ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~
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月下雷鳴
前書き
タイトル特に意味ないです。
弁当を食べ終わった俺は、ミザールの頭を撫でていると、不意にプレイヤーの一団が入ってきた。たく……色々台無しだな。
「おお、キリト、ライト!暫くだな」
話し掛けてきたのはクライン。いじりやすい人物である。昔は多少世話になったが、この頃は面倒を見るのが多い。そんなクラインがアスナとミザールを見ると固まり、自己紹介し始めた。しかも、あの顔で24とか……。取り合えず殺気立った目で見るとビクッとして口をパクパクさせた。安心しろ、死ぬのは手ぇ出した時だ。
そんなコミュニケーションを取っていると
「キリト君、<軍>よ!」
<軍>が安全エリアに入ってきて、俺達とは反対の方に座り込むと唯一座り込まなかった人物がこちらに近付いてきた。
「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」
……軍って本当にどんなのなの?
「ライト、元雷鳴騎士団の長だ」
俺がそう言うと、他のメンバーが一斉に吹いていた。良し、後で一発な。
「君らはもうこの先を攻略しているのか?」
「ああ。ボス手前でマッピングしてる」
「うむ。ではそのマップデータを提供して貰いたい」
……一瞬、軍って馬鹿なのと思った。
「な……て……提供しろだと!?」
「クライン、黙れ」
「でもよう!!」
「黙れと言った」
キッと睨み付けるとクラインが一歩下がる。
「勿論、喜んで提供しよう」
俺はトレードウインドウを出し、コーバッツにデータを送信すると、「協力感謝する」と言い、部下を連れて出ていった。
「……大丈夫かよ、あの連中……」
「幾ら何でもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」
「判らんぞ。ああ言う連中は無謀さが取り柄みたいな物だからな」
「……一応、様子だけでも見に行くか?」
キリトの問いに全員が頷いた。
安全エリアから出て三十分。俺達はボス部屋への回廊を進んでいた。
「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねぇ?」
「それは捨てきれないが、相手は軍だ。もしかすると……」
その予想は当たりだった。ライトの耳に微かに聞こえたのは悲鳴だった。それを聞いた俺とアスナ、キリトは一斉に大扉まで走り出した。
「バカッ……!」
アスナが悲痛の叫びを上げた。
大扉に着くと、キリトが半身を乗り入れて叫ぶ。
「おい!大丈夫か!!」
俺は中の人数を数える。……二人居ない。死んだか……?
その瞬間、一人が斬馬刀の横腹で薙ぎ払われ、HPを赤い危険域に落とした。
「バカ!!早く転移結晶を使え!!」
俺は叫んだが、男は絶望したような顔で、
「駄目だ……!く、クリスタルが使えない……!!」
「っ……!?」
結晶無効化空間……まさかこいつがボス部屋にあるとは………っ!!
「何を言うか……ッ!我々解放軍に撤退の二文字は有り得ない!!戦え!!戦うんだ!!」
「「馬鹿野郎……!!」」
人の命何だと思ってやがる……っ!!
「くそっ、出るぞ!!」
俺はなりふり構わず部屋に入る。武装を変更し、ボスと解放軍の前に出る。と、同時に巨大な剣がコーバッツを掬い上げようとしていた。
「させっかぁあああああっ!!」
俺はそれを、大きな盾で防ぎ、槍をグリームアイズに向けると、槍先から火が吹いた。
「これ以上……目の前で人を殺させやしない!!」
そう言うと、武器を手早く変更し、ハンマーを手に持つと、それを思いっきりどてっ腹にぶちこんだ。だが、大してノックバックせず、真正面から斬馬刀を喰らう。辛うじてハンマーで防ぐが、ガリガリッとHPを持っていかれる。元々構成が壁戦士ではないが……十分耐えきった!!
「キリト!!」
「任せろっ!!」
グリームアイズの側面から二本の剣を持ったキリトが現れる。
「お前、それバラしても良いのか?」
「こんな状態でお前だけアタッカーはキツいからな!!」
「確かにな!!」
そう言うと、キリトの一撃で硬直していたグリームアイズが回復し、大きな大剣を振り被る。
炎の軌跡を引きながら打ち下げられてきた剣を、俺はまた盾で防ぎ、その隙にキリトが左の剣で胴を一撃を見舞う。初めてのクリーンヒットで、ようやく奴のHPが目に見えて減少する。その隙に俺はメイン武器に持ちかえ、装備も緑色の防具を着装する。途端、右手に雷がほとばしる。
「グォオオオオ!」
憤怒の叫びを洩らして、悪魔が反撃の一撃を放ったが、俺とキリトは両手の剣を交差してそれを受け止め、押し返す。そこからキリトは二刀流上位剣技<スターバースト・ストリーム>を、俺は<ハンター>スキルカテゴリ<双剣>上位剣技<雷鳴・鬼人乱舞>を放つ。
「うおおおおおっ!!」
「セェエエエエッ!!」
途中の攻撃が幾つか悪魔の剣に阻まれるも、俺達は重い一撃を放ち続けた。
更に俺は乱舞が出終わった後、足を動かし、体術スキル<弦月>のモーションを取り、放ちつつ、そのままジャンプし、空中でガンランスを悪魔の顔に標準を合わせていた。
「……あああああああっ!!」
「くらぇええええええっ!!」
キリトの十六撃目と俺の竜撃砲がグリームアイズの胸の中を貫き、顔を焼いた。その一撃で悪魔は動きを止め、次の瞬間膨大な青い欠片となって四散した。俺は体制を建て直す事が出来ず、地面に叩き付けられ、意識を手放した。
「……イト!ライト!!」
悲鳴に似た叫びに、俺の意識は呼び戻された。正直、大剣を一人で防いでいたため、かなり痛いが、上体を無理矢理起こす。
「いっ……」
見渡すと、未だボスの部屋だった。手放していたのはほんの数秒らしい。キリトも同じく辺りを見渡していた。
目の前で目に涙を浮かばせたミザールを見ると、優しく抱き締めた。どうやらかなり心配させたらしい。
「もう……無茶ばかりする癖……どうにかしてよ……」
「済まん……」
俺は謝ると、ミザールの肩を借りて立ち上がった。
「全く……無茶してくれたな軍。後少し遅かったら全員死んでたぞ?まぁ、感謝しろよな」
コーバッツが何か言いたそうにしたが口を閉じた。
「キリト……後の説明頼むわ……俺は帰らせてもらうから……」
「お、おう……」
俺はキリトにそう言うと、よろけながら歩き始める。
「ライト君、これからどうするの?」
不意にアスナが言った。
「……暫く休むよ、多分な」
それだけ言うと、その場を去った。
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