牙狼~はぐれ騎士~
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最終話 創世
最終話 創世
天も木々も闇の色に染まる黎明の森の中終焉騎士滅に向かって魔戒刀・三日月を構える闘真。
「邪剣が・・・」
「そんな事はどうでも良い・・・俺はお前を倒す!!」
滅の言葉を振り切り魔戒刀を腰に差し一気に抜刀する闘真は正眼に構えた。その場にいた全員構えだけで違いが分かってしまう。
今までの闘真の剣は自分を否定していた剣であったが、今は自分を受け入れている剣これから繰り出される剣技こそ闘真の本来の剣と言える。
「せいや!!」
一気に間合いを詰めた闘真の一閃は滅を捕え大きく弾き飛ばした。すると受け止めた滅の蛇腹剣が粉々に粉砕されてしまったのだ。
その事に驚きを隠せない滅は一つの仮説を立てた。
魔戒刀は人の心に素直な剣・・・人が純粋に思えば思うほどそれに応えようとする。
即ち今まで自分を否定しながらも鬼神のごとき力を与えていた魔戒刀は闘真の真っ直ぐな心に応えその力を極限まで高めたと言っても過言ではない。
「心の力を持った者の一閃・・・なら!!」
自身の心の象徴のように魔剣を召喚する滅。己の憎しみの象徴とも言える剣の一閃を繰り出すと闘真はそれを受け止める。
だが憎しみの力が上乗せされた剣を受け止めるが魔戒刀は折れず闘真を守った。
吹き飛ばされながらも立ち上がった闘真は両手持ちから片手に切り替え柄に掌を添え腰を深く落した。
再び間合いを詰めると闘真の渾身の突きが滅の頭部に向かって繰り出されるが滅の魔剣が軌道を逸らし外してしまう。
だが闘真はそのまま突き抜け滅から距離を取ると再び両手で魔戒刀を持ち跳躍した。
一撃・二撃と凄まじい斬撃を浴びせる闘真だが滅は丁寧に受け止め闘真を蹴り飛ばした。
大地を削りながら闘真が倒れると魔戒刀を突き刺し立ち上がる。
そして
「!!」
始めて魔戒刀で天に向かって円を描き鎧を召喚した。
闘真の身体を旋風騎士・風狼の鎧が包み込むと魔戒刀が変化した。
闘真が魔戒刀を構え滅に飛び掛かるが滅は全ての魔力を爆発させ闘真に斬りかかった。
「ぐは!!」
「闘真!」
一撃で闘真が吹き飛ばされると背後で見ていた若葉がバルチャスの駒を闘真に向かって投げた。
駒から召喚される薙刀が分離し闘真の身体を包み込むが滅の絶大な力は衰えない。
すると
「はぁあああああ!!!」
「死にぞこないがああああああ!!」
再び狼頑の鎧を纏った斬十郎が滅の進撃を抑え込むと闘真の背後から礼羅が自身の守り刀であった小太刀の魔戒刀・満月を闘真に向かって投げた。
闘真が礼羅の魔戒刀を受け取ると鎧の力で変化する。
「礼羅!?」
「闘真!その魔戒刀はあたしの心血注いで創り上げたもの!だから今こそ抜きなさい!太刀を!!」
「太刀?・・・そうか!」
礼羅の思惑を感じ取った闘真は魔戒刀の柄同士を連結させ巨大な持ち手を作り上げた。
「がは!」
「くたばれ・・・死にぞこない」
「ふん・・・時間は稼いだ・・・」
「なに?」
ボロボロで倒れた斬十郎の言葉に何かを感じた滅は隙を突いた闘真の一閃を浴びてしまい大きく吹き飛ばされると大地に倒れるが起き上がり咆哮と共に闇の衝撃で周囲を飲み込み始めた。
それを見届ける闘真は瞳を閉じ感じ取った。
「・・・貴様の憎しみ・・・俺が叩き斬る!!・・・だから・・・『負けられない!!』」
『負けられない!!』闘真の全身全霊を込めた言葉はアストラル界の力を生み出した。
闘真の口から放たれた塊・・・そう念の言霊が闘真鎧に舞い降り輝き始めた。
「・・・綺麗」
鎧から放たれる光に心を奪われる若葉。
すると魔戒刀・三日月の刃が外れ真の刃と・・・全ての絶望を断ち斬るような姿を現した。
全ての始まりを告げるような純白の鎧と未来を見つめる黄金の瞳・・・そして羽ばたく光臨の翼の騎士
その名は
創
世
創世騎士
その姿を見た滅は絶望の翼を広げ闘真に飛び掛かった。
太刀となった魔戒刀を構えた闘真も舞い上がり二人の剣は交差した。闇の色と化した空で縦横無尽に交差した両者の剣は鍔迫り合いすると螺旋を描きながら大地に向かいお互いに弾き飛ばされると大木に叩き付けられそうになるが大木を踏み台にし再び飛び掛かり一閃が交差すると闘真が大樹の天辺に舞い降り滅は大地に舞い降りた。
「はあああああああ!!」
滅の魔剣が黎明の森に蓄えられた闇の力を一気吸い込み巨大な剣となる。
そして闘真も魔戒刀の柄の満月を外し持ち返し反転させると三日月の柄に満月の刃を納刀すると魔戒刀を片手で掲げ巨大な刃が形成された。
破邪斬魔刀
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
自身の力のみを爆発させ周囲から闇の衝撃を放つ滅。
「頼むぞ・・・三日月!!」
「「「『闘真!!』」」」
再び闘真から発せられるそう念の言霊・・・闘真の戦いをずっと見てきたイルバ・礼羅・斬十郎・そして若葉からもそう念のが発せられた。
五つの言霊は魔戒刀に集められると闘真の身体から凄まじき衝撃が放たれその背後に光を見据える眼が見開かれた。
「はあ!!」
「いやあ!!」
凄まじい衝撃を放ちながらぶつかる闘真と滅だが両者の衝撃は納まりきらず大きく横にそれるがそれでも衝撃が止まらずとうとう天に向かって飛んだ。
両者が一度距離を置くと・・・
「せいやあああああああああああああああああああああ!!!」
闘真の魔戒刀が振り下ろされ・・・
「であああああああああああああああああああああああ!!!」
滅の魔剣が斬り上げられた!!
最後の衝撃と共に大地に舞い降りると砂塵が舞いあがりその場にいた全員の視界が遮られた。
「闘真・・・闘真!!」
若葉が叫ぶと徐々に砂塵が晴れていきお互いの頭部に向かって剣を突き出している闘真と滅の姿が見えてきた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
静寂の中
闘真に向かって振られた剣は闘真の顔面スレスレで切っ先が叩き折られていた。
だが
「がは!!」
闘真の魔戒刀は滅の仮面を叩き斬っている。
決着は・・・
「我が名は石動闘真!はぐれ騎士だ!!」
己にとってもっとも誇り高き名を上げる闘真は振り返り魔戒刀を鞘に納めた。
滅の身体はそのまま大地に倒れ込んだ。
そして元の鎧へと戻った風狼の鎧が闘真の身体を離れると闘真は倒れている滅に歩み寄るとその表情を見た。
滅・・・いや豪真の表情はとても穏やかだった。
それはまるで全ての憑き物から解放されたような
「馬鹿野郎・・・生きてる奴が強いんだ・・・」
『闘真・・・』
闘真の心情を察したイルバ。そしてホラーとなった豪真の身体が消滅を始めると闘真は友の元へ歩み寄り全ての力を使い果たし若葉に倒れ込むと若葉は黙って受け止めた。
歩み寄った礼羅に闘真は小太刀を返し・・・そして斬十郎も立ち上がりその姿を深く心に刻み込んだ。
数日後
黄昏の平原に佇む闘真。
その日元老院に呼び出された闘真は終焉騎士・滅を倒した功績と心を認められ正式に魔戒騎士として認められようとしたのだが・・・
『良いのか?断っちまって』
イルバの言葉に笑みを浮かべながら応える闘真。
「良いんだ・・・俺は・・・はぐれ騎士だから出来る事があるんだ」
『そうだな・・・お前さんにはそれが一番あっているかもな・・・さてと・・・帰ろうぜ!若葉が煩いからな』
「そうだな・・・」
自身の証・・・魔戒刀を持ち立ち上がり・・・
「俺は・・・はぐれ騎士・・・石動闘真だ」
・・・自身の魔戒騎士としての本当の始まりを歩み始めるのだった。
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