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ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜

作者:むぎちゃ
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青年時代前半
  第三話 大勝ち

「う〜ん、ここは……?」

 光を潜ったのと同時に意識を失い、目を覚ましてみるとそこは日光が注ぎ込む明るい森の中だった。

 体を起こし、服についていた土や草を払って辺りを見回すと樫の杖と一つの袋と手紙が置いてあったのでそれらを拾う。

 手紙を広げると、そこにはこんな内容が書かれていた。

『ミレイさんへ。
 この手紙を読んでいるということは無事にドラクエ5の世界へ転生できたようですね。それでは、あの場所で説明しきれなかった部分を説明します。
 先ず特典ですがドラクエ1〜ドラクエ9までの魔法を扱う能力ですが、これはもらってすぐに全ての魔法を扱えるわけではなくレベル上げが必要となります。しかし、基礎的な魔法だったら全て行使できます。
 ちなみに消費するMPはドラクエ5に出てくる呪文は全てドラクエ5準拠、それ以外は初出の作品での消費MPとなります。
 続いてカジノ能力ですが、これはカジノであったら確実に、しかも圧倒的に賭け金を多くして勝利することができる能力です。しかし、気をつけて欲しい事が2つ。
 一つ目はこの能力はあくまで『カジノ』能力なので、カジノではないところで賭け事をしたとしてもその場合は機能しません。
 2つ目ですが、この能力の性質上人の注目を集める事になりますが、無用な混乱を避けるべくこの特典にはオンオフ機能をつけておきました。念じるだけでオンオフどちらにでもできます。
 次の説明ですが、『影響』についてです。
 『影響』は本来起こるはずのなかったあなたの死により、運命が狂った結果、世界に本来起こるはずだった事が変化してしまう現象です。こちらが確認している限りでは今はまだこれといって『影響』が出ていないですが、『影響』を確認しそれがミレイさん一人では対処しきれないという場合には私がこの世界に訪れ、あなたのサポートを行います。
 ちなみに『影響』が起こるのは、この世界以外の世界にも起こりますが、どの世界にも関わらず『影響』を消すことで神を見つけることができます。
 最後の説明ですが、あなたの頭にはこの世界の常識や知識といったものをあらかじめインプットしていますので、勝手が違って困ると言った自体はないようにしています。
 説明はこの3つで終りです。がんばってください。
 あなたの神様転生担当死神小池より』

 手紙を読み終えた後に、私は思わずこう言っていた。

「最初からそういう事を言えよあの死神!」

 ……まぁ結構長く怒ったり泣きじゃくったりしていたから時間を使っちゃったからしょうがないんだけど、せめてそういう説明はきちんとして欲しかった。特に『影響』の部分。

 でも私は1人じゃないということがわかっただけ心が軽くなった。

 森を出ると、目の前には見渡す限りの空と海と大地が広がっていた。吹いてくる穏やかな風を肌で感じながら、大きく背伸びをして深呼吸をすると、前を見据えた。

「よし!オラクルベリー目指して出発!」

 一歩前へ踏み出したその時、目の前に魔物が現れた。

 確かこいつらはベビーニュートとスライムだった。どっちも可愛いから攻撃するのはつい躊躇っちゃったけど、向こうはそんな私の心情など知らないので容赦なく襲いかかってくる。

 「ギラ!」

 身を守る為に咄嗟に呪文を唱えると、杖の先から金色の炎が広がってベビーニュート達を焼きつくした。魔物達は、黒い塊のようになると、ドロリと崩れゴールドを残して消えた。

「ビックリした〜」

 なんとか初戦闘は無傷で済ませることができたけど、次の戦闘になった時に無事に勝利できるとはかぎらないから、なるべく早くオラクルベリーに移動することにした。

 その後もいくつか戦闘はあったけど順調にモンスターを倒して、無事にオラクルベリーに到着することができた。

「ここがオラクルベリーかぁ」

 こうして辺りを見回すとゲームの世界にそのまま入ったというよりは、ゲームのオラクルベリーを模した街にいるみたいだ。

 本命のカジノは私の目の前に堂々と建っていたけど、カジノの象徴であるネオンはその光を灯していなかった。まだ準備中らしい。

 仕方がないので、宿屋の部屋を確保しよう。

 そう思い、宿屋に入ると人の良さそうな花柄のピンクのエプロンをつけた従業員(……の人なのかな?そこら辺はよくわからない)のおばさんがカウンターから迎えてくれた。

「可愛い魔法使いの女の子一名御来店!泊まるかい?」

 おばさんはカウンターの奥にそう言うと、私の方を向いた。

「は、はい」

 可愛いと言われたことに内心嬉しさを感じつつも私はひとまずそう返事をした。

「宿泊の日程は?」

「えーと、少し考えさせてください」

「ああ、いいよ。並んでいる客もいないしね」

 おばさんは、にっこりと微笑むと快く了承してくれた。

「ありがとうございす!」

 おばさんにお礼を言うと、袋の中を覗き込んだ。中にはモンスターを倒して得たゴールドと薬草(と手紙)がいくつか入っている。今の所持金は50ゴールド。この宿屋の一泊の値段が5Gだから9泊はできることになる。

 カジノのコインが一枚につき20Gだから無駄なく泊まるには50ー20=30、30÷5=6で5泊6日がベターかな。

「5泊6日で」

「はいよ。料金は30G」

 30Gを袋から出して、おばさんに手渡した。おばさんはGを足りてるかどうか確認し、Gをカウンターの引き出しにしまうと宿帳と鍵をカウンターに置いた。

「宿帳にサインをお願いね。部屋は2階の204号室だよ」

「ありがとうございます」

 宿帳にサインをし、鍵を持って階段を登り204号室の扉を開けた。

 中の調度品は大きいものはベッドと机とタンスがあった。机の上には小さな本棚が置かれていて、ベッドの近くには鏡が立てかけてある。

 窓の縁には花が生けてあり、その色鮮やかさもさながら窓からさす日差しにより、美しく輝いていて、見ていた私の心を落ち着かせてくれた。

 一先ず袋と樫の杖をタンスにしまい、ベッドに寝転んだ。

 不思議なことに一回寝転んで体の力を抜いただけなのに急に睡魔が襲ってきた。

 目の前が歪んだと思ったら私の意識は何かに吸い込まれていった……。




 目が覚めて窓の外を見ると、もう昼ではなく夕方だった。

 ベッドから起き上がり、鏡を見ながら乱れた髪を整えるとタンスから袋と樫の杖を取り出して部屋を出る。鍵を閉め、下に降りるとおばさんに、外に行ってきます、と伝えてオラクルベリー周辺の草原に出た。
 
 辺りを見回すと、魔物達が私に近寄ってきている。正直怖かったけれど、杖を構えて呪文を唱えた。




「やっと溜まったなぁ〜」

 自分の部屋の机の上に置いた袋の中身を見ながら満足げにそう呟いた。

 今の所持金は100G。このお金だとカジノのコインを5枚しか買えなくて、普通だったら負けると少ないコインが更に少なくなったり勝てても5枚という枚数である以上は収入も少ない。

 でも、もし特典が本当にその力を発揮するならこの5枚というコインの枚数は私にとって十分すぎるほどの枚数だった。

 これで後はカジノが開かれるまで時間を潰すだけ。

 何をしていようかなと思っていたその時に部屋の扉がノックされた。

「ミレイちゃん、夕食ができているけれど食べるかい?」

「食べます!」

 私はおばさんーー女将のアニタさんーーに返事をして、下の食堂までアニタさんと一緒に降りて行った。

「はい、今日の夕食はデミグラスソースのハンバーグにライ麦パンにサラダだよ。ドレッシングと飲み物は何にするかい?」

「ドレッシングはオニオンソースで。飲み物はぶどうジュースでお願いします」

「了解。しばらくの間席に座って待っていなよ」

 私はアニタさんから見えやすい席に座り、しばらく待っていたら料理が運ばれてきた。

「しっかり食べなよ。あんたは食べ盛りの頃なんだから」

「はい。いただきます」

 ハンバーグを一口食べてみると濃厚な肉の味が口にじんわりと広がった。サラダの野菜も新鮮な上にオニオンソースの相性も良く、シチューはミルクのコクや具材の旨みが全て凝縮されていてとても美味しかった。

 やっぱり生きてるって素晴らしい事を教えてくれるものの一つは料理だな。

 …………お母さんの料理が懐かしいな…………。そう思うと涙が滲んできた.

 自分が涙ぐんでいた事に気がつくと慌てて私は涙を拭った。流石に他の人に見られたら恥ずかしすぎる。

 食事を終える頃にはもうカジノが開店する時刻にはなっていたので仕度を整え、カジノに向かった。

 中に入るとたくさんの人たちがポーカーやスロットなどをやっていて、カジノにはパチンコ屋みたいな熱気が渦巻いていた。(入った事ないけど)

「いらっしゃいませ!当カジノのご利用は初めてでしょうか?」

 受付のバニーさんが笑顔で話しかけてきた。正直に言うと、まだ14歳の私がカジノに入る事で怒られてしまうのではないかと思っていたけどその心配はなさそうだ。

「はい。初めてです」

「では、お客様のコイン口座を作る必要がありますね。お客様のお名前は?」

「ミレイです」

「ミレイと……。年齢は?」

「14です」

 バニーさんは私の名前と年齢を手帳に書き込むと、笑顔でこう言った。

「お客様の名前の登録完了致しました。コインの売り場は反対のカウンターにあります。それでは当カジノで楽しい時間をお過ごし下さい!」

 登録手順がそれだけでいいのかと思いつつもカウンターに向かい、コインを5枚買った。残金0。まぁいい。品物を換金すりゃいいだけの話だ。私は先ず元手を増やすためドラクエ4にもあったモンスター闘技場で賭けを始めた。

 その日カジノのバニーは驚きで言葉がでなかった。目の前にいるのは14歳くらいの少女。その少女の隣には、コインの山が積み上げられていた。枚数もさることながら、それだけの数を5枚というコインで稼いだ少女にただただ唖然としていた。気がつくと、他の客達も彼女を見ていた。あれだけの枚数を稼がれてしまっては、最早やる気にならないだろう。
 
 モンスター闘技場で充分稼いだ少女は次に100コインスロットに狙いを定めた。少女がスロットを回すたびに、大量のコインが吐き出される。そして1台のスロットがコインを全て出し切ったらしい。もう、そのスロットからコインは出てこない。少女は、バニーに目をやるとこういった。

「このコイン全部、カジノの景品に変えて」と。

 ヤバイ。勝ち過ぎた。他の人がカジノで遊べなくなっちゃったじゃないか私のバカ!小池さんが手紙で注意してたのに。

 で、でも仕方ないじゃん。最初は効果あるかなーていう気持ちから賭けを初めて効果が本当だとわかってから勝つのが楽しくって…………すみません。次から気をつけます。

 私は戦利品に目をやった。そこにはメタルキングの剣×25、グリンガムの鞭×10、キラーピアス×52、メガンテの腕輪×13、世界樹の葉×37、エルフの飲み薬×43があった。どう考えても今は持ち運び不可なので、後でカジノの人たちが親切にも私の泊まっている宿に運んでくれるとの事だった。

 それはいいとして、カジノで勝ちすぎてしまったせいで周りからの注目がすごい事になっちゃったから慌てて宿屋に退散した。

 なんかもう今日は疲れたので寝ます。おやすみなさい。




 翌日。

 宿屋に届いた戦利品の中で何が必要で何が必要じゃないかを考え、使う機会の少なそうなキラーピアスとメガンテの腕輪を全部売却したら所持金が42250Gとすごい事になった。(ついでにアニタさんに驚かれた)

 その後私は、服や道具袋、装備などを買い揃えた結果私の装備はこうなった。武器:グリンガムの鞭、盾:うろこの盾、鎧:鉄の胸当て。

 とりあえず今の自分の実力を確かめるために草原に出、魔物との戦闘を繰り返す。最初は鞭の扱いに慣れなくて苦労したけど使っていくうちに少しずつ慣れていった。

 こんな調子で数日間レベル上げをしていって、この日も私はレベル上げに出た。

 もうこの辺の敵は大体狩りつくしたから少し敵が強いエリアに行こうか。

「ま、大丈夫だと思うけど」

 魔物にやられることなんてない。その時私は自分の力を過信していた。グリンガムの鞭があるし、呪文も使えるし、戦闘慣れはしているから心配ないと。

 そして私は現実というものをその肌で感じさせられる事となった。

「きゃっ!」

 ベビーニュートの不意打ちに転んでしまった。私はすぐにメラを唱えベビーニュートを倒す。しかし他にも魔物はいた。

 魔物達が、襲いかかってきた。バギ、ギラといったグループ魔法で相手を倒し鞭で薙ぎ払ったがまだ敵は出てくる。

 この世界に来て初めてこれはRPGではなく命がけの戦いである事を知った。魔物は倒しても倒しても切りがなく、私がいる場所は、オラクルベリーからは離れてた。絶対絶命。その時だった。

 横合いからチェーンクロスの一撃が放たれ、ホイミが私にかけられた。

「大丈夫か!?」

 チェーンクロスを装備した青年が私に尋ねた。何とか私は頷く。

「よし。それじゃあさっさと倒しちまおうぜ、アベル!」

「ああ。ヘンリー」

 私にホイミをかけてくれたアベルという名の青年も戦いに加わり、あっという間に魔物の群れは2人によって退治された。

「助けてくれてありがとう!」

 私は立ち上がると2人に礼を言った。

「何、いいってことさ。とりあえずこの辺りの魔物は強いからオラクルベリーに戻るぞ」

 こうして私はアベルとヘンリーに守られてオラクルベリーへと帰還した。

 
 

 
後書き
ミレイが使える呪文の消費MPはドラクエ5に出てくるものはドラクエ5でのMP。それ以外はその作品ごとのMPになっています。

ついに5主人公が!

追記 ミレイの容姿はFFⅧのリノアとドラクエ3の女賢者を合わせたかんじです。

追記2 矛盾発見。大神殿脱出前の時系列に転生しているのにアベルたちとあった事→数日間オラクルベリーに滞在していたということで。時間を見つけしだい本編も直します。 
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