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いかさまは知っていても

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第四章

「おかしいな」
「今日もですしね」
「かなり賭けてますよ」
「殆ど貢ぐ感じで」
「そうしていますから」
「ああ、本当におかしいな」
 元締めはいぶかしむコアで言うのだった、そしてだった。
 劉さんはこの日も実際にかなりの額を賭けた、だが。 
 それは全て花蓮が操るいかさまのルーレットに巻き上げられた、この日もそうで。
 次の日もまた次の日もだった、それを重ねてだった。
 大金を失った、その金は店の売上と花蓮の借金の返済に当てられた。それで花蓮は瞬く間に借金を支払い終えてだ。
 店を辞めた、元締めはその花蓮が辞めた日にだ。
 この日も店に来ていた劉さんに声をかけた、劉さんはこの日は大勝してかなり儲けていた。その人に声をかけたのだ。
「劉さんだよな」
「ああ、あんた確か」
「台北で一度会ってるよな」
「そうだったな、元気そうだな」
「ああ、それで再会を祝してな」
 にやりと笑って言うのだった。
「ちょっと飲むかい?」
「奢りかい?」
「見返りは言わないさ」
 元締めは葉巻を咥えながらにやりとして答えた。
「絶対にな」
「そうか、じゃあな」
「ああ、いい店を知ってるからな」
 だからだというのだ。
「飲もうな」
「よし、来た」
「御前等も付き合うか?」
 元締めは手下達にも声をかけた。
「美味い酒だぞ」
「はい、お誘いなら」
「喜んで」
 手下達も同行することになった、彼等は警護役も兼ねている。こうして元締めは劉さんと共に彼が経営しているバーに入った、そしてそこで飲むのだった。
 バーの奥の店で一番店に入ってだ、それで話すのだった。
「なあ、劉さんな」
「ああ」
「ずっとうちの店に来てたよな」
「それも見てたんだな」
「見てたさ」
 レミーをあおりながら答える。
「ずっとな」
「そうか、ずっとか」
「はっきり言うぜ」
 元締めは共にレミーを飲む劉さんの目を見つつ尋ねた、その小さな目をだ。
「あんた気付いてただろ」
「ルーレットのことにかい?」
「うちは闇だからな」
 それ故に、というのだ。
「いかさまは常識だよ」
「あのディーラーもな」
「やっぱり気付いてたんだな」
「そうさ。最初からな」
「じゃあ何で負けるとわかって賭けてたんだ?」
 劉さんに一杯勧めつつまた尋ねた。
「一体」
「ああ、実はな」
「実は?」
「あのディーラーに惚れてたんだよ」
 だからだというのだ。
「ずっとな」
「賭けてたのか」
「負けた分はそれなりにあの人の懐に入るんだよな」
「そうさ、半分以上こっちの店に入るがな」
「それならって思ってな」
「惚れた相手への貢ぎものか」
「そう思って賭けたんだよ」
 そうだというのだ。
「実際な」
「そうか、かれどな」
「あのディーラー旦那いるだろ」
「何だよ、そのことも知ってたのかよ」
「悪いか?」
「じゃああんたあいつが結婚してて旦那の為に稼いでることもか」
「知ってたさ」
 実際に、というのだ。 
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