ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜
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第二話 帰して
前書き
今回から神様転生です!
「う〜ん。ここは…?」
私はあたりを見回した。ここは今いるはずの横断歩道ではない。黒一面の世界だった。
その世界は何もなかった。
光も、温度も、何もかも。
「まさか、私は死んだの?」
自分で声に出してみた。否、そんなはずはない。きっとこれは夢のようなものだ。病院にいる自分が見ている夢だ。死んだわけがない。そうやって自分を納得させようとするが、気持ちの悪い不安は拭えそうになかった。
「取り敢えず歩いてみよう」
そう言って私はこの空間を歩き出す。すぐにこの空間がおかしなことがわかった。何も……足に感じない。地面を歩けば土の、床を歩けば木やコンクリートの感触が足に伝わるはずだ。例え宙を歩いていたって、こんな何も感じないなんてありえない。
……本当にどこなんだここは。
私がその事を考えて背筋が凍てついたところで、この漆黒の世界に若い男の声が響いた。
「お待たせしました。」
私は声がした方向を見た。そこにはスーツの男がいた。パッと見、20代前半。穏やかそうな顔をしていて、片手にはタブレット端末を持っている。
「あなたは誰?」
「私は死神の小池と申します。今回あなたの神様転生を担当させていただくことになりました。よろしくお願いします」
神様転生。その言葉の意味は私にはよくわからなかった。
でも目の前の男は自分の事を死神と呼んだ。それが表す事は。
「神様転生?それに死神?死神がここにいるってことはもしかしなくても私は……」
「ええ。お亡くなりになられました。即死です」
男はタブレットの画面を見ながら淡々と言った。
「そんな……」
足元が崩れ落ちるような気がした。そんなのひどすぎる。高校、大学と進学して会社に勤めてそのうち運命の人とあって結婚するんだと思っていた。そんな未来予想図を漠然と描いていた。なのに……なのに……。
「気を落とさないでください。あなたは生き返れる」
死神が私に言ったその言葉は何よりも私をひきつけた。
「本当なの?本当に……私は生き返れるの?」
すがるように言葉をしぼりだす。死神は答えた。
「ええ。生き返れますよ」
「じゃあ、すぐにでも……!」
生き返れるんだったら生き返して欲しい!そう私が思っていた直後に男は信じられない事を平然と私に言い放った。
「ゲームの世界へと」
しばらくの間時間が止まったような感覚がした。
心が小池の言った言葉の意味を受け入れるまいとしているが、無情にも頭はその意味を受け入れてしまった。
そして私の胸に湧き上がってきたのは怒りと悲しみだった。
「ゲームの世界!?ふざけないで!!私はゲームの世界とかよりも、友達とだべって!テスト勉強に追われて!塾に遅刻しそうになって!色々大変な事もあったりするけど、私はそんないつもが、現実が好きだった!生き返らせるなら元の世界に帰して!」
私は息継ぎもせず、一気に言葉を吐きだした。怒りと悲しみで頭がガンガンする。死神は黙っていたが「すみませんでした」と謝罪した。
「そんなこといったって状況は何も変わらn「しかし、元の世界に戻れないわけではありません。」
えっ?
「元の世界に戻れるの?」
「けしてすぐではございません。それに険しい道のりとなるでしょう。それでもやりますか?」
「やるに決まってます!」
本当は怖かったけど、覚悟した。
私のいつもに変えるためにも。
「わかりました。では、説明に入りますね。あなたが元の世界に戻るには、ある世界に神様転生し、役目を果たすことです。」
「その役目とは?」
「あなたの事故死は神の誰かが起こしたもの。運命を狂わされた今のあなたの魂は、元の世界に戻ることは叶いません。しかし、別の世界だったら、転生できます。そして役目とは転生した世界で神を見つけることです。」
「私が転生する世界に元凶がいると?」
「いえ。更に説明しますと、あなたが死んだことにより、『本来死ぬはずがない人間が死んだ』という事実によりありとあらゆる世界に影響が生じました。その世界のいずれかにあなたが行くことにより影響を消し、あなたを殺した神を見つけることができるでしょう。
タイムリミットはミレイさんの命が亡くなるまでですが影響は様々な形で現れているため気がつかずに生涯を終える可能性もありますし、転生した世界で何かしらにより死んでしまっても戻るチャンスは無くなりますがよろしいでしょうか?」
よろしくないと言いたかったのを堪え、大丈夫だと答えた。
「では、神様転生に入りますね。どこの世界に転生しますか?」
私は少し考え、ある一つの世界に決めた。
「ドラクエ5の世界で」
「わかりました。神様転生をするにあたり特殊能力である特典を3つまでもらえますが何にしますか?」
戦いといえば喧嘩程度しかしたことのない私が真正面から魔物と戦えば間違いなく死ぬ。しかし、魔法の力があればこんな私でも戦いに勝つことができるかもしれない。もう一つはカジノで必ず勝てる能力にすることにした。カジノでエルフの飲み薬やグリンガムの鞭を入手できれば安全度は遥かに高い。それに景品を売却すれば資金にも困らない。
こう考え、私は小池に頼んだ。
「ドラクエ1〜ドラクエ9の呪文全部を使えるようにしてください。あと、カジノでは必ず大当たりがでるようにしてください」
「わかりました。あとの1つは…?」
それは不思議なことに全く思いつかなかった。きっとこの二つで十分だと思っていたからだろう。
「いえ。いいです」
「では、転生を開始しますね。時系列は?」
「青年時代前半の大神殿脱出前まで」
「わかりました。」
小池が手を振ると光の門が現れた。私はそこに入る前にこう言った。
「すみませんでした。あんなに怒ってしまって」
「いえいえ。謝るのはこちらの方ですし、怒るのも無理はないと思います。」
「では、いってきます」
「ご武運をお祈りしてますよ。死神が祈るのもおかしな話ですが」
私は光の門に近づく。この門を通れば後戻りはできない。だが、それが何だというのだろう。私は薄く笑い、門をくぐった。そして光に包まれた。
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