ウィザード外伝-仮面ライダーサマナー-~指輪の召喚師~
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饗宴の始まり
人々に恐怖を与え、絶望の淵に追いやり、自らの同族を生み出すことを目的とする怪物・ファントム。
人々の希望を守るため自ら『最後の希望』と名乗り戦う指輪の魔法使い・ウィザードとファントムを喰らって自らの命の糧とする古の魔法使い・ビースト。
今から始まるのはウィザードやビーストとは別に人知れずファントムと戦うもう一人の指輪の魔法使いの物語である…。
???
『なに?ファントムが次々と行方不明になるだと?どういうことだ…カラドリウス?ワイズマン達が手を焼いてるというウィザード、もしくはビーストとやらにやられたのか?』
『いえ、フンババ様、なんでも聞いた話によれば神隠しの様なものに遭ってしまったらしく…我々と通じてるファントム達がここ最近その被害に遭い文字通り「消え」ました。』
二本の角を生やした獣の様な顔を持ち深紅の結晶に覆われた屈強な肉体に雄々しい鷲の翼と鈎爪を生やしているファントム・フンババは美しく輝く蒼白の翼を持つ鳥の様な姿をした女性的な身体つきのファントム・カラドリウスから奇妙な話を聞いた。神隠しの如くファントム達が消える謎の消失事件、だが真っ先に浮かんだ容疑者である二人の魔法使い…ウィザード/操真晴人ならびにビースト/仁藤攻介はこの件には一切関わっていないらしい。
『…カラドリウスよ、何人かにその件について探らせろ…。』
『畏まりました。』
『もしこの件に我々ファントムの邪魔をする何者かが関わっているようならば…消せ。』
『ハッ。』
フンババがそう命じるとカラドリウスは周囲に蒼い羽根が混じった風を巻き起こしながらその場から姿を消す。恐らく他のファントム達に今の事を伝令に行ったのだろう…。
「何が神隠しだ…!!我々は全ての人間に絶望を与える絶対的な存在、ファントムだッ!そんな訳の解らん現象なんぞに恐れをなしてなるものかッ!!ヴォア゙アアア゙アアアアアアアア゙ア゙アア!!」
カラドリウスが去った後、一人残ったフンババは苛立ちを隠せず、地面に拳の一撃を入れて大地を揺るがし、猛虎の如き怒りの咆哮を上げるのだった…。
第六天魔(だいろくてんま)市・羅刹道(らせつどう)通り
「今夜飲みに行こうぜ!」
「その後はカラオケだな!」
「今夜は帰らないぞ!あははははは!!」
(みんな、なんだか楽しそう…)
犬を連れ、杖で地面を叩きながら歩道を歩く一人の小学生くらいの少女…雪之瀬鈴鳴(ゆきのせ・スズナ)は擦れ違いざまに聞いた地元の大学生の若者のそんな何気ない会話を聞き、ふと歩みを止める…。
(それに比べて私は…こんな目だから…誰も…。)
「わんっ!わんわんっ!わふっ!!」
「ふふ…そうだね、私にはロッキーがいる…。」
彼女は所謂視覚障害者であり、生まれた時から目が見えず、周囲から腫れ物の様に扱われ続け、また、自身の引っ込み思案で臆病な性格もあり誰一人として友人と呼べる存在を作れず、そう呼べるのは幼少の頃から連れ添ってきた盲導犬・ロッキーだけであった。そんなためか鈴鳴は先程の大学生グループのように周囲で親しい友人・知人と他愛もない会話をしながら歩く人々を羨ましくは思ったが彼女は自分にはロッキーだけで充分らしくそれに関して不安も不満も無かった。
「行こう、ロッキー…。」
「わうん!」
鈴鳴がロッキーを連れてその場を離れようとした時だった。
「ギャアアアアアア!!」
「た…助け…ひぎゃあああああ!!?」
「ば…化け、物…ガハァッ…!!」
「…え…?」
鈴鳴の耳に聞こえてきたのは通行人達のただ事ではない悲鳴だった。盲目のため彼女には何が起きたか解らなかったが、路上には何人かの人間がその悲鳴を上げた後、首や四肢…全身のパーツが巨大な獣かなにかに食い千切られたかのように無くなってたり、顔が潰れる様に凹むなど有り得ない変形をして二度と動かなくなったり…こんな夥しい死体の山など仮に鈴鳴の目が見えてたら間違いなく失神しているところである。
『コォオオオ…ハァアアア…グルォアアアアアアアアアア!!』
「いやあああああ!や、やめ…あぎぃいいいい!?痛ギャアアアアアア!」
この惨劇を作り出した犯人は人間ではなかった。額に閉じた状態の口が付いてるワニに似た爬虫類の様な顔、背中にはサメの様な巨大な鰭、両肩に尾鰭を反らした魚のオブジェをあしらった金色の鱗で出来た鎧を身に纏い、両手には金色の鋭い鈎爪を嵌めている…といった異様な外見をした怪物、否、ファントムであった。餓えた野獣の如く荒々しい咆哮を上げながら逃げ遅れた人間を捕まえ、額の口を開いて生々しい巨大な舌をベロリと出して捕縛し、そのまま喰らい始め、新たな死体を生み出していく。
『貴様らァッ!!勝手に逃げるんじゃねぇッ!!そんなに俺の腹を空かせたいのか!ああ!?大人しく喰われろォオオオァアアアアア!!』
このファントムは余程空腹で苛立ってるせいか、全てのファントムの『人間を絶望させて新たなファントムを生む』という最大の目的そっちのけで人間を次々に喰い尽くす事しか頭に無かった様だ。
「あ…ああ…あ…。」
『お!?美味そうだなァッ!喰わせろ!!ガキィッ!!』
目に見えずとも解る異常事態に鈴鳴は知らず知らずの内に全身を震わせ、化石の如く固まってしまう、だがファントムがそれを見逃してくれるワケも無く、鈴鳴に迫る。
「わん!わん!!うううー!!」
『なんだァッ!?邪魔だ!うざってぇんだよ!!犬ッコロ!!』
「ぎゃん!?」
「ロッキー!!」
主人の鈴鳴に危機が及んだと察知したのか、勇敢にもロッキーはファントムに立ち向かうが如何せん相手が悪過ぎた…人間でも敵わない相手に一介の盲導犬に何が出来ようか?ファントムに簡単に払い除けられてしまう。
『さぁてと…ギヒヒヒヒヒヘヘヘヘ…!!』
「あ…いや…やめ…!!」
『後はテメェを…って、ンガッ!?』
ファントムは額の口をガパァッと開き、自分の舌を伸ばして鈴鳴を嫌らしく舐め回し、彼女の幼い身体を蹂躙しているその最中だった…舌にブスリッと何かが刺さった痛々しい音と共にファントムに鋭い痛みが走った。
『『『~!!』』』
『「使い魔」だと…?どこの誰だ!ゴラァッ!?人の食事の邪魔をする奴ァッ!!出てこいや!魔法使いィイイイ!!』
よくよく見るとファントムの舌の周りには緋色のハチに似た小さい奇妙な生き物が群れをなして纏わり付き、針で刺しまくっていたのだ。ファントムはこれが魔法使いが使役する『プラモンスター』と呼ばれる使い魔の一種であると一目で悟り、怒り狂いながら自分に纏わり付いてるプラモンスターを払いのけて近くに居るだろう魔法使いにこの場に出るよう要求、すると…
「戻れ、ボクのフェアリー達」
指を鳴らす音と同時に大量の緋色の蜂…プラモンスター・スカーレットフェアリー達が主人である魔法使いと思われる人物の下へと戻る、フェアリー達を扱う魔法使いの特徴…セミロングの艶やかな白い髪、中性的な顔立ちの飾り気のないスーツに身を包む人物であった
『テメェか…!このマカラ様の食事の邪魔しやがった魔法使いは!?』
「失礼、目を覆いたくなるような悍ましさと女性の扱いの酷さのあまりに邪魔させていただいたよ、それと一つ『間違い』がある。」
『はあ?間違いだ?』
「ボクは魔法使い(ウィザード)じゃない…召喚師(サマナー)さ。」
[DRIVER ON!Please]
暴喰のファントム・マカラは自分の食事を邪魔してきた相手に怒りの視線を向けるが、『召喚師』を名乗る人物はマカラの醜悪さに呆れつつも落ち着いた様子で指輪…ドライバーオンリングを嵌めると、腰に広げた手の形をした奇妙なベルトが装着される
[Shavaduvi Touch Henshin~♪Shavaduvi Touch Henshin~♪]
「変身!」
[Change…Now]
ベルトからやたら低い奇妙な音声が響いたと同時に背中から白銀に輝く魔法陣が現れ、それが通過した途端…その姿は普通の人間からこれまた奇妙な姿へと変化する
精巧に加工された白銀(プラチナ)で出来た様な仮面、同じ材質で造られたボディには黒く禍々しい翼を模した紋様(トライバル)が刻印されており、ロングコートに似た様な黒衣を纏い、背中には短めのショートマントを付けた戦士…その名も、指輪の召喚師・サマナー
『さあ…饗宴の時間(パーティータイム)だ!』
[CONNECT Now]
サマナーは自身が使う魔法の指輪・サマナーリングの内の一つ…コネクトリングで魔法陣を出してそこへ手を突っ込み、黒い紋様が刻まれた鐘(ベル)が複数吊り下げられている大鎌型の武器『ヴェルサイザー』を取り出し、その切っ先をマカラに向ける。
『ざけてんじゃねえ!上等だ!てめぇ!ゴラァアアアアアア!!』
『そんな単調な動きで…ハッ!』
マカラは野獣の様な怒りの咆哮を轟かせ、飛び掛かりながら両腕の鈎爪を振るうがサマナーは難無くそれを軽快なバックステップでかわして距離を取り、ヴェルサイザーを投げつける。
『ギャッ!?なんだこれは!?ガッ!ゲッ!?ガァアアアアッ!!』
主(サマナー)の手を離れたヴェルサイザーはまるで意志を持ったかの様に回転しながらマカラの身体を何度も斬りつけ、ついには左肩を深く刔り、右手の鈎爪を切り落としてしまった。
『おいおい、パーティーはまだ始まったばかりだよ?この程度で閉幕にされては困るじゃないか…まだまだお楽しみがあるんだ。じっくりゆっくり楽しんでおくれ。』
[PLASMA Now]
『ぎぃえあぎゃああぁあああああ!!?』
サマナーは戻ってきたヴェルサイザーを掴むと間髪入れずに次のサマナーリング…プラズマリングを嵌め、右手の平を向けると魔法陣が現れ、次の瞬間…青白い電撃が飛び出し、避ける暇も無くマカラはダメージを受けてしまう。
『はあ…なんだか思いの外楽しめないな、もういいや…これにて閉幕…!?』
『させると思いますか?』
サマナーはマカラに対して興味を完全に無くしたようで、その首を狩り取ろうとしてヴェルサイザーを再び投擲した…だが、突如、蒼い鳥の羽根を撒き散らしながら巻き起こった巨大な乱気流の壁がそれを防いだ。
『マカラ、ゲートそっちのけで暴れてると聞いて来てみれば…なんですか?このザマは…?』
『カラドリウス…デメ゙ェ…余計な真似を…ガフッ!?』
『お黙りなさい、愚か者…我々の目的はなんですか?答えなさい』
『痛ッ…ギャエ゙ァアアガァアアア!!に…人間を絶望…ざぜで…新だなファントムを…生み出じ…ギヒィイイイ!!?許じでぐでぇええ!!』
乱入してきた新手のファントム…否、カラドリウスは今回の馬鹿騒ぎを起こしたマカラに踵落としを叩き込んで地面に叩きつけて頭を踏んで無理矢理捩じ伏せる。カラドリウスの暴挙を振りほどこうとしたが次の瞬間…マカラの顔がカラドリウスの足から巻き起こる旋風によりズタズタに切り刻まれ、堪らず彼はこれ以上の制裁を逃れるために情けない悲鳴混じりでファントムの目的を復唱した。
『解ればよろしい、では今は分が悪いのでこれで引き下がりましょう…例えゲートが目の前に居ても、召喚師…?とやらに邪魔されては元も子もない上にこの愚か者(マカラ)を失う訳にいかないですからね』
『…ッ!待て…!?』
『それではまた、御機嫌よう…』
カラドリウスはマカラの頭を掴みながら蒼い羽根混じりの突風を巻き起こし、その場から姿を消した…。
『クソッ…逃げられたか、新手が来たから面白くなりそうだったのにな~…』
サマナーは変身をつまらなさそうな様子でその辺に落ちてた小石を爪先で蹴り飛ばしながら変身解除し、元の姿に戻る。
「君…大丈夫かい?」
「…あの…?あなた…誰…?」
「失礼、名乗るのを遅れた…ボクは陰波銀嶺、以後よろしく…」
『ガウウウウ!!』
「…って!ちょっと!?ワンちゃん、落ち着いて!ボクは君の主人を救っ…痛ったぁあああ!!」
陰波銀嶺(いんなみ・ギンレイ)…と、サマナーだった人物が丁寧にお辞儀しながらそう名乗るが、ロッキーから不審者と見なされ、足を噛みつかれてしまい、情けない一面を晒してしまった…なんとも締まらない。
ファントムの危機から一人の少女を救った指輪の召喚師・サマナーのもたらすものは果たして希望か?絶望か?
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