緋弾のアリア0/D No.0 & DollMaster
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絶望の宴編
首斬り人形
4幕 友達
入学式が終わり、生徒たちは自分の教室に戻ることとなった。
俺のクラスは1-Aだから……ここか。
自分のクラスを見つけて中に入ると、既に教室に戻ってきていた女子たちが一斉にこちいを見てくる。そして……
ヒソヒソヒソ。
な、なんか言われてるぞ俺。あ、あれか?『何あいつ、超きもーい』的なやつか!?俺が入学式で失敗したからそれをネタにして笑ってんのか!?
いや、ちょっと待て。待つんだ俺。とりあえず落ち着くんだ。いくらなんでもそんなにひどいことは言われてないはずだ。そうだ、よく考えてみればその通りだ。初対面の人を勝手に悪人にするなんて、俺の方がよっぽど失礼だったな――――
「あー!あなた、さっき入学式で大失敗してた人じゃないです!?」
「その憶え方はやめてくれ!」
後ろから聞こえた不名誉な呼び方に、思わず振り向きながらツッコんでしまった。
俺が後ろを振り向くと、そこにいたのは小柄な少女だった。
窓から差し込む光を反射してキラキラと光る金髪をショートカットにし、まだあどけなさが残る顔立ちの、とにかく小柄な少女だった。
その小柄さは、俺の知り合いの爆弾使いや中国マフィアと互角に張り合えるほどだ。まあ、胸は、その何と言いますか、色々とアレですが。
「何、人の身体をじろじろ見ているですか。ハッ!さてはミーの身体に欲情しているんですね!」
「欲情できるほど育ってから言えそういうことは!」
急に失礼なことを言いだす少女。そしてそのせいで周りの女子から冷たい視線を受けて、何とか誤解を解こうとする俺。
しかし俺の反論が癇に障ったのか、微妙に睨みつけながら少女が俺の足をぐりぐり踏んでくる。割と痛い。
「どうせ!ミーは!高1にもなって身長145㎝ですよ!胸はBカップですよ!何か文句でもあるですか!」
「強いて言うなら、いい加減に俺の足を踏むのやめてくれないか?あとこれ以上関わるとロクなことにならない気がするから早く教室に入らせてくれ」
「今の流れで文句を言うところがそこですか!?」
ガーン、とか、ドーン、という効果音が聞こえてきそうな感じのorzの形で嘆く少女を無視して俺が自分の席に行こうとすると、袖を引っ張って引き留められた。
「凹んでいる女の子を放って立ち去ろうとは、あなたはそれでも博愛主義の日本人なのですか!?」
「民族の特徴が個人の性格に100%反映すると思うなよ?」
そもそも日本人が博愛主義なんていう情報を初めて聞いたし。博愛主義はフランスじゃなかったか?
「くっ、いつから日本人はこんな薄情な生き物になったですか……ミーが小さい頃に来たときはもっと優しかった気がするです……」
「それはきっと勘違いだな」
今も昔も変わらず日本人は薄情である。たぶん。
「し、しかしめげないのですよ!あなたが優しい人間なのか優しくないクズなのかは今はどうでもいいのです!」
「何でその2択しかないんだよ……」
「細かいことは気にしてはいけないのです!とりあえず、自己紹介しましょうです!」
スタスタスタ。
「ちょっと待つのですよー!」
俺がアホなことを言いだした少女を置いて自分の席まで行くと、少女も追って俺の席の横に来た。
「自己紹介しようって言っただけなのに無視するとは、さすがに酷いのではないですか!?」
「あの流れで自己紹介しようとかアホじゃねえのと思ったから逃げただけなんだが」
「それが酷いって言ってるのです!」
涙目になって抗議してくる少女。そして女の子を泣かせたということで再び周りの女子たちから冷たい目を向けられる俺。何だこの空間、地獄か。
「あー、わかった、わかったから。自己紹介するから、泣き止んでくれよ」
「わーい、なのです!」
「切り替え早っ!?嘘泣きだったのかよ!」
少女のあまりの演技力に俺が驚いていると、向こうから勝手に自己紹介を始め出した。
「ミーの名前は白裂・C・アヤメなのです!よろしくです!」
「白崎・C・アヤメ?ファーストネームが日本語ってことは……おまえ、ハーフなのか?」
「Yes!なのです!ミーはイギリス人の父と日本人の母の間に生まれた子なのです!」
イギリス人と日本人のハーフか。どうりで一人称がミーなのに、使う言葉は日本語なわけだ。
「ミーは今までイギリスに住んでたですけど、この学校に通うために日本に引っ越してきたのです!」
「さあ、ミーは自己紹介したのです!次はあなたの番なのです!」
「えー、めんどくさいんだけど」
「やるって言ったんだからやらなきゃダメなのです!ほら早くなのです!」
「えーっと、俺の名前は天樫ゼロだ。よろしくしないでくれ」
「それだけ……ですか?」
「うん。もちろん」
鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして尋ねる白裂に、親切にも答えて上げる俺。
「いや、ミーは既にあなたの名前は知ってるので、できれば他の情報も開示して頂けると嬉しいのですが……というか、よろしくしないでくれってどういうことです!?」
「他の情報って言われてもな……あ、俺って今年の新入生代表だぜ?」
「それも知ってるのですよ!もっと他に、こう、プライベートな感じのが欲しいのですよ!」
「だが断る」
「某少年漫画のキャラ風に断られたのですよ!?」
ほう、今のセリフの元ネタがわかるのか。軽くオタが入ってるなこの女。
「ほら、何でもいいからプライベートな情報を吐くのですよ!」
必死になって俺のプライベートな情報を引き出そうとする白裂。たかが俺の情報如きになんて大袈裟な。
「つーかさ、何でおまえは俺の情報を知りたがるんだ?こう言っちゃなんだが、俺の情報なんて一銭の価値も無いと思うぞ?」
自分で言ってて悲しくなるが、これは本当のことだ。この学校では唯一の男ということで珍しがられてるが、それもこの学校の中だけの話。外に出ればいくらでも男なんているし、俺なんてのはそこら辺の男子高校生Aとかそんな感じだろう。
「何か、俺の情報を使って企んでんのか?言っておくが、俺に強請りとかは無意味だからな」
何故なら金を持ってないから。あのクソジジイ、退職金もくれなかったからな。まあ、あそこは会社というよりは学校みたいなものだから別に間違っちゃいないんだろうけど。
俺がそんなくだらないことを考えていると、不意に何かが床に落ちる音がした。しかも連続して何度も。
この音は、水か?でもいったいどこから――――
そこまで考えてから、やっと気付いた。音の発生源は目の前だってことに。
目の前にいる白裂が泣いていた。今回は嘘泣きじゃなくて、本当に。
「お、おい!どうしたんだよ!」
「ミーは、ミーは何も企んでなんか、いないのです。ただ、友達が……友達が欲しかっただけなのです!」
そこでやっと気付いた。俺の心無い発言が彼女を傷つけてしまったことを。
白裂はただ友達が欲しかっただけなのだ。遠い外国から引っ越してきたばかりで、今までの友達を離れ離れになってしまって、寂しかっただけなのだ。
そのことに気付いた途端、無意識のうちに俺は白裂の頭を撫でていた。
「……ふぇ?」
「……あー、なんだ。その、悪かったよ、疑って。おまえが良い奴だってのはわかったからさ、俺と友達になろうぜ?白裂」
俺がそう言うと白裂は、ぱあっ、顔を輝かせる。
「ほ、本当に!?本当にいいのですか!?」
「ああ、もちろん」
「友達……日本で最初の、友達……」
幸せそうな顔で呟く白裂を見てると、自然と俺の頬を弛んだ。
友達、か。そういえば俺も、こっちに来てからは初めてじゃないか?友達が出来たの。
「それじゃあミーはあなたのことをゼロって、名前で呼ぶのです!ゼロもミーのことを名前で呼んで欲しいのです!」
「わかったよ、アヤメ」
「~~~~っ!」
ガバッ。
俺が名前で呼ぶと、アヤメはぎゅ~っと身体を縮こませてから、俺に抱きついてきた。
「お、おい!?アヤメ!?」
「ふんふ~ん!ゼロとミーは友達なのです!ハグくらい別に何の問題も無いのです!むしろすりすりとかしちゃうのです!すりすり~」
「や、やめろって!やめてくれ頼むから!周りの視線が痛い!」
そんな俺の懇願はアヤメには通じず、結局ホームルームが始まる時間になって担任の先生(なんとうちのクラスの担任は柚子だった)が来るまでアヤメは俺に抱きついていたのだった。
後書き
お久しぶりです。白崎黒絵です。
更新がまた長らく止まってしまい、申し訳ありませんでした。次回こそは頑張ります。
内容について:今回はゼロに友達が出来る話です。しかも美少女。イギリス人と日本人のハーフなんて、どっかで聞いたような設定ですが、今のところあのピンクい娘との関係性はありません。
それでは今回はこの辺で。次回はおそらくゼロの装備や家の話がメインとなるはずです。あと夕奈も再び出てきます。
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