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久遠の神話

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第百五話 テューポーンその一

                 久遠の神話
            第百五話  テューポーン
 上城は六甲山に向かっていた、その頂上を目指していた。その中で共に来てくれている樹里にこんなことを言った。
「テューポーンって名前を聞いて思ったけれど」
「あのね、私ね」 
 上城の言葉に応えてだ、樹里は自分の携帯でネットを使いつつ検索しながら彼にこう返した。
「今ちょっとそのテューポーンについて検索しているけれど」
「あっ、そうなんだ」
「その名前よね」
 テューポーンというその名前だ、二人で山への道を進みつつ話す。
「テューポーンってね」
「タイフーンになるのかな」
「私もそう思ったわ、それで今テューポーンについて検索してるの」
 そうしてテューポーン、上城がこれから闘う相手について調べているというのだ。
「どうした相手かね」
「物凄く大きな身体で」
「そうみたいね」
 ここでだ、樹里は検索して出て来た文章を読んだ。そこにテューポーンのことが詳しく書いてあった。
「その名前が台風の基になったというか」
「タイフーンがだね」
「そのままテューポーンの呼び名よ」
 それになっているというのだ。
「元々台風を表現した神様みたいね」
「豪雨に暴風に」
「とにかく凄まじい力で暴れ回るね」
 その荒ぶる力をだ、神として表したのがテューポーンだというのだ。
「そうした神様みたいよ」
「この場合は怪物だね」
「そう、いつも物凄い音を立てていて風も起こして」
 まさに台風そのものだ。
「外見も凄いわ、聞いてるかしら」
「ええと、何か頭が百個だったかな」
「そう、肩の上から竜の頭が長い首と一緒に百あるのよ」
 人のものではなくだ。
「それに全身に羽毛が生えていて。両手と胴体、太腿までは人間だけれど」
「それでもなんだ」
「両足、太腿から下は両方共蛇なのよ、蛇の下半身なのよ」
「そこはギガンテスと同じだね」
「けれどギガンテス達よりもね」
 工藤達が闘ったあの巨大な神達よりもというのだ。
「遥かに強くてね」
「それでだね」
「神話での大きさは両手を広げたら大地の端と端について」
 当時の世界は天動説から考えられ大地は丸いとは考えられていなかった。それでテューポーンの大きさもこう考えられていたのだ。
「頭、百個のそれは天空に届く位」
「とにかく大きいんだね」
「物凄く巨大でね」
「オリンポスの神々でも適わない位強かったんだね」
「ゼウス神以外は逃げた位ね」
 そこまでだったというのだ、このことはスフィンクスが話した通りだ。
「とんでもなく強いわ」
「それがテューポーンだね」
「まさに台風よ」
 その名前の通りだ、そこまでの荒ぶる力の持ち主だというのだ。
「そう簡単には勝てない相手よ」
「台風が相手だね」
「今度はね」
「台風はね」
 一体どうしたものか、上城もよく知っていた。神戸も日本にある限り台風は夏や秋になると常に来る相手だからだ。
「凄いからね」
「そうでしょ、とんでもなく強いから」
 伊勢湾台風や室戸台風にしてもだ。とにかく恐ろしい、地震に匹敵する程の恐ろしさが台風には存在している。
「だからね」
「これまで以上に覚悟してね」
「闘ってね」
「うん、それで絶対に勝つよ」
「そうしてね、見てるから」
 彼のそのテューポーンとの闘いをというのだ。 
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