のところに行く。皆は先に行っててくれ」
勇人は走り出し、出口へと向かう。
「お、おい勇人!?」
「ののかは店員さんについて行って先に逃げて」
「う、うん」
間宮たちも勇人を追っていった。
「くそっ!! 雄一はどこに……」
ダンッ!!
路地裏から銃声が聞こえた。
「銃声!? あそこの路地裏からか……ん? ここってまさか……雄一!!」
勇人は急いで銃声のした場所へ向かう。
(まずい……ここの路地裏のずっと先には“裏”が……雄一……無事でいてくれよ!!)
「雄一!!」
良かった!! 雄一は無事のようだ。
「勇人!? 逃げろって言っただろ!!」
「仲間を置いて逃げるなんてできるわけないだろう!! まずは説明してくれ!!」
「ああ、分かった。手短に説明してやる。ヤバイ奴が爆弾を起爆した。以上!」
「手短すぎるだろ!? 要するにさっきの爆発音はそのヤバイ奴の仕業なんだな?」
「その通りだ。で、そのヤバイ奴がこの路地裏に逃げていって、追跡しているところだ」
なるほど……爆弾とは質が悪い。
「雄一、ここから先は危険だ。武偵高の「3大危険地域」以上にね」
「はあ!? あそこより危険な場所なんてないだろう!?」
「雄一は分からないの? ここから先から漂ってくる、錆びた鉄の匂いが」
「錆びた鉄?」
「実際に鉄が錆びている訳じゃない。頭が良い雄一なら知っているでしょう? 生物が持っている鉄分が多く含まれている液体を」
「まさか……血……か?」
雄一の問いに頷く。
「すまん、鼻が詰まっているから分からん」
「そういうことは先に言ってよ……とにかく、ここは危険だ。早く戻ろう」
「せっかく、ここまで来たんだ。“裏”に寄っていってはいかがかな? 天原勇人君とその御友人」
「!?」
「お前は……!!」
突然、誰かに話しかけられた。 しかも僕の名前を……。
路地の奥の影から、サングラスをかけた男が現れた。
「勇人、こいつがさっき言ったヤバイ奴だ。 なんでお前の事を知っているんだ?」
「こいつが……」
「勇人君!! 雄一君!!」
「大丈夫か!?」
間宮たちが後ろに現れた。
「み、皆!? なんでついてきたんだ!?」
「あ~あ、全員連れてきたのか? 勇人」
「先に行けっていっただろう!?」
「仲間を置いて逃げるなんてできないよ!!」
僕と似たようなこと言いやがって……。
「あかりちゃんの優しさに感謝することね」
「ええい! 来ちまったからには仕方ねえ!! あいつをブッ飛ばすぞ!!」
「ほお、最近の若者は威勢が良いな。良い事だ」
(この男、間違いなく……)
「テメエ……“裏”の人間だな……それに、なんで僕の名前を?」
「天原勇人君、君の事は知っているよ。この世界でたった1人の力で生きている猛者は数人程度だからね。情報を得るのは君たち武偵の基本だろう? 落ちこぼれの皮を被った諜報員さん」
「…………」
「“裏”? (“裏”って夾竹桃が勇人君に言ってた……)」
「おい、“裏”ってなんだよ?」
「夾竹桃も言っていましたね……」
「おや、話していないのかね? では、私が分かりやすく説明しよう。1からすべて」
「“裏”とは、君たちが言うところの無法地帯だ。武装検事、公安0課などのほんの一握りの人間しか知らない国家機密でもある。世を騒がせる凶悪犯罪者のほとんどは“裏”の出身だ。 「もはや“裏”に住まう者は人間ではない」と言われる程にな。今、お前たちと共にいるその男もまた“裏”の出身だ。それにその男は特に血の匂いが酷い。両手で数えきれないほど人を殺した証だ」
男が勇人に指を指しながら説明する。
「………………」
「勇人、本当か?」
「勇人君……」
「おまえ……」
「真実なんですの?」
「黙ってないで答えてください……」
「ああ、その通りだよ。皆、僕は“裏”の出身にして……正真正銘の犯罪者だ」
「そんな……」
「悲しんでいる所、悪いが私の顔を見たからにはここで死んでもらう。顔を見られたら殺すのがこちらのルールでな」
(うわ……理不尽だな……こちらのルール……か……)
「お前、組織の人間か?」
「おや、組織の事を存じているのか、確かに私は組織の人間だ。おっと、自己紹介を忘れていたな。私の名は相馬鷹男。組織のリーダーだ。仮ではあるがな」
「!?」
「まあ、そんなことはどうでもいい」
相馬が構えた瞬間、殺気が辺りを包みこんだ。
「なにこれ……」
「……怖い……」
間宮たちは恐怖に体を支配され動けないようだ。
「皆、しっかりしろ!!」
「まずは、貴様だ」
相馬が島を見ながら呟く。そして――
「お姉さ――」
「島――!!」
相馬が島の前に一瞬で移動し、島にパンチを繰り出す。
ドゴォッ!
「ぐ……」
「勇人…………!!」
勇人が島の前に立ち、相馬の攻撃から庇っていた。
「驚いたな。まさか、自分の生にしか関心を持たない“裏”の出身である君が人を庇うとは……」
相馬が驚きながら呟く。
「生憎、自分の命よりも……大事なものを見つけたんでね……」
「よくも勇人を!!」
雄一が怒りながら銃を取り出し、相馬を撃つ。
「それなりに良い腕だ。だが、所詮はこの程度」
相馬は銃弾を躱し、一瞬で雄一の目の前に移動する。
「なっ!?」
相馬の拳が雄一の腹部にめり込んだ。
「がはっ!!!」
パンチをくらった雄一が後ろへ倒れる。
「そ、そんな、銃弾を避けて一瞬で……」
「諦めろ……“表”の人間では“裏”の人間には敵わない」
相馬が倒れている雄一にとどめを刺そうと懐からナイフを取り出して振り降ろす。
ガキィン!!
勇人がナイフで相馬のナイフを受け止める。
「勇人君……」
「くらえ……!!」
勇人が相馬に蹴りを放つ。
「!!」
相馬が素早く後ろに下がる。
ドオォン……
遠くから爆発する音が聞こえる
「国の犬どもめ……これ程速く仕掛けてくるとは……悪いが君たちの相手をする時間が無くなったようだ……だが、君たちは必ず殺す。いや、ほんの数人じゃ寂しいか? そうだな……武偵高にいる君たちの仲間も皆殺しにしてあげよう。家族も含めてな」
「なっ!?」
「そ、そんな!?」
「相馬あああ!!! 貴様!!」
勇人が相馬に怒鳴りつける。
相馬は、何かを地面へ転がす。
(スタングレネード!?)
勇人が気づいた瞬間、あたり一帯を光が包んだ。
目を開いて、周りを見てみるも相馬の姿はない。
「野郎……逃がすか……」
勇人は相馬を追い、走り出そうとする。
しかし、左腕を誰かに掴まれた。
「…………間宮、離してくれ」
「い、いやだよ……あの人、とっても強いんだよ……? 勇人君、死んじゃうよ!!」
「あいつを何とかしないと、皆は殺されるんだぞ!!」
「いやだ!! あの人が襲ってきてもアリア先輩がやっつけてくれる! それに分かるの……ここから先はとても危険だって……それに……勇人君がこのまま行っちゃたら……もう……戻ってこない気がするの!……だから、お願い……」
「……!!」
「あかりちゃん……」
「皆……ごめんな。雄一を頼む」
「あっ」
勇人はあかりの手を振り払って走っていった。
あかりたちが勇人を追いかけようとするもうまく体が言うことを聞いてくれない。まだ、相馬から発せられた殺気によって恐怖で体が動かないのだ。
「勇人!! ダメだ!! 行くな!!」
後ろで火野が叫んでいるがそれでも走るのをやめない。
「くそっ!! 相馬の奴、どこに行った!!」
「おい!! そこのガキ!!」
「!?」
急に男達が現れた。
「相馬の野郎からテメエを殺せば報酬を弾んでやるって言われててな……悪いが死んでもらうぜ」
「邪魔だ。僕は今、機嫌が悪いんだ命の保証はできないぞ!!」
勇人はナイフを構える。
「ぬかせ!!」
男達が一斉にかかってきた。
「死ね!!」
「死ぬのはそっちだ!!」
殴りかかってきた男の攻撃を躱し、頭部にナイフを突き刺す。 まずは1人。
(よし、この調子で――)
「ぐっ!?」
顎に突然強い衝撃がかかり、視界が歪む。
「とどめだ!!」
「……!!」
声のする方に向かってハンドガンを取り出し、発砲する。
「ぐあっ!!」
どうやら当たったらしい。だんだん視界が元に戻ってくる。
勇人は後ろに数回バックステップをして男達から距離を取る。
(何とかなったか……銃弾が当たらなかったら危なかったな……さて、時間はかけられない。近づいて頭に弾丸をぶっ放して殺すしか方法はないか……)
勇人は地を蹴り男たちに接近して、頭を狙って引き金を引く。
ダンッ!! ダンッ!! ダンッ!!
1人、2人、3人と倒れていく。
「調子に乗るな!!」
「ぐっ!!」
死角から男に殴り倒される。
(しまった!! 銃が……)
「ひひっ。これで終わりだ!」
「!!」
鉄パイプを持った男が跳躍し、殴りかかってきた。反射で目を瞑る。
ドンッ!
バシッ!!
何かが目の前に降って来る音と、何かが受け止められる音がして、目を開けたら――
「!? 兄さん!? なんでここに!?」
勇人の兄、勇輝が鉄パイプを片手で止めていた。
(まさか……高所からそのまま降りてきて……)
「よう、勇人。ずっと“表”で雑魚の相手をしていて鈍ったか?」
「お前は……空山ああああああ!!!!」
鉄パイプを持っている男が叫びながら力を込めて鉄パイプを押す。
「へっ、話になんねえよ!! 地獄で修行してから出直してきな!!」
勇輝が男を鉄パイプごと持ち上げ、地面にたたきつける。
「なんで、化け物がここに……」
「おい!! 奴は自分から動く事なんてないはずだろ!?」
「知ったことか!! とりあえず数で押せ!! それなら殺せる!!」
どうやら兄さんは“裏”では有名人のようだ。
「勇人、ここは俺に任せな!!」
「兄さん……」
「相馬の野郎は俺も気に食わん。奴はこの先だ。ぶちかましてこい!!」
「うん!!」
勇人は相馬の向かった方向へ走り出す。
「逃がすな!!」
男たちが勇人を追いかけるが……
ドン!!
「なっ……」
男たちの先には軽量鉄骨を構えた勇輝が立ちはだかっている。
「俺があいつの背中を守っている限り……あいつの背中にたどり着けると思うな」
「おい!! 化け物!! このままじゃ“裏”が滅びるんだぞ!! そしたらテメエも死ぬぞ!!」
「知ったことか!! たとえ“裏”が消えようが俺は死なねえ!! 死なねえ自信があるからな!! あと、化け物言うなコラ!! こちとら歴とした人間じゃあ!!」
「こいつ……」
「さあ、“裏”の存続を賭けた戦争の始まりだ!! 死にたい奴からかかってきな!!」
「はあ……はあ……見つけた……」
「相馬――!?」
勇人は驚愕した。相馬の周りに武装した男が2人倒れている。
(あの倒れている2人は相当の手練れだろう……まさか……こいつ……)
「……私を追ってくることは予想していたが、まさか追いついてくるとは……奴らを全員殺してきたのか?」
「兄さんが……空山勇輝が僕の代わりに奴らと遊んでくれている」
「何……? 奴に弟がいたのか……“裏”が生んだ化け物に弟が……」
「兄さん、ここじゃ有名人だな……」
「確かに奴は有名人だ。この“裏”という世界が生んだ化け物。その気になれば“裏”を支配し、“裏”そのものにもなれただろうな。何故、奴が“裏”を制さなかったか気づいたよ。奴も人の心を持っていたって事か」
「だが、あんたは人の心なんぞ持ってないだろう。あんたこそ人の皮を被った化け物だろう。化け物さん、地獄へ帰る時が来たんだよ」
「ふ、面白い事を言う。どうせ、“裏”はもうじき滅びる。なら、奴の絶望した顔を見てから地獄へ逝くとしよう」
相馬がナイフを取り出し、構える。
「相馬、あんたには敗因がある」
勇人が歩きながら口を開く。
「1つ、あんたは本気で僕を怒らせた。2つ、ここじゃ法律なんて関係ない。だから、思う存分殺し合いができるって事だ。要するに、本気を出してもOKって事さ」
勇人もナイフを取り出し、構える。
「まさか……落ちこぼれの皮を剥ぐ時が来るとはね……人生とは分からないものだ……」
落ちこぼれの皮が剥がれた時――
勇人の体から殺気が放たれ、ただでさえ重い“裏”の空気が――さらに重くなった。
「悪いけど……あんただけは……本気で殺すよ……人の皮を被った化け物」
後書き
次回で最終話です。
一応、後日談を書くつもりなので最後ではありませんが……。
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