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絶対の正義

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第十二章


第十二章

「この体育館のことですが」
「中を見学されたいのですよね」
「そうです。特に」
「特に?」
「貴方が殺したも同然のある人のことで」
 その言葉と共にだった。岩清水の後ろに突如としてめいめい私服の一団が姿を現わした。そうして古館を取り囲むと取り押さえそのまま体育館の中に連れ込んだのだった。
「な、何だ!?」
 古館はまず何が起こったのかわからなかった。
「何なんですか、貴方達は」
「あそこですよ」
 岩清水は古館を完全に取り押さえ中に連行していく同志達に対して告げた。中に入る時に体育館の鍵を締めておくことは忘れなかった。
「あそこの中に入れましょう」
「体育館の倉庫ですね」
「あの中ですね」
「はい、あの中です」
 そこにだと同志達に対して話すのだった。
「あそこで問い詰めましょう」
「そうですね。あの中は絶好の場所ですね」
「誰も入っては来ませんし」
「それに」
 ここでそのうちの一人が言った。古館を抑えている一人だった。
「あそこが現場ですしね」
「そうです、だからです」
 岩清水は残忍な笑みを浮かべていた。そのうえで言うのだった。
「こいつにとってもです」
「体育倉庫に?まさか」
 連行されて行く古館はここで不吉なものを悟ったのだった。
「そこはまさか」
「そうです。あの場所ですよ」
 古館に向けた笑みはぞっとするものだった。笑っていたがそれは子供が虫をゆっくりと時間をかけて足をもぎ取って火で炙る様な、そうした笑みであった。
 その笑みを彼に向けたうえでその倉庫の中に入る。倉庫の中にはマットやボールとそれを入れている箱、それと跳び箱がある。そういったものが並んでいる中に古館を連れて来たのだった。
 その彼をマットの上に放り出してだった。岩清水はそこから彼に言ってきた。
「一つ御聞きしたいことがあります」
「御聞きしたいこと?」
「この倉庫で何があったのかは御存知ですよね」
 彼を見下ろしてまだその笑みを浮かべていた。
「七年前に」
「七年前!?まさかあのことを」
「そう、あのことをです」
 古館を見下ろしながら冷酷そのもので笑い続けていた。
「この倉庫で一人の生徒が自殺しましたね」
「いじめでしたよね」
「それですよね」
 同志達がそれぞれ言ってきたのだった。彼等は既に古館を取り囲んでいる。そうして彼を逃げられないようにして威圧しながら言ってきたのである。
「いじめを苦にして」
「それで自殺を」
「貴方のクラスメイトでしたね」
 また言ってきた岩清水だった。
「そうですね」
「知りません」
 岩清水から顔を背けての言葉だった。
「そんなことは」
「一年二組でしたね」
 その顔を背けさせ続ける彼に言い続ける岩清水だった。
「そうでしたね」
「知りません」
「知らないのですか」
「そうです」
 顔を背けさせ続ける古館だった。彼の言葉は意固地なものにさえなっていた。
「何も知りません」
「クラスメイトの教科書に色々な色のマジックで落書きしたことは?」
 岩清水は顔を背ける彼にこう言ってきたのだった。
「それは御存知ありませんか」
「それは・・・・・・」
「ではお弁当に色々なものを入れたことは」
 今度はこのことを言ってみせたのだった。
 
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