I want BRAVERY
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十話 無欠
月光館学園に入学して2ヶ月。
季節はだんだんと夏へと向かう。
今は6月。
「てか、この学校って体育祭とかないのかよ」
普通の学校は、『秋(9・10月)、次いで春(5・6月上旬)、北海道は天候的なこともあり5,6月が圧倒的に多い』By Wiki
のはずなんだが。この学校にそういったものは見られない。
2時間目の終わりの授業休憩中にボヤく。
体勢はさっきの授業とあまり変わりない、突っ伏しかけの状態。
所謂、伸びている状態である。
ちなみに前世の高校ですくなくとも体育祭はあったし、こっちの中学校でもあった。
「体育祭?・・・あぁ、確かにないな・・・」
横の伊織がそれに答える。
ちなみに帽子は授業中もつけている。
「でも、言われてみればなんでだろうな」
伊織は、帽子を少しイジりながら首を傾げる。
伊織はそのことに今まで疑問を持たなかったのだろうか。
「ここの母体は桐条グループって話だぜ?どうせそこのお偉いさんがいらない、とか言ったんじゃないの?」
前の授業では完全に寝ていた友近が起きたのか、後ろから声をかけてきた。
それに合わせるように、机に突っ伏しかけの上半身を起こし、壁にもたれるようにする。
しかし、友近の寝起き(?)の顔もまたモブ顔である。
「ふ〜ん。桐条って言えば、あの2年の完全無欠の先輩か」
「そうそう。なんかさあの人今の生徒会長に既に、来年頼むわ、的なこと言われてるらしいぜ」
どっからそんな情報が入ってくるんだか。
まだ2ヶ月だが、それなりに友達はいるはずだ。
しかし、そんなことを聞いたことがない。
やっぱり悪友、と呼べるべきものを作るべきか。
「お、それは俺も聞いたことあるな。まぁ親が、って理由なしにあの人なら敵なしだろ」
伊織も友近に同意するように言う。
「へぇ、あんまり興味なかったけど、結構すごい人なんだな」
(1年の間は接触するつもりないから、興味なかったんだけど、やっぱり2年から既に完璧人間だったのか)
「えぇ!?お前!マジで!?あの桐条先輩に興味ないって・・・お前、もう男じゃねぇよ」
「ぉい、髭。てめ、それどういう意味だ」
「んなもん、あの抜群のスタイルに大人の雰囲気!もうこれだけで十二分に全校生の男の目を奪ってるってのに」
「そうだぜ、彩。あの人に興味がない=ホモ、の方程式が成り立つんだぜ?」
「成り立たねぇよ。まぁさ、完璧過ぎるとアレじゃん?なんてか、こう関わりづらくね?」
これは多分皆が思っていることだと思う。
やはり完璧すぎる、というのはどうしても自分と比べてしまった時に、こちらが不快な思いをしてしまう。
「そうだな。もしあの人に彼氏なんかがいたら、そいつは多分コンプレックスだらけになりそうだな」
(そう考えると、原作の男主人公はよくもまぁ、あんな人に・・・)
「ま、ここにも完璧人間はいるけどなー」
友近がこっちをジーと見つめながら言う。
「確かに、こんなとこにもいたわ。何?同族嫌悪?」
伊織までもがこちらを見てくる。
「おいおい。なんで俺がそうなるんだよ」
「その上、話しかけやすい、友達が多い、なんてなれば、もうこいつの方が完璧なんじゃね?」
友近が呆れたような、それでいて諦めたような顔で言う。
「しっかし、それと友達の俺達ってどうなんよ」
「そうだよ、勉強は天と地ほどの差があって」
段々と二人の間の空気が重くなっていく。
「フェイスの方も俄然負けてて」
「運動神経もなんかいいらしいし」
さらに空気が重くなる。
「友達の数も、もちろんまけてて」
「その上こいつは女友達がいて」
さらに空気が(ry
「なのになのに、若干フラグ建て気味で」
「チックショウ!なんだ!なんなんだ!?この差は!」
何故か爆発した。
「天は人にニ物、いや三物ならぬ四物を与えるってかぁ!?」
そう言って二人は勝手に落ち込んだ後、机をバンバンを叩き、天を仰ぎ見るように叫んだ。
「ジュンペーうるさい」
いつからいたのか、岳羽さんが俺の席の前に立っていた。
「お、うるさくしてゴメンね」
一応謝っておく、原因の8割は俺にあるのだから。
ちなみに残りの2割はこいつらがただ勉強してないってのがある。
「気にしないで。どーせまた二人でバカなことしてたんでしょ」
「うるせぃやい!彩と比べて、それで・・・自分の小ささに気付いたんだ俺」
「そう、俺達、井の中の蛙だったんだ」
ふたりは何故か、燃え尽きた男みたいな顔をしている。
「なんて、かっこつけて言ってみてもさ、ただ現実見ただけだろ」
するとウガー、と叫びながら二人は机に突っ伏し、机をまたバンバン叩いていた。
「彩君と比べるのがそもそも間違ってるでしょ」
「あれ?岳羽さんも俺のことそんなに評価してくれてんの?」
「評価もなにも、入学してたった2ヶ月でここまで完璧になんでもこなされちゃ、そうなるんじゃない?」
どこでさじ加減をミスったのか。
元々目立つつもりはなかっ
(た、わけねーだろぅ!目立つつもりでしたよ!そりゃもう計画通り!)
内心ガッツポーズをとりながら叫ばずにはいられない。
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