検索失敗の異世界録
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そう……巨龍召喚 後半
「ここは・・・?」
「気にしなくていいよ。僕が持ってるゲーム盤の一つだから」
少し戸惑いながらも、結構冷静になれるものなんですね~。
それにしても、これがゲーム盤、ですか・・・何もない真っ白な世界。気が狂っちゃいそうです~。
「こんなところでゲームをやれるなんて、並みの精神じゃないですね~。人間やめてるんじゃいですか~?」
「ひっどいなぁ、葵ちゃんは。・・・まあでも、うん。そうだね。確かに僕は人間じゃないよ」
「じゃあ・・・なんなんでしょうかね~?」
尋ねてみたら、ミカさんの背中から翼が生えてきました。
真っ白な翼・・・それに、頭の上にはわっかまでありますね~。
「それ、天使のコスプレですか~?それとも、自前だったりします?」
「一応、自前なんだよね~これ。どうどう?驚いた?」
「はい、驚きましたよ~。綺麗だな~、って、一瞬みとれちゃいました~」
「おっ、これまで何度誘っても乗ってくれなかった葵ちゃんがついに?」
「でも、ミカさんだってことを思い出した瞬間に覚めちゃいました~」
分かりやすくがっくりしたのを見て、この人はあれが素だったんですね~、とかどうでもいいことを考えていました~。
「それで~?私に非人間宣言をしてどうしたいんですか~、ミカさんは?」
「そうだね。とりあえず、さっきも言ったけど友達の遺言を果たしたいところかな」
「友達・・・それって、院長のことですよね~?」
孤児院の院長。あの人と仲が良かったから、ミカさんは私たちの面倒を見てくれている。
だとしたら、私にかかわることで何かするのはあの人の遺言、としか考えられませんし~。
「うん、正解。ついでに、一つ嘘をついてたことも謝っておこうかな?」
「嘘なんてついてたんですか~?」
「うん。ここの後見人とか寄付とか、全部やってたの僕なんだよね」
「あれだけの金額をミカさんがどうにかできるとは思えないんですけどね~」
「もちろん、普通の方法では無理だよ。普通じゃなければ、そうでもないけど」
ああ・・・確かに、人間じゃないなら出来そうですよね~。
それも、この人は・・・
「なんにしても、それについてはお礼を言っておきますね~。ありがとうございます、ミカエルさん?」
「おっ、もう僕の正体が分かったんだ?」
「分かった、というよりはそのまんま過ぎて拍子抜けした感じですね~。全く、自分の方から『僕のことはミカと呼んでくれ』って言ってたのは、こういうことだったんですか~」
そのまんますぎますね~。むしろ、自分からバラしているみたいなものじゃないですか~。
「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか。君が今日受け取った手紙。あれは異世界への招待状いだ」
「あらあら、招待されたんですか~」
「そう、君は招待されたんだ」
「でも、何でですかね~?特に招待される理由なんて心当たりがないんですけどぉ」
私なんて、普通・・・ではないですけど、異世界に呼ばれるような人ではないと思うんですよね~。
「うん、そうだろうね。むしろ、葵ちゃんに心当たりがあったら驚きだよ。・・・あいつが何年もかけて、封印したんだから」
「あいつ・・・?」
「君のお父さん。僕の親友さ」
・・・ああ、院長のことですか~。
「それにしても、封印、ですか~。なんだか物騒ですね~」
「うん、僕もそう思う。けど、そうでもしないと幼かった君には荷が重すぎただろうからね」
「・・・?まあ、それはいいです~。ただ、これからミカさんはどうするつもりなんですか~?」
「そうだね。とりあえず・・・葵ちゃんが箱庭に行く前に、その封印を解こうかな」
次の瞬間、目の前に来たミカさんの顔を・・・殴り飛ばしました~。
「ちょ、ちょっと!?普通目の前に来た人を殴り飛ばす!?」
「あ、すいませ~ん。つい反射的に~」
まあ、気にしなくていいと思いますけどね~。
手加減はしましたし、ミカさんにも怪我とかないみたいですし~。
「それにしても・・・うん、手加減はしてくれたんだろうけど予想以上に力がなかった。あいつはどんな封印を・・・」
「ぶつぶつ言ってないで、現状を説明してくれませんか~?」
「ああ、そうだね。うん、それは必要だ」
ミカさんはそう言いながらも、手に何かを集めはじめました。
なんでしょうか、あれは・・・神聖そうな感じがしますね~。
「葵ちゃんは知らないだろうけど、この世界には特殊な力を持つ人間が存在する」
「急なお話ですね~」
「うん、そうだね。でも、こうやって始めるしかないんだ。だから、葵ちゃんにはその前提を受け入れてほしい」
「・・・いいですよ~。目の前に天使がいるんですから、大体のことはあり得そうですからね~」
もう、今日からは大体のことには驚かずに済みそうですね~。
「そして、葵ちゃんにもそれはあったんだよ」
「そんなもの、これまでにあったことなんてないんですけど・・・」
「うん、あいつが封印したからね」
ああ、そこでそこに戻るんですね~。
「箱庭はギフトを持つものたちの魔境の様なものだ。ギフトもなしにあの場では生き残れないだろうからね。あいつからは、葵ちゃんが二十歳を超えたら封印を解くように言われてるんだけど・・・」
「死なれては困るから、この場で解くということですね~」
どんなギフトなんですかね~。面白いものだといいんですけど~。
「なんにしても、君を追いこんで追いこんで、封印を解かせないとね。どんな封印なのかも分からないんだし」
「それで、こう来たんですね!!」
先ほどまでためていた何かを、ミカさんは放ってきたので・・・横に跳んでよけ、そのまま放たれるたびによけていきます~。
寝間着姿なので、あまりこういったことをしたくはないんですけどね~。
「へえ・・・よけれちゃうと、あんまり意味はなさそうなんだけど・・・」
「と、言われても~。よけれちゃいますし~」
そう言いながらミカさんの前まで来て、一つ、柏手を打ちます。
これで少しは気が散ってくれるといいんですけど・・・
「・・・全然、驚いてないですね~」
ミカさんには、一切の反応がないですね~。
いや、むしろ・・・冷静になってる気がしますね~。
「・・・ねえ、一つ聞いてもいい?」
「はい、なんですか~?」
「さっき、何で攻撃してこなかったの?」
それは、そうですね~・・・
「だって、お互いに痛いじゃないですか~」
「それは、最初のもそうじゃない?」
「ええ。でも、あれは反射的なものでしたから~。私個人としては、かな~り心が痛んでるんですよ~?」
赤の他人なら、どうでもいいんですけどね~。
ミカさんには、かなりお世話になってますから~。
「いま、一撃でも貰ったら死ぬかもしれない状況なのに?」
「確かにそうですけど、相手はミカさんですからね~。お互いがお互いを気遣える程度には、信頼が生まれてると思ってますよ~?」
だからたぶん、当たりそうになったら消えるか、そもそもあたっても死なないはずなんですよね~。
「・・・そうか。お前は、葵ちゃんのギフトをそうやって封印したのか」
「どうしました~?」
「・・・ううん。ようやく、君の封印の解き方が分かったんだよ」
そう言いながら、ミカさんは手を突き出してきました。
「うん、そうか・・・確かにそれなら、外から手を加えない限り封印に綻びすら生まれない。予想外だよ、ほんと」
「どうしたんですか~?」
「ううん、ただちょっと、驚いてるんだよ。あいつ、中々に考えたなぁ、って。・・・ここは、さっきも言ったように僕のゲーム盤だ。だから、ここはほんの少し箱庭のシステムを持ってる・・・これでも善神だから、やりたくはないんだけど・・・仕方ないね」
その瞬間、目の前に羊皮紙が現れました。
内容は・・・
『ギフトゲーム名“天子よりの試練”
・参加者 赤羽葵
・勝利条件 自らの封印を解く
・敗北条件 勝利条件を満たせなくなった時
・備考 敗北時には、施設の全ての人間の命を天へと案内する
宣誓 友の名のもとに、この試練を開催します “ミカエル”印』
「・・・これ、どんな冗談ですか~?」
「ゴメン、全部本気だよ。こうでもしないと、君の封印は解けないから」
「今すぐにこれを訂正してください。じゃないと・・・あなたを、許せなくなります」
「それで、いいんだよ」
その瞬間、あたしはミカさんを殴り飛ばした。
ミカさんが壁に打ち付けられて血を吐くのを見て、再び。
「もう一度言います。訂正しろ」
「ううん・・・訂正しない。これで、あってるはずだから」
そう言いながら放たれたものを、脚で蹴り砕く。
「今のは・・・」
驚いているミカさんを蹴りあげて、落ちてきたと声炉を再び蹴り飛ばす。
壁に打ち付けられたところに追い打ちをかけて、ミシリ、と音がしたところで手を止めます。
「ははは・・・天使の骨を折るって、どれだけ・・・」
「・・・お願いですから、早く訂正してください・・・お願い、ですから」
目の前で、ミカさんが息をのむ気配が伝わってきました。
「葵ちゃん、泣いて・・・」
「・・・あなたは、あたしたちを助けてくれました。・・・これ以上、傷つけたくありません」
誰も、傷つけたくないとは言わない。それでも、大切な人たちは傷つけたくない。
家族同然の施設の子供たち、学校の友達、ミカさん。こんなあたしにも親しくしてくれる人たちを。
「・・・ごめんね、葵ちゃん。それでも・・・やめれないんだ」
そう言いながらまた撃たれたので、あたしは両手でそれを掴んで投げ飛ばす。
その間に離れていたミカさんは、もう戦えそうには見えません。
それでも、まだやる気のよう。
「・・・あいつは、君に優しさを植え付けた。・・・だから、人を傷つけかねないギフトを君自身の意思で封印したんだ。中々に巧妙なものだね、本当に」
「・・・・・・」
「だけど・・・君は優しすぎる。少し、それを失ってもらうよ」
そう言ったふしから・・・ミカさんの体は、どんどん崩れていく。
「な・・・ミカさん、」
「うん、このままいけば僕は死ぬだろうね。この体、もう限界だし・・・魂になっても、少しは動けるからいいんだけど」
そう言いながら体が崩れていき・・・おそらく、魂も摩耗している。
「さあ、封印を解いて僕を消し去るんだ!魂になれば、僕は消えるついでに彼らを簡単に連れていける。それでもいいのかい!?」
つまり・・・ミカさんだけじゃなく、皆も・・・
それだけは、だめだ。
こんな化け物にも、親しくしてくれる人がいる。
そんな人たちが、あたしのせいで死ぬ。それは、だめだ。
なら・・・解決策は、一つだけ。
「・・・簡単なこと・・・しゃらくさい、ですね」
そう・・・ミカさんが言う、ギフトと言うものさえ使えるようになればいい。
「・・・うん、それでいいんだよ」
ミカさんがそう、崩れながらも笑顔で言ってくる。
さらに追い込むためか、決断させるためか。
放たれた物に対して手を向けると・・・ぶつかった瞬間に、手にとりこまれます。
次に飛んできた物に対しては、腕から同じものを放って相殺させる。
「・・・これで、君の勝ちだ。君はギフトを手に入れた。・・・敗者は大人しく去るとしようか」
そう言いながら消えようとするミカさん。
目の前で体を失っていき、魂だけになる、
そのまま消えようとしているので・・・私は、両手から黒を超える黒・・・常闇を広げて、どこにも行けないようにします~。
「え・・・これ、は?」
「私のギフト、でいいんでしょうか~?ん~・・・あんな感じになるのはもうこりごりですね~。疲れましたよ、全く・・・」
「・・・あはは。葵ちゃん、全然変わってないや」
ミカさんの魂はそう言いながら、地面に座り込みました。
「・・・ねえ、君の優しさを使っての封印、優しさを失わないでどうやって解いたの?」
「一瞬、失いかけたんですけどね~。でも、優しさのおかげで封印が解けましたよ~。・・・私は、どうにもミカさんを切り捨てられないみたいでして~」
「そっか・・・そんな方法もあったんだねぇ・・・ごめんね、葵ちゃん」
「気にしないでください~。私はもう、気にしてませんから~」
終わりよければすべてよし、それでいいんじゃないですかね~?
「・・・葵ちゃん。僕の体があった辺り、何か落ちてない?」
「何か、ですか・・・これですかね~?」
服などをかき分けてみると、そこにはライトピンクのカードが落ちていましたぁ。
「うん、それだ。箱庭で生きていくなら・・・魔王のコミュニティと戦うなら、絶対に必要なもの。ギフトカードだよ。僕からのプレゼントだ」
「ミカさんからはもう、何度もプレゼントをもらってるんですけどね~。でも、ありがたく頂きます」
てにもつと、文字が浮かんできました~。
朱羽葵・ギフトネーム“検索失敗”“空間倉庫”
「うん、これが葵ちゃんのギフトなんだね。これで・・・僕の仕事も終わりかなぁ・・・」
「あらあら、勝手にいなくなるつもりですか~?」
「うん。そもそも、体がなくなっちゃったからさ。魂だけでは、ここにとどまるのは難しいんだよ。・・・これがなくなったら、すぐにでも消えるんじゃないかな?」
「なら、入れ物があればいいんですよね~?私の中にでも住みますか~?」
ミカさんが驚いた顔になりました~。
今日は、色んなものが見れる日ですね~。
「魂だけなら、私に憑依でもすればなんとかなるんじゃないですかね~?」
「・・・本当に、葵ちゃんは優しすぎるなぁ」
「それが院長・・・父さんが、私に教えてくれた唯一のものですから~」
『常に笑顔であれ。誰に対しても優しくあれとは言わない。それでも、大切な人には優しくあれ』
かったい口調で、口癖のように私に言ってくれたこと。
そして、毎日私に愛情を注いで、優しくしてくれた。そんな日々が、今の私を作っているんですよね~。
「・・・ううん、それはいいや。でも、このまま消えさせてはくれないんだよね?」
「あたりまえじゃないですか~。何のために、あんなに大変な思いをしたと思ってるんですか~?」
「優しいねぇ、葵ちゃんは。・・・前にあげたロザリオ、ある?」
首から下げていたそれを取り出すと・・・ミカさんの魂は、そこに入って行きましたぁ。
「・・・こんなのでいいんですかぁ?」
『こんなのって、ひどいなぁ。僕自ら作った、破魔のギフトが宿ってる十字架だよ?』
ものすごい物を誕生日に贈ってくれたものですね~。
それから、元の部屋に戻ってミカさんから箱庭について聞いて・・・
『それで、葵ちゃんはどうするの?』
「そうですねぇ・・・なんにしても、ここをこのままにしていくわけにはいきませんからぁ・・・」
『それについては、いくつか手を打ってあるよ。今度は本当に知り合いにあたって、後見人とか寄付とかを頼んである。信頼できる相手だ』
「・・・なら、最後に葵お姉さんからみんなへのプレゼントをしていくとしましょうか~」
そう言ってから台所に立って・・・ケーキを、焼きます。
『何でケーキなんだい?』
「皆からずっと、ケーキを作ってほしいって言われてたんですよね~。自信がなかったので作ってあげなかったんですけど・・・最後くらいは、と思いまして」
なんにしてもこんな力を持っているのではここに帰ってきて皆を傷つけないとは限りませんから・・・帰ってくるのは、難しいんですよね~。
そして、たっくさんのケーキを何種類も作って、冷蔵庫にしまって・・・自分の部屋に、戻ります。
そこで制服に着替えて、そして、手紙を開きます。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能を試すことを望むならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界のすべてを捨て、
我らの“箱庭”に来られたし』
何を言っているのか、全然分かりませんでした。
これ、やっぱり誰かのいたずらなんじゃ・・・そう思っていたら勝手に口が動いて、ぽつりと一言。
でも、次の瞬間には空中にいて・・・最初の印象は、大切ですよね~。
すう、吐息を吸いこんで、悲鳴をあげましたぁ。
△▼△▼
「と、これが葵お姉さんが元の世界であった、一番の非日常ですかね~」
「うん、その話にもアタシたちは驚いてるんだけど・・・」
「何より驚きなのは、何があっても話を中断しなかったことよ」
中断するようなことでしたかね~?
巨人が攻め込んできたり、色々とごちゃごちゃしていただけですよ~?
それで、今は・・・
『ギフトゲーム名“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”
・プレイヤー一覧
・獣の帯に巻かれた全ての生命体。
※但し獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断とする。
・プレイヤー側敗北条件
・なし(死亡も敗北と認めず)
・プレイヤー側禁止事項
・なし
・プレイヤー側ペナルティ条項
・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。
・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。
・ペナルティは“串刺し刑”“磔刑”“焚刑”からランダムに選出。
・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適用。
※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課される。
・ホストマスター側 勝利条件
・なし
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスター・“魔王ドラキュラ”の殺害。
二、ゲームマスター・“レティシア=ドラクレア”の殺害。
三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ。
四、玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繫がれた革命指導者の心臓を撃て。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“ ”印』
新しく始まったゲームに、巻き込まれちゃってますね~。
空には大きなドラゴンが・・・レティシアちゃんがゲームマスターじゃなければ、楽しめたんですけどね~。
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