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美しき異形達

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第十一話 ハーレーの女その三

 泥に染まった怪人にだ、こう言った。
「これでどうかしら」
「くっ、これは」
「わかったでしょ、粉は水分に弱いのよ」
「水分が付いたら粉は撒かれないわ」
 怪人も言う、自分から。
「生憎ね」
「まあそれでもあんたの毒はそのままよね」
「私に直接触れたら死ぬわよ」
 毒によりだ、このことは変わらない。例え怪人の毒の鱗粉がまかれなくなろうとも。
「それは変わらないわ」
「じゃあ触れないといいのよ」
 また言った菊だった。
「やり方があるのよね、今回も」
「どうもあんた次から次に頭が回るタイプみたいね」
「あんたが言った通りね」
「そういうことね」
「じゃあ行くわよ」
 菊はその身体に、今度は全体に力を込めた。そうしてだった。
 新たな攻撃に入る、その隣では。
 菖蒲がヒトデの怪人と闘い続けていた、怪人は自身の回復力を武器に菖蒲を攻め続ける。その攻撃は平凡だが。
 回復力が違う、死なないということから怪人は強気だった。その強気の攻撃で菖蒲を追い詰めていている様に見えた。
 そのうえでだ、こう菖蒲に問うのだった。
「後がないな」
「そう思うのね」
「言った通りだと思うが」
「どうかしらね、どんな生きものにも心臓があるわよ」
 それが、というのだ。
「そこを打ったら終わりよね」
「それはその通りだがな」 
 怪人もそのことは認める、だが。
 相手にそう言えるのは何故か、菖蒲にこのことも言うのだった。
「それが出来るか」
「私に、というのね」
「そうだ、貴様に俺を倒せるのか」
「そうだと言えばどうなのかしら」
 表情を変えずにだ、菖蒲は怪人にこの言葉で返した。
「少なくとも貴方の弱点は既に一つわかっているわ」
「何っ!?」
「無敵の生きものなぞこの世にはいないわ」
 剣で怪人の攻撃を防ぎつつ言うのだった。
「決してね」
「それは俺もだというのか」
「そうよ。ヒトデでも猛獣でもね」
 それがだ、怪人でもだというのだ。
「無敵の生きものなぞ絶対にいないわ」
「例外もいるとは考えないのか」
「有り得ないことね」
 例外、それもだというのだ。
「何があろうともね」
「言ってくれるな、ではどうするつもりだ」
「力を使うわ」
 自分のそれをだというのだ。
「そのうえで貴方を倒すわ」
「面白い、では見せてもらおうか」
「今からね。貴方を倒すわ」
 こう言いながら突きを繰り出した、怪人は己の回復力に絶対の自信を持っているままなのでその攻撃をかわさなかった。
 そうしてだ、菖蒲はその突きからだった。
 己の力を注いだ、それは水ではなかった。
 氷だった、怪人の中にその氷を注ぎ込み。
 そのうえでだ、怪人を凍らせて跳んだ。そうしたのである。
 その横では菊もだった、怪人の身体を泥で汚しそしてだった。
 毒の鱗粉を撒き散らせない様にしてだ、飛ぶこともそれも封じてだった。まずは距離を開いたまま手裏剣を投げ怪人のダメージを与えた。
 数発の手裏剣を投げて怪人の胸や腹を打つ、同時に石も幾つも放っているので怪人にそちらでもダメージを与えていた。
 そうしてだ、そのうえで彼女も跳んだのだった。
 菖蒲と菊は同時に跳んでいた、その速さも跳んだ高さも同じだった。その同じ高さの頂点で二人共空中で身体を丸めさせって前転し。
 菖蒲は両足を揃え、菊は右足を踵落としにしてだった、そのうえで。
 菖蒲は足にも氷の力を、菊は土の力今は足に鉄を帯させてだ、その力でだった。
 二人がそれぞれ相手にしている怪人を急降下して蹴った、すると。
 菖蒲が相手にしたヒトデの怪人からは青いメラクの符号が、菊が相手にした毒蛾の怪人からはメグレスの黄色の符号がそれぞれ出た。両者の背に。 
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