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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員

作者:木偶の坊
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 第15話 暗雲

 
前書き
第15話です。

もう少しで完結です。第16話も案外すぐに更新できるかもしれません。 

 
兄さんが街並みに消えていき、僕も寮へ戻ろうと歩き始め、その途中――




プルルルルッ!!


携帯が鳴った。間宮からだ。


「間宮、どうしたの?」
『勇人君、明日補修が終わった後用事とかある?」
「いや、特にないけど……どうしたの?」
『ほら、この前旅行に行くから必要な物を皆で買いに行こうって言ってたでしょう? それで明日行こうってなったの』
「分かったよ。集合場所とか決めてある?」
『補習ってお昼頃に終わる?』
「うん。12時前には終わるよ」
『うん! 私も学校にちょっと用事があるから一緒に行こう!』
「分かったよ。それじゃあまた明日ね」
『うん! バイバイ!』

間宮との通話が終わり携帯をしまって再び歩き始める。


「近道しようかな」


路地裏を通り寮を目指す。


「お兄さん。ちょっといいかい?」
「え? 僕?」

突然声をかけられ周囲を見回すと……


黒づくめでフードをかぶって顔を隠した男が椅子に座っていた。


「あの……僕に何か用でも?」
「いや、少し気になってな。私はそこら辺で占いをしているただの占い師だ。突然で悪いが占わせてもらっていいかい?」
「占うって……無料ですか?」
「もちろんだ。私からの好意だからね」
「それならお言葉に甘えて……」


占いなんてあまり信じてないけど無料なら折角だから占ってもらおう。別に急ぎの用事なんてないし。


「それじゃあ、少し時間をいただくよ」
「分かりました」


男が黙り込み沈黙が訪れた。


ざっと数十秒経過した頃……。


「見えましたよ」
「それで……結果は?」
「まず、お兄さん。生きるため、たくさんの命を奪ってきましたね」
「!?」

男の口から出た言葉に驚愕した。

「な、なんで分かるんですか?」
「見えたからさ。そして、あなたは因果応報と言う言葉をご存知ですか?」
「はい……。よい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがある事ですね?」
「その通り。どんな理由があれ人の命を奪う、これは言わずともどのような行いか分かりますね?」
「人の命を奪った……ということは……僕は……」
「もう、察していますね。お兄さんはそう長くはないでしょう」
「忠告として受け取っておきますよ。僕はさらさら死ぬ気なんてありませんから」
「そうですか……。強いんですね。お兄さんは今まで私が見てきたどの人間よりも人間らしいですね」
「それは褒め言葉って事でいいんですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます。それじゃあ、僕はこの辺で」
「ええ。また会いましょう」



占い師と別れ路地裏を出る。少し歩いたら寮だ。


「まさかこんなところで余命宣言されるなんてね……」

あの占い師の占いは本当に当たるのだろうか?

「因果応報……そして……死……か……まあ、気にしない方向で行こう」







寮に戻り、晩飯を食べ、風呂に入り、牛乳を一気飲みする。


「やっぱり、風呂上りはこれだね~この一杯のために僕は生きているんだ」

オヤジくさい事を言い、テレビをつける。


「あんまり面白い番組はないな~」




プルルルルッ!!


また携帯が鳴った。


今度は……ん? こんな番号知らないぞ……。出るべきかな……? まあ、非通知にしてないから大丈夫かな?


「はい、もしもし?」
「お前が天原勇人ね」

いきなりお前って……。それに女性の声だったな。



「あんた誰? 僕は忙しいんだけど……」
「この私がわざわざ電話してあげているというのに随分なものね」
「……………………」

こいつ……頭おかしいだろ……自分が偉い立場にいるとでも思ってるのか?


「まさか、私のことを知らないだなんてことは無いでしょうね」
「いや、知るわけないだろう。少なくても僕はあんたの声なんて聞いたことないぞ」
「おまえなまけんなよ!!」
「え!?」


いきなり怠けんなって言われた。なんで? 僕は今、忙しいのに(嘘)


「僕は怠けてなんかないぞ」
「ちがうっちゃ!! そういう意味じゃない!!」
「?」

ちゃ? 今のって方言か?
 

「仕方ない、特別に名乗ってやる。私の名は高千穂 麗よ」
「ああ……思い出した……カルテットで間宮たちと戦った……」



高千穂 麗 強襲科Aランクで父親は武装弁護士だ。




「で? 僕に何の用?」
「……オホン。おまえ間宮あかりと親しいそうね。それに今度一緒に旅行に行くとか……」
「それがどうかした?」



「と、ところであかりはいつもはどんな感じなのかしら?」
「え?」


急にどうしたんだ?


「べ、別に気になっているわけではないのよ。ただ、この前も何か危ない感じがしたし。か、勘違いしないことね。私がなれなかったアリア先輩の戦妹になった以上、その彼女に何かあれば私の評判まで落ちるかもしれないから言っているだけよ」

「…………」

「仮にも私を倒したのだから、次に私があかりをイジ──倒すまで他の誰かにやられてしまうのを気にしているだけで……気にしていると言ってもあかり自身のことじゃないからっ。」

ん? イジ――? 


「で、でも、あかりのことについて話したいのなら聞いてあげるのもやぶさかではなくてよ。あくまで武偵として相手のことを知ろうとしているだけだから。敵を知ることも勝利への一歩だもの」
「そ、そうですね……相手を知るのは大切ですね……」

なんか……変な汗をかいてきた……。


「そ、そうね、例えばあかりはどんなものが好きなのかしら。知り合いなのだから一つや二つ知っているでしょう? 言っておくけれど、これは対策の練るためだから」


……お、おい。こ、この人、まさか……


「ほ、ほらあるでしょう? 好きな食べ物だとか、趣味だとか、好きなタイプとか。仕方ないから聞いてあげるわ」


間違いない。佐々木の仲間だ……。


「あ、あの、僕はあなたが思っているほど間宮とは親しくないんで……他を当たってください!!」
「ちょ、ちょっと――」

ピッ……


急いで携帯を切り、念のため着信拒否にする。

「くっ……。まさか、佐々木の仲間が増えるとは……僕はどうすれば……ていうか間宮って女だけ惹かせることができるのか?」


「はあ……。もう寝よう……疲れた……」










翌日――





「補修終わりっと……さて、間宮も学校にいるはずだからメールでもして校門で待つかな」


間宮に校門で待っているとメールして、校門まで歩く。しばらくしたら……


「ごめんね! 勇人君、待たせちゃった?」
「いや、ほんの数分程度だから気にしないで」

「…………」

間宮をまじまじと見る。なぜ、佐々木や高千穂が間宮に惚れるのか不思議だ。


「ゆ、勇人君? そんなにじっと見られると……」
「ああ、ごめんごめん。気にしないで」
「う、うん」
「それじゃあ、皆のところに行こう」
「うん!」







「あ、お姉ちゃん!」
「やっときたか」
「遅いですの」
「…………」


間宮についていくとそこにはののかちゃんと火野と島がいた。いや、もう1人いるのだが……黒いオーラを纏っている佐々木が……。


「ごめんね皆。あれ? 雄一君は?」
「さあ? 勇人は雄一からなんか聞いてないのか」
「いや、何も聞いて「ガシッ!!」っぶ――」
「天原勇人……あかりちゃんと2人で……一体何をしていたのですか?」

佐々木が僕の頭を掴み、持ち上げる。アイアンクローと言うやつだ。ってのんきに解説してる場合じゃ――


ベキッベキッ!!


「ぎゃああああ!!! ちょっと待ってえええ!! 誤解なんだあああ!!」
「問答無用です」


「し、志乃ちゃん! その辺にしないと勇人君が……」
「あかりちゃん。この男はあかりちゃんを汚そうとしているんです。ここで消さないといけません」


「すまない!! 皆、遅れ……勇人おおお!? どうしたんだ!?」


雄一が来てくれた!! ごめん雄一!!


「ち、違うんです佐々木さん!! 雄一が……雄一がやれっていたんです!!」
「はあ!? 勇人!? おまっ――」



ドゴォ!!



「ぐほっ……」

佐々木の拳が雄一の腹にめり込む。

「勇……人……お前……志乃……俺の遺言を聞いてくれ……勇人は……俺の提案に即答した。「間宮は僕の物だ!!」ってな……」


「ゆ、雄一!? なんてことを!?」


雄一がとんでもない事を言いだした。



「天原……勇人……」

佐々木が再び近づいてくる。

「ゆ、勇人君、私の事……」
「あ、天原さん……」
「勇人……」
「やっぱり、自首するべきですわ」

「ち、違うんだ皆!! そんな事があろうはずがございません!!」

「許さない……」

「ヒイィ!! 逃げるんだぁ……勝てるわけがない……!」

勇人が背を向け走り出す。しかし……


ガシッ!!


再び、頭を掴まれ持ち上げられる。そして――



ベキッベキッ!!



「ぎゃあああああ!!!!」


「勇人……共に逝こう……地獄のその先へ……」






「世の中って理不尽だよね……雄一……」
「そうだな……だが……強く生きるんだ……」

僕と雄一が世間について語っているのに対し、僕らの前を歩いている間宮たちは旅行について話している。

「旅行どこ行く?」
「あかりちゃんが決めていいですよ」
「そうだな、あたしも特に行きたい所はないし……」
「私はお姉さまと一緒ならどこでもいいですわ!」
「う~ん。ののかはどっか行きたいとこある?」
「ううん。私はどこでもいいよ」
「じゃあ、勇人君たちは?」
「俺は沖縄にいきたい!! 青い海、白い雲、そして……水着――「待つんだ!! 雄一!!」
なんだよ勇人」


「雄一、今ここでそれを言ったらアウトだ……」
「そ、そうか……」

女子たちに聞こえないように小声で話す。


「二人ともどうしたの?」
「い、いや、なんでもないよ。僕は北海道がいいかな」

「う~ん夏だから沖縄がいいかな……みんなはどう?」
「私は構いません。この二人が邪魔ですが……」

最後に佐々木がこっちを睨みながら小声で言った。


「そうだな、夏はやっぱり海だよな」
「お姉さま!! 私がお姉さまにサンオイルを塗りますわ!!」


「…………」

マジか……。僕は泳げないんだけど……。

「と、とりあえず、必要な物を買わないと……(震え声)」
「そうだね!! それじゃあショッピングモールへ出発進行!!」






目の前の水着コーナーで間宮たちがどれを買うか迷っている。


「ねえ。雄一?」

隣に座っている雄一に話しかけるが返事がない。
雄一の方を振り返るといつの間にか雄一は消えていた。



「あ、あれ!? 雄一……どこにいるの? こんなところで一人にしないで……」




急に心細くなってきたな……。



「仕方ない……迷子センターで保護してもらおう……」

自分が何を口走っているのか理解していない勇人であった。


迷子センターへ向かおうとした瞬間――

「あ、天原さんどこに行くんですか?」

ののかちゃんに話しかけられ、僕は正気に戻った。

「はっ! 僕はいったい何を……」
「天原さん……?」
「あ、ののかちゃん、どうしたの?」
「は、はい、もう選び終わったから……似合うといいんですけど……」
「そ、そうなんだ……まあ、ののかちゃんは可愛いからなんでも似合うと思うよ」
「か、可愛い……ありがとうございます……」
俯きながらののかちゃんが礼を言う。


(危ない危ない。ののかちゃんが居なかったら僕は今頃迷子センターで……)


「そういえば天原さんは水着を買わないんですか?」
「え!? いや、僕はもう持ってるから大丈夫だよ!!」
「そうですか」


「二人ともお待たせ~」
「間宮も選び終わったか」
「あれ? 雄一君は?」
「さあ? 僕が気づいたころにはいなかったよ」


プルルルルッ!! 


「ん? 雄一からだ」



「雄一、どうしたの? 「勇人!! 皆と一緒にすぐに逃げるんだ!!」はあ!? どうしたの!?」

焦った雄一が声を荒げていた。

 
 

 
後書き
学校祭って本当にボッチ殺しの行事だと思う。 
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