腐敗
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第三章
第三章
「もっと選手を集めろ」
「もっとですか」
「そうだ。金は腐る程ある」
顔を真っ赤にしての言葉だった。
「どんな手段を取ってもいい。掻き集めるんだ」
「選手をですね」
「ホームラン打てるバッターとエースばかりをな」
集めろと命じるのだった。
「わかったな。じゃあすぐにやれ」
「ルールに違反する場合は」
「コミッショナーや他のオーナーの懐に金を入れろ」
賄賂ということだった。
「いつも通りにな。額を増やしてだ」
「はい、それでは」
「その様に」
「とにかく手段を選ぶな」
井上は言い続ける。
「何としても常勝軍団にしろ。いいな」
「勿論です」
「そういえば文句を言うチームもありますが」
取り巻きの一人がふと言った。
「賄賂も受け取らないで」
「そういう場合はスキャンダルをでっちあげろ」
何処までも事実を捻じ曲げても平然としているのだった。
「いいな」
「そうですね。いざとなれば新リーグ設立ですね」
「若しくはチームを潰していって一リーグですか」
「とにかく手段は選ぶな」
彼はそれを全く選ばないのだった。こうしてスポーツの世界でもやりたい放題を続けていた。しかしここで思わぬ敵が現われたのだった。
井上のスポーツ界での横暴に。ネットで次第に批判があがったのだ。
「イネツネやり過ぎだ」
「っていうかいい加減にしろ」
こうした批判があがりだしたのだ。
「何でも誰でも金積んでな」
「しかも何かあったら新リーグだ」
「コミッショナーは何しているんだ」
「イネツネの傀儡だろ。お飾りだよ」
イネツネとは井上の仇名だ。井上の名字と恒雄という名前から取られたものである。
「いないのと一緒だよ」
「それでイネツネがあんなにやりたい放題やってるのかよ」
「そうだろ?マスコミなのに全然正義じゃねえよな」
「いや、マスコミだからだろ」
こうした意見も出て来た。
「マスコミのトップだからあそこまでやりたい放題できるんだろ」
「マスコミだからかよ」
「そうだよ。マスコミなんて嘘ばっかりだぜ」
そのことが指摘されだした。
「嘘書いてよ。実際あの朝売なんて今まで嘘ばっかりだぞ」
「まさか」
「新聞が嘘つくのか?」
この言葉に最初は多くの者が戸惑った。
「真実を報道するのがマスコミじゃないのか?」
「違うっていうのか?」
「違うんだよ、これが」
ここで多くの者の目にマスコミ、とりわけ朝売の今までの虚報が細かい検証も添えて出された。誰もがそれを見て唖然としたのだった。
「何だよ、これ」
「ここまで嘘ついていたのかよ」
「しかもこれってよ」
「意図的に工作してるよな」
「間違いない」
皆その数多くの虚報を見て唖然としていた。
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