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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第三十話  駐車場探し


 御坂さんが木山先生をお手洗いへと連れて行ったあとで、俺はテーブルに戻って初春さんに電話をかけた。

『もしもし、どうしたんですか? 神代君』

「今、御坂さんと一緒なんだけど、初春さん達は何してるかなーって思って」

 御坂さんが白井さんに電話した時には初春さんと佐天さんもその場に居たはずなので、俺は御坂さんと一緒に居るということを伝える。何か電話越しにドンドンと音がしているのが聞こえるけど、まぁそれはいいだろう。

『えっ!? 本当に一緒なんですか?』

 初春さんは俺が御坂さんと一緒だということがどういうことなのかすぐに理解できたようだ。

「うん、今はお手洗い行ってるけど」

『脱ぎ女って近くに居ます?』

 俺が答えると初春さんは脱ぎ女について聞いてきた。確か御坂さんがケータイの電源を切ってしまったはずなので、向こうでは脱ぎ女に遭遇した御坂さんがどうなったのかを話し合っている展開だったと思う。

「あー、すぐに服を脱ぐ人なら居るよ。今もスカートが汚れて脱ぎだしたから御坂さんがお手洗いに連れてったんだけど」

 木山先生が脱ぎ女かどうかは置いといて、端的に起こったことだけを伝える。まぁ、この話から脱ぎ女以外には考えられないと思うけど……。

『脱ぎ女と一緒で神代さんは大丈夫なんですか?』

「大丈夫も何も、ちょっと一般常識に欠けてるだけの普通の人だから大丈夫だよ。まぁ、一緒に居ると周囲の視線的な問題で精神的にきついけど……」

 取り敢えずレベルアッパー製作者ということと人前で脱ぐことに躊躇いがないこと以外は普通の人なので、初春さんの質問にはそれなりに答えておく。もし、ここで木山先生が戻ってきて「一般常識に欠けるというのは私のことかな?」とか言われたら、ちょっと前の御坂さんと一緒で「そ……そんなわけないじゃないですか」とか言いながらケータイの電源を落としていることだろう。

『「神代君、神代君、その人の写メお願いします」 ちょっと佐天さん……』

 ケータイからは佐天さんの声が聞こえてくるが、確かこれって御坂さんにも言ってなかったっけ。

「それは本人の了承を得てからね。ところで初春さん、ちょっと調べて欲しいことがあるんだけどいいかな?」

『はい、なんですか?』

 佐天さんを適当にあしらいつつ俺は本題を切り出した。

「その人がさ、自分の車を止めた駐車場が分からなくなったらしくて、その駐車場を探して欲しいんだけど……」

『そのくらいなら多分何とかなると思いますけど、車種とかナンバー分かりますか?』

「もちろん聞いてるよ。えっとねー、……」

 俺は初春さんに車種とナンバーを伝える。

『それならすぐに見つかると思います。しばらく待っててもらえますか?』

「うん、スカート乾かして戻ってくるまで時間掛かるだろうから大丈夫だよ」

 初春さんが調べてくれれば木山先生の車ぐらい多分簡単に見つかるだろう。ということで電話を切ろうとしたのだが、ふと思い出したので聞いてみることにした。

「そう言えば、白井さんって一緒じゃないの?」

『えーっと……、今テーブルに凄い勢いで頭をぶつけてます……』

 俺は初春さんから返ってきた答えに少し首をかしげる。電話越しに聞こえてくるドンドンという音が白井さんによるものだということは分かったのだが、確かアニメではすぐに持ち直していたはずである。俺と初春さんが話していた結構長い時間ずっとテーブルに頭をぶつけているような展開ではなかったと思ったのだが違ったのだろうか。

「え……と、何で?」

 俺が何とか言葉を搾り出し初春さんから現状に至った経緯を聞くと、脱ぎ女は伝染するという都市伝説を面白半分で白井さんに伝えたら、白井さんの妄想が暴走してテーブルに頭をぶつけだしたらしい。確かにその辺りまではアニメと同じ展開だったようなのだが、俺が電話をかけたことにより白井さんの暴走を止める展開がなくなってしまったのだろう。

「でもさあ、俺が御坂さんと一緒に居るって言ったのって白井さんには聞こえてなかったのかな?」

『多分聞こえてないと思いますよ……』

「それじゃ、まー、その辺は佐天さんにでも任せちゃって、初春さんは駐車場の件よろしくねー」

『はい、分かりましたー』

 こうして初春さんとの電話を切ると、間髪を入れずに佐天さんから電話が掛かってきた。なぜ分かったかというと、電話を切った直後だったのでたまたま画面に表示された佐天さんの名前が目に入っただけである。

『この状態の白井さんを何とかするなんて私には無理ですよっ!』

「白井さんをその状態にしたのって佐天さんなんじゃないの? 脱ぎ女が伝染したら御坂さんもあちこちで脱ぎ始めるとかって不安を煽ったりしてさ」

『それ、初春! 私じゃない!』

「あらま、そうだったんだ。まーでも、初春さんには頼み事してるから佐天さん、後はよろしく」

『え、ちょっ!』

 どうやら白井さんを煽ったのは初春さんだったようだが、ここは佐天さんに無理矢理任せて電話を切る。すぐにまた佐天さんから電話が掛かってきそうなので電源を切っておこうかとも思ったのだが、このままケータイの電源を切ってしまうと駐車場が見つかった時に初春さんからの連絡がつかなくなってしまうので電源は入れたままにしておく。

(アリス、木山先生は俺のことに気付いたみたいか?)

(多分気付いてない。レベルアッパーに近い話をした時も特に感情の動きはなかった)

(そうか、ありがとう)

 アリスに聞いてみたが木山先生はまだ俺のことに気付いてないようだ。アニメ展開で行くならこの後は確かメガネの爆弾魔が出てくるはずだから、レベルアッパー編が一気に佳境に入るはずである。このまま木山先生が気付かないようであればアニメ通りの展開で進むとは思うのだが、最後のAIMバーストと呼ばれる化け物と対決する時、レベルアッパー使用者に俺とアイテムの4人が含まれているのが気にかかる。そう言えばアイテムの4人は大丈夫だろうか、他人に使われる演算に制限を掛ける事については俺じゃなくても出来るはずなので、あの4人がちゃんと制限を掛ける事に成功しているのかどうかが心配だ。

 そのまましばらく待っているとケータイが鳴り出す。

「はい、もしもし」

『あ、神代君』

 今回はいつも通りに発信者名を確認することもなく出てしまったが、相手は佐天さんじゃなくて初春さんだった。

『場所が分かったのでメールで送りますね』

「ありがとう」

 まだ時間がそれほど経ってなかったこともあって、駐車場を探す為にはもう少し情報が欲しいのかと思ったのだが、予想以上に初春さんの仕事は早かった。

「それで、白井さんはどうなった?」

『あー……佐天さんが変に煽って今は脱ぎ女の呪いの解き方を教えてるところです』

 電話越しにドンドンという音が聞こえてこないので、白井さんがどうなったのか気になって聞いてみると、佐天さんは何とかするのは無理とか言っておきながら白井さんで遊んでいるようだ。

「そ……そうなんだ……。うん、まぁ、白井さんで遊ぶのもほどほどにね」

『分かってますよ』

 電話を切ると初春さんからメールが送られてくる。開いてみると地図上にマークが付いていたので、その場所は木山先生の車が止められている駐車場なのだろう。場所的にもここからそれほど離れていないし、歩いて行っても数分といったところなので御坂さんと木山先生が戻ってきたら一緒に行けばいいだろう。





 しばらく待っていると急に停電して火災報知機が鳴り始めた。そう言えば御坂さんがツンデレって言われて放電するんだったか。

「な……なんでしょうねぇ……。ささ、行きましょう」

「それはいいのだが、彼を放っておいても良いのかい?」

「あ……」

 御坂さんは木山先生を連れてそそくさとセブンスミストを後にしようとしていたのだが、木山先生に言われて俺の存在を思い出したようだ。

「何やってるのよ神代さん、行くわよ! 早く!」

「はーい」

 俺が座ったままで御坂さん達を眺めていたら、こちらを見た御坂さんと目が合って急かされてしまった。

「それで、これからどうするんだい?」

「え……えっと……」

 セブンスミストを出たところで木山先生から尋ねられて御坂さんが口ごもる。

「あー、もう駐車場は特定してあるのでそこへ向かうだけですよ」

「えっ!? もう見つけたのっ!?」

 俺が答えると御坂さんに驚かれた。

「スカートを乾かしてもらってる間に見つけてくれたのか。大変だっただろう」

「いえ、友達に頼んで車種とナンバーから検索をかけてもらったんです」

「あっ! 初春さんねっ?」

 木山先生がかけてくれた労いの言葉に気恥ずかしさを覚えて、俺が素直に種明かしをしたら御坂さんもすぐに分かったらしい。

「うん、そういうこと。ジャッジメントなので何とか調べることが出来ないかと思って電話してみたんですけど、結構早く見つけてもらえましたよ」

 御坂さんに答えると同時に木山先生にも状況を説明したのだが、初春さんがジャッジメントだということは多分教えても問題ないだろう。

「そうか、優秀なんだな」

「そうですね」

 木山先生が感心したように言ったので俺も肯定しておく。ってか初春さんって、人型で活動する時のアリスとほぼ同等の処理能力があるのではないだろうか。

「そっかぁ、そういう手があったのか」

 御坂さんは感心したように呟いていた。





「ここですね」

 初春さんからメールしてもらった地図を見ながら案内することわずか数分、木山先生の車が止められて居る駐車場に到着する。

「ああ、確かにここだったな」

 木山先生がそう言って中に入っていき、俺と御坂さんも一応付いて行く。

「おぉー、これかー!」

 少し歩いたところで青いランボルギーニを見つけて俺は思わず声を上げてしまった。やっぱりこういう車には心躍らせる何かがあると言って良いだろう。

「君はこういう車に興味があるのかい?」

「そりゃありますよ」

「やっぱりアンタも男の子ね」

 木山先生に聞かれて答えると御坂さんが微妙な表情で呟いていたのだが、常盤台の寮やら学舎の園やらでの初春さんと比べたらまだマシだと言いたい。

「そうだな……それなら、探してくれたお礼に君をスーパーまで送っていこう」

「えっ! 良いんですかっ!?」

 木山先生の提案に驚いて思わず聞き返す。

「ああ、乗りたまえ」

「はーい!」

 本当に乗っていいということなので俺は嬉しさを抑えながら答える。というか、余り抑えきれてなかったかもしれないが、リミッター解除の初春さんのようにおかしい状態でなければ問題ない。

「それから君も、色々とすまなかったな。助かったよ」

「ど……どういたしまして」

 俺が車に向かって歩き出すと木山先生は御坂さんにもお礼を言っていた。

「あ……」

 俺が車の左側のドアを開けるとそこは運転席だった。日本車であれば基本的に左側が助手席なので左側を開けたのだが、この車はイタリア車なので左側が運転席になるのだ。

「ふむ、運転したいのなら、運転してみるかい?」

「え……マジで?」

 ただの俺の勘違いをどうもおかしな方向に受け取ったようで、木山先生から運転をすすめられたわけだが、余りにも現実味のない提案に一瞬呆けてしまった。

「いや、ダメでしょっ!!」

 一瞬の間をおいて御坂さんからツッコミが入る。多分、御坂さんも言語解釈処理中に一瞬フリーズしていたのだろう。

「9000まで回しても良い? って聞きたいところだけど、運転できる技術持ってても免許持ってないんでやめときます」

 木山先生に尋ねようとしたらその瞬間御坂さんから睨まれたので、俺は運転を辞退してから運転席のドアを開けたままで助手席側に周り込んだ。助手席のドアも開けるが、まだ乗り込まない。

「ただの冗談だよ。だが、技術があるというなら運転したことがあるのかい?」

「どこで運転したのよ?」

「私有地であれば道路交通法は適用されません。と言っておきましょう」

 車内から出てくるモワッとした空気を避けながら、本当に冗談だったのかどうかが怪しい木山先生と、呆れた視線を向けてくる御坂さんに答える。流石に元の世界や前の世界でちゃんと免許を取った上で運転してましたとは言えない。

「あ、御坂さん。白井さんに電話しといたほうがいいと思うよ、なんか大変なことになってたっぽいから」

「黒子が? 確かに黒子と電話した後ケータイの電源は切ったけど、別に大丈夫でしょ。帰ってから説明するわよ」

 一応、白井さんの状況を伝えてみるが御坂さんは特に気に留めていないようである。このままだと、多分寮に戻ってから御坂さんは大変な目に合う事になると思うのだが、まぁそれは俺が気にすることでもないか。

「それじゃー、また」

「気をつけるのよ」

 御坂さんに片手を上げて挨拶すると俺は車に乗り込む。

「すまなかったね、助かったよ」

「いえいえ。あー、お気をつけてー」

 車に乗り込んでから礼を言う木山先生に対して、御坂さんはなぜか微妙な返事を返していた。

「それで、君はどこのスーパーに向かっていたのかな?」

 車を走らせながら木山先生が尋ねてくる。俺はスーパーの名前を答えると、スーパーに到着するまでの間、木山先生と脳科学関係の話をした。インデックスを救う為の情報はなるべく沢山あったほうが良いのである。時間にして高々数分といったところだとは思うが、それでも恐らく神裂さんやステイルを説得するための材料として、使えそうなものがいくつかあったのでかなり有意義な時間だった。

 なお、スーパーでしばらく上条さんの姿を探してみたのだが、既に帰ってしまったのか見つけることが出来なかった。もしかしたら川土手で御坂さんと戦っているのかもしれない。

 あっ、木山先生の写メ撮るの忘れてた。
 
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