永遠の空~失色の君~
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EPISODE1 IS学園
IS―――――正式名称はインフィニットストラトス。篠ノ之束によってもたらされたそれは瞬く間に世界にその実用性と脅威を知らしめた。
その大きなきっかけとなったのが白騎士事件である。
当初、ISの発表された当時はその発想は世界に受け入れられることはなく、当時まだ学生だった彼女の妄言として処理されてしまい実用までには至らなかった。
しかし、世界は彼女の存在を世に知らしめる。
世界各国のトップレベルのセキュリティがハッキングされた。それにより軍事システムが暴走。100発近くものミサイルが放たれた。
そしてそれをすべて撃ち落としたのが白騎士と呼ばれる機体である。白騎士は圧倒的な戦力と科学力を見せつけミサイルをすべて撃墜。鹵獲に現れた軍事戦闘機さえも死者をださずにこれを退けた。
そんなことがあってから、世界はISという存在を受け入れた。ISは女性にしか動かせないということもあり現在では女尊男卑の構図ができあがってしまうほどその影響力は計り知れない。
だが、そんな世界にイレギュラーが起こった。
若干16歳の学生がISを起動させたのである。しかも、“男”で。
名前は織斑一夏。かのブリュンヒルデ、IS世界大会覇者の織斑千冬を姉に持つ彼は瞬く間に世間の話題をさらった。
そして今、そんな彼が僕の目の前で目を輝かせながら席に座っている。
「転校生の蒼月ライです。非公式ではありますが男性でISを動かすことのできる二番目の操縦者になります。よろしくお願いします」
「・・・・お」
「「「「「「「「「「「「「男だー!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」
教室が、揺れた。
◇
転校生というのは実に物珍しい目で見られる。わかりやすい例えで言うなら小学校の時、校庭に近所の野良犬が入ってきてしまうなんてことがあっただろう。その時にそこにいる人間の目は普段その空間にいることのないその野良犬に集中される。
あるものは給食の残りを与え餌付けし、またある者は好奇のまなざしで見つめいる。いま僕が置かれている状況はまさにその野良犬と似ている。
質問から来る質問。対処しようと奮闘するもキリがない。
そんな時、輪の中に入ってくる人影が一つ。黒髪の背の高い少年。端正な顔立ちと適度に鍛えられた身体、まさにイケメンという言葉は彼こそが一番似合うだろう。
「蒼月、だよな?」
「ああ。織斑一夏だな」
「この学園で唯一おんなじ男子だ。お互い仲良くやろうぜ」
願ってもないことだ。正直この学園に男一人というのは気がめいる。女性が苦手というわけではないが自分意外は全員異性というのはキツイ。差し出された手を握り返す。
「こちらこそ。僕のことはライでいい」
「わかった。俺も一夏でいいぜ」
この様子を見てなにやら周りから甘いため息やよくわからない危ない発言が聞こえてくるのあh気のせいだと思いたい。特に後者は。
「ちょっとよろしくて?」
今度は女の子。それも金髪の外人の子だ。
「僕になにか?」
「あなた、世界で二番目の男性操縦者ですってね?名前からして日本の方かしら」
記憶もないし見つかったのは南海に浮かぶ孤島だ、なんて言えないのでここは彼女に話を合わせることにする。
・・・・・・にしてもなぜだろう。彼女の声に聞き覚えがあるのは気のせいだろうか?
「ああ。そう思ってくれてかまわない」
「ずいぶんとあいまいな返事ですのね?まあいいです。あなた、ISの知識はどれくらいおありで?」
「どれくらいと言われても、一般的としか」
ここに来る途中に見聞きした情報しかないため少なくとも一般常識くらいはあるだろう。束さんが僕にこの世界の知識情報を入れたと言っていたがまだそこまで詳しくしっているわけではない。ゆえにこの答えは妥当だろう。
「・・・・そこの猿よりはあるようですわね」
一夏を見下す金髪の少女。その視線に相対するように睨み返す一夏。このふたりどうやらわけありのようだ。
「・・・・わたくしのことはご存じで?」
「イギリスの代表候補のセシリア・オルコット。オルコット財閥のトップにして第三世代型ISブルーティアーズのパイロット・・・・僕が知っているのはこれくらいだ」
「結構」満足したのか小さく笑みを浮かべるミス・オルコット。こんな風に呼んでしまうのは彼女から漂う貴族にも似た気品さのせいか。
それにしても、やっぱり声が気になる。
「ミス・オルコット。一つ質問をいいかな?」
「庶民の要望に応えるのも貴族の務めですから。許可しましょう」
「以前、きみとはどこかで会った気がするのだが・・・・身に覚えはないか?」
僕の質問に彼女は態度を急に変えた。今までのものとは違い、どこかさげすむような目だ。
「ナンパなんて低俗なことを堂々とされるのですね。しかもこんな大勢が見ている前で」
もちろん、ナンパなんてする気は欠片もない。どうやらさっきの質問をナンパととらえたようだ。
「いや、別にそんなつもりは・・・・」
「あなたも所詮そこの猿と一緒のようですわね。心底あきれ果てましたわ」
カチン。そんな音がどこからか聞こえた気がした。
「おい待てよ金髪高慢ちき。ライはただどっかでおまえとあった気がして質問しただけだろ。それをナンパだなんだってのは言い過ぎだろ」
「フン、あなたがどうい言おうと今の発言はナンパの常套手段。気品がありませんわね」
売り言葉に買い言葉でヒートアップしていくミス・オルコットと一夏の言い合い。もう僕のことは眼中にないのではと思っていると急に彼女は怒りの矛先を僕に向けてきた。
「やはり蛮族、こうなったらお二人とも決闘にてお相手いたしますわ!」
「いや、僕は―――――」
「いいぜ。やってやらァ!」
そこでチャイムが鳴る。ぞろぞろと席についていく生徒たちに交じって火花を散らしながら席にもどる一夏とミス・オルコット。
どうしてこうなった。その言葉が虚しく落ちた。
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