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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第65話 怒れる疾風

 
前書き
今回は千秋の神器(セイクリッド・ギア)を出します。
それから、ハイスクールD×Dの十八巻、いろいろあったけど、ファーブニルの事を少し見直しました。
そして曹操、相変わらずチートだなぁ。 

 
「……ぐっ…」
千秋に吹っ飛ばされたライニーが苦悶していた。
そしてライニーを吹っ飛ばした千秋の手には一本の金属製の棒が握られていた。
一体何が起こったかと言うと、千秋はライニーに接近するなり蹴りを放とうし、ライニーはすぐに反応し防御(ガード)しようとした。
が、千秋のそれはフェイントで懐から今持っている棒を取り出し、突きを繰り出す。
完全に蹴りに対応しようとしていたライニーはその一撃に対処できず、鳩尾にモロに食らった訳だ。
今の千秋の攻撃は俺の我流剣術を元にしたものだ。
相手に蹴り技だけと思わせた所へ棒による一撃。
初見の相手に有効な奇襲戦術だ。
「……チッ!…」
ライニーはすぐに立ち上がった。
案外タフだな。
千秋は右手を自身の横に翳すと、もう一つの指輪(リング)の宝石部分が光り、さっきのに比べると大分小さい魔方陣が出現した。
千秋は魔方陣に手を突っ込むと手に持っている棒と同じ長さの棒を三本取り出した。
「やはりあの指輪は武器を取り出す為の物だったのね」
部長の言う通り、あの指輪(リング)は洋服交換指輪(ドレス・チェンジ・リング)と同じ原理で装備品を取り出すための物で武装指輪(アーム・リング)と言う名だ。
千秋は持っている四本の棒を連結させ、一本の長大な棒にした。
あれが本来の姿で俺の持つマジックキラーと同様、対魔力仕様された鉄棒、マジックブレイカーだ。
マジックキラー同様、多くの(特に棒術を駆使する)賞金稼ぎ(バウンティーハンター)達が使っているものだ。
千秋はマジックブレイカーを軽く回し、素振りをして感触を確かめた後、先端をライニーに向ける。
「……前言を少し撤回する。……武器…使わせてもらうぜ…」
そう言い、ライニーは左右の腰に両手をやると何かを取り出した。
(……十字架?)
それは銀の装飾の十字架であった。
そして二つの十字架が突然光り出し、形状が変化していった。
変化したそれはグリップの部分に十字架をあしらった刻印がされた二丁の白銀の拳銃であった。
「じゅ、十字架が!?」
十字架が拳銃に変化した事に元シスターであるアーシアが驚愕していた。
アーシアだけでなく部長達もかなり驚いていた。
「……あれはまさか…十字具(クロス)…」
部長がそう呟く。
「部長、知ってるんですか?」
「……一部の悪魔祓い(エクソシスト)が聖なる武具になる十字架を使っていると言う噂を耳にした事があるの…それが十字具(クロス)よ。……でも詳細まではよく分からないわ…」
イッセーが部長に聞くが部長も詳しくは知らないらしい。
「……元々は複数の十字架を錬金術で統合し、聖なる力を幾重にも強化した十字架だったが、強化した聖なる力が思いの外強力だったので、その力を武具として転用しようと改良を行いできた物が…」
「……あの十字具(クロス)って訳か」
「その力はエクスカリバーには遠く及ばないが使い手によっては並の聖剣以上の力を発揮する」
アルミヤがご丁寧説明してくれた。
「……いいの?悪魔である私達にそんな事を教えても?…」
「すでに堕天使側に存在は知られている。そう遠くない内に悪魔側にも知れ渡るだろう。それから彼女達の先ほど発言に対する謝罪の意味合いもある」
「……アーシアとイッセーの事か」
「ライ君はある理由で悪魔を激しく嫌悪しているの。だから兵藤一誠君に対してあんな言動を取ったの」
「ま、それは見てれば一目瞭然だからな」
「アーシア・アルジェントに関しては、兵藤一誠、君の言う通り信徒達が彼女の意思を無視して勝手に聖女に祀り上げた事は否定はしない。だが、彼女の優しさを否定する訳では無いが彼女の行いは我々にとっては許容できないものである事も理解してもらいたい」
「………」
アルミヤの言葉にイッセーは黙ってしまう。
バンッ!バンッ!バンッ!
銃声音が響いたので、千秋達の方へ視線を戻す。
千秋がかなり押されていた。
ライニーが銃を撃ちながら千秋に向かって駆け出す。
千秋は銃弾をマジックブレイカーで弾くなり避けるなりしていたが、ライニーの接近を許してしまう。
そこからは激しい接近戦の始まりだった。
どうやらライニーの戦闘スタイルは接近戦に銃撃を織り混ぜた物の様だ。
しかもかなり独創的だった。
蹴りや銃撃、銃を鈍器にした打撃は予想できたが、まさか銃を鈍器にした打撃をマズルジャンプを利用して威力を上げた攻撃は予想外だった。
ガンッ!ドガッ!
「ッ!?」
「千秋!」
千秋は銃を鈍器にした打撃をマジックブレイカーで防いだ所を蹴りをモロに喰らった。
「……あの体術…奴のオリジナルか…」
「銃撃複合戦闘体術(ガン・マーシャルアーツ)…彼はそう呼んでいるよ」
いつの間にかこちらに来ていたゼノヴィアが答える。
千秋は接近戦は不利と悟ったのか距離を取り、武装指輪(アーム・リング)で黒鷹(ブラックホーク)を取り出し、即座に矢を放つ。
黒鷹(ブラックホーク)の売りは矢の飛距離とスピードだ。
あの距離なら確実に回避は間に合わないだろうし、銃弾で弾く暇も無いだろう。
が、ライニーは乱射によるマズルジャンプの勢いを乗せて腕を振り上げ、矢を弾いた。
バンッ!バンッ!
ガキッ!ガキン!
「ッ!?」
そしてすかさずライニーは銃撃で次弾を放とうとしている黒鷹(ブラックホーク)を弾き飛ばす。
黒鷹(ブラックホーク)は狙撃向きな上、機能の性質上、連射ができない欠点がある。
……そこを着かれたか…。
「ここまでだな…」
ゼノヴィアの言う通り、眼前の光景は千秋の詰みだった。
が、千秋は未だに諦めず、戦う意思を示していた。
「……もう勝負は着いただろ…何故そこまでして戦う?…」
その答えは単純だった…。
「……お前がイッセー兄を侮辱したからだ!…」
……元々今の千秋の戦いの理由は奴のイッセーへの侮辱が許せなかったからだ。
「……その男は悪魔だろ…何故悪魔の為にそこまでする…契約か?…」
「……そんなの関係無い!…」
……あえて言うならイッセーだからか…。
ライニーはその場で嘆息する。
「……完全に悪魔に魅了されている様だな……足を潰すか…せいぜいその男に出会った事を後悔するんだな…」
そう言い、千秋の足に銃口を向ける。
……イッセーに出会った事を後悔しろだと…。
……何も知らないとは言え、ここまで言われると本当に来るものがあるな本当…。
バンッ!バンッ!
銃口から千秋の足を貫く為の銃弾が飛び出る。
「千秋!!」
イッセーが慌てて千秋の名を叫ぶ。
……心配要らねえよイッセー…。
……お前を侮辱されたまま負けるなんて事、アイツがする訳がねえだろ。
ビュオォォォォッ!!!!
『ッ!?』
突然千秋の周りで旋風が巻き起こり、ライニーの放った銃弾を弾き飛ばした。


「その男と出会った事を後悔するんだな」
その言葉を聞いた瞬間、思考がクリアになり、見えてる世界が非常にゆっくりに見えた。
迫ってくる銃弾もゆっくりに見える。
でも、そんな事はどうでもよかった…。
……イッセー兄と出会った事を後悔しろ…。
………ふざけるな……。
……ふざけるな!…。
何も知らないお前がイッセーを知った風に言うな!
思考がクリアになっていく中でも心の奥底から脇溢れる怒りは衰えない。
いや、むしろ怒りが込み上げれば込み上げるほど思考がクリアになっていた。
絶対に負けられない!
いや、負けてはダメだ!
この男にイッセー兄を侮辱されたまま負けるなんて私自身が許せない!


ビュオォォォォォ!!
千秋の周りで未だに旋風が舞っていた。
「……神器(セイクリッド・ギア)か…」
ライニーの言う通り、あの旋風は千秋の神器(セイクリッド・ギア)によって生み出された物だ。
「怒涛の疾風(ブラスト・ストライカー)…」
「……それが千秋の…」
「ああ」
「見た所、風を操る神器(セイクリッド・ギア)の様ね」
「正確には触れている物体や空間に気流を発生させる物です」
俺は部長達に千秋の神器(セイクリッド・ギア)の能力の説明する。
千秋は自身の周りで舞っている旋風を消すと、一気に駆け出す。
「ッ!?は、速い!」
イッセーの言う通り、千秋の駆け出しの速度が上がっていた。
その理由は風…。
怒涛の疾風(ブラスト・ストライカー)は触れている物体及び空間に気流を発生させる。
そして触れるのは手じゃなくてもいい…。
つまり全身が触れている所なら何処からでも風を生み出せる。
千秋は背中から気流を発生させ、それを推進力にし、さらに地面を蹴る際にも足の裏から気流を発生させる事により加速している訳だ。
「チッ!」
ライニーは千秋の突然の速度の上昇に驚くもすぐさま銃撃で対応するが撃ち出された全ての銃弾が風によって弾かれる。
……いや、弾くと言うよりも風で銃弾を逸らしたと言った方が正しいか。
千秋は肉薄するなり回し蹴りを放つ。
しかも、気流によって加速させた蹴りだ。
速度も威力も今までの比じゃない。
「ッ!!」
それをギリギリの所で避けたライニーも大したものだ。
が、千秋は避けられる事を分かっていたのか特に驚きもせず、今の蹴りの勢いを殺さず体を百八十度回転させ、踵落としの要領で後ろ回し蹴りを放つ。
「ッ!?」
ライニーはそれを地面を転がって避ける。
ドゴォン!
千秋の蹴りが地面に激突し、轟音が鳴り響き、地面が少し抉れていた。
(……まとも命中してたら死んでたんじゃねえのかアイツ?…)
……もはや手合わせのレベルを超えている様な気がしてきた…。
二人は互いに距離を取る。
「チッ!」
ライニーは舌打ちをするなり右腕に手を伸ばす。
(……何かする気か?)
だが、その動きは中断する事になった。
千秋がライニーによって弾かれた黒鷹(ブラックホーク)を再び手に取り構えたからだ。
しかも矢に風を纏わせて…。
そのまま風を纏った矢を撃ち出す。
元から速かった矢の速度は気流による加速でさらに速くなっていた。
「クッ!!」
あまりの速さにライニーは先ほどの様に弾こうとはせず、横に跳んで避ける。
「ッ!?」
が、避けようとしたライニーの顔が驚愕に染まる。
矢は追尾するかの様にライニーに向けて方向を変えたのだ。
空間に対しては自身の身体からでしか気流を発生させる事しかできないが、物体に対しては一度触れた物なら触れた物の何処からでも気流を発生させる事ができる。
それを強弱を付けて発生させる事で先ほど銃弾を逸らしたやり方を応用して今の様な方向転換を行う事ができる。
「クッ!!」
ガキィン!
ライニーは手に持つ拳銃を交差させて矢を防御するが呆気なく弾かれる。
それでも矢を自分に当たらない様に逸らしたあたり奴の戦闘センスの高さが窺える。
だが、今ので奴の拳銃は奴の手を離れ、十字架の形に戻っていた。
そこへ千秋は銃弾を逸らす事に意識を割かなくなった分、さらに速度を上げて接近する。
ライニーはカウンター気味に蹴りを放つが、千秋は難無く避ける。
「ガッ!?」
そのままサマーソルトキックでライニーの顎を蹴り上げる。
千秋はそのまま浮いているライニーに向けて後ろ回し蹴りを放つ。
宙、さらに顎をやられ軽く昏倒している奴にこれを避ける術は無い。
そのままとどめの一撃が当たる瞬間…。
ガキィン!
『ッ!?』
突然地面から一本の剣が生え、千秋の蹴りを遮った。
ピキピキ。
蹴りを受けた剣にひびが入るが、それだけで折れる事は無かった。
「そこまでだ…」
声がした方を向くと、アルミヤが地面に手を当てていた。
……あの剣はこの人がやったのか。
「ここまでだライニー。この勝負、君の負けだ」
「………」
地面に倒れていたライニーはそれを聞くなり苛立たしげに顔を逸らし、弾き飛ばされた十字架と脱ぎ捨てたローブを取りに行く。
アルミヤは自身が出した剣に近付き、手を触れ、呟く。
「……堅牢さを重視したのだが…なかなかの威力だな…」
パキャァァン!
そう呟いた瞬間、剣は儚い音を立てて砕け散った。
「……それ、聖剣?」
「その通りだ」
「……聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)か…」
「ご名答」
聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)、噛み砕いて言ってしまえば、木場の魔剣創造(ソード・バース)の聖剣バージョンの神器(セイクリッド・ギア)。
つまり、この男もゼノヴィアとイリナと同じ聖剣使いと言う訳か。
残る神田ユウナはおそらくライニーと同じ十字具(クロス)使いとにらんでる。
ま、その事はともかく、これでオカ研と教会による戦いは無効試合になったイッセーとイリナの戦いを除けば、一勝一敗の痛み分けとなった。
もっとも、イッセーとイリナの戦いは状況的に見ればイッセーの勝ちである為、オカ研側の二勝とも取れたがな。
「……さて、今度こそおいとまさせてもらおう」
「先ほどの話、よろしく頼む」
教会の五人がこの場から退散しようとする。
ちなみにイッセーによって服を消し飛ばされた女子達(当然イリナも含む)は副部長によって服を魔力で修繕されていた。
「念の為聞いておきたいのだけど、聖剣を奪った堕天使、誰だか判明してるの?」
「直接実行したのは神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部コカビエルだ」
「……随分と大物の名前が出てきたな」
部長の問いに対するゼノヴィアの答えに俺は眉間にしわを寄せる。
堕天使陣営の組織神の子を見張る者(グリゴリ)。
その幹部であり、聖書にも名を載せる程の堕天使コカビエル。
大物中の大物だな。
「幹部クラスを五人で。死ぬつもりなの?」
確かにそれ程の大物相手にエクスカリバーの使い手がいるとは言え、教会の戦士(エクソシスト)五人で挑むのは無謀に近い。
ましてや相手もエクスカリバー(使えるか分からないが)を持ってる訳だしな。
「聖剣を堕天使に利用されるくらいならこの身と引き換えにしてでも消滅させる」
「覚悟の上よ」
「……事前調査に来ていた連中がいたが、何人か殺されているのを発見した…」
「……多分全員殺されている…」
……この間見た神父の死体はそれか。
「……やったのはフリード・セルゼンだ」
「ッ!?フリード!!」
「……あの堕神父か」
……まだこの町にいたのかよ…。
「……偶然その現場に居合わせてしまってね。確かに奴は聖剣を持っていた…」
「……よく生きてたな。さっきみたいな戦い方をする様な奴が…いや、その時見たから頭に血が昇り過ぎたのか。学校を休んでたのもフリードの奴を探してたって訳か…」
「………」
俺の言い分に木場は何も答えない。
「はぐれ神父ね。なるほどそう言う事か。情報提供には感謝しておく。だが、これ以上この件に関わるな」
「ッ!」
ゼノヴィアの言葉を聞き、木場は彼女を睨む。
「失礼するよ」
「ちょっと待ってよゼノヴィア!じゃあそう言う事で。イッセー君、明日夏君、裁いてほしかったらいつでも言ってね。アーメン」
「……フン!…」
「えっと失礼します。待ってよ皆!」
「ふう、失礼する」
教会の五人は各々で別れの挨拶をして立ち去っていった。  
 

 
後書き
今回は千秋とアルミヤの神器(セイクリッド・ギア)やライニーの武器が出たりしました。 
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