戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十四章 幕間劇
見回り×三若によるガールズトーク
俺の前を横切ろうとした女の子が、石にでもつまづいたのか勢いよく転ぶ。
「大丈夫か。どれ、見せてみろ」
尻もちをついた女の子の傍に座り込み傷を見た。
「ひっく、ひっく・・・・」
「大丈夫だからな、これをやればと」
俺は傷ができたところに光をかざした。回復の光かな、光がなくなると傷は回復していたし、女の子は泣き止んだ。
「今度からは気を付けるんだぞ」
「うん!ありがとう、お兄ちゃん!」
といって女の子は元気よく手を振って走り去って行った。小さな背中を見送り、一息ついて立ち上がると後ろから声がかかる。
「壬月に麦穂、どうした?」
「おや、どうして私たちがいることを?」
「風の精霊が教えてくれたことと、氣を感じたことだ」
「精霊ですか。それにしても先ほどのはいい手際でしたよ。一真様」
「まあな。これで、転んだ子供を治しているよ」
俺は手の平を見せると、緑色に光輝いた。これも神の力なんだけど。
「それがあるのなら、薬いらずではないか!」
「もう・・・・またそんなこと言って」
「壬月の薬嫌いは相変わらずだな」
戦場では、一人ずつやるのは面倒だから、俺の周囲にいる怪我人にはオーラを浴びせてるし。そしたらブラック・シャーク隊の医療班のいる意味がないから、医療班の手が足りない時だけだけど。
「ところで二人はこんなところで何をしているの?戦の準備はまだ終わってないのでは?」
二人は織田全軍を取り仕切る大将だし。準備の規模が違う、一真隊はほとんどひよたちに任せているけど。俺は俺で越前について調べている、監視とか鬼の数とか。
「ただの息抜きさ。気ばかり急いても良いことはないからな」
「一真様こそ、こちらで何をしていらしたのです?一真隊も準備に追われていると思っていたのですが」
「まさか隊員に準備を任して、自分は怠けておいでですかな?」
「んー、半分当たりで半分外れだ」
「なにぃ?」
「うちのは優秀でな、俺がやろうとすると邪魔になるからな」
「一真様は、部下をとても信頼されているのですね。それで半分外れとは」
「俺は越前について調べている。鬼の数から監視とかをやっている」
「ほう。そういえばそうでしたな。で今は何をされているので?」
「壬月様、一真様もおそらく私たちと同じく・・・・」
私たちというのは、どう言う事かなと思ったら俺と同じく見回りだそうだ。何か感じたのかと聞かれると、まあなと言ったけど。空から監視しているからもし出たとしても、俺のケータイからの連絡があるはず。
「一真様はお一人ですか?」
「まあ、一人の方が戦いやすいし。それに他の皆は戦の準備をお願いしてるからな。適材適所だ」
「ふふ。だが、いつか私は一真様を倒すというのが目標になっている」
「そうですね。武術は私や壬月様より上ですから。たとえお家流を使ったとしても、敵いませんから」
「俺を倒す日が来るのかねぇ。今のところないと思うけど」
「そのために鍛錬を・・・・ん?」
「どうし・・・・あら?」
聞き覚えのある騒がしい複数の足音に言葉を切る二人。
「一真様ーーーーーーー!!」
「一真ぁあああああああ!!」
「一真さーーーーーん」
声を上げて、全速力でこちらに向かって走ってくるのは、おなじみの三若。
「相変わらず慕われているようですね」
「あいつら、こんな町中で大声をあげていると何事かと思われてしまうが」
「・・・それも仕方がないでしょうね」
「・・・ああ、むしろよく今まで我慢したものだ。まあ、その辺りは本人に聞くといい。ほら・・・」
ほらと言って振り向いたら、すぐそばまで来てた。
「一真様っ!!」
「一真っ!!」
「一真さーんっ!」
「ふんぬぅぅぅぅぅ」
全力疾走の勢いのまま突っ込んできた三若のタックルに全力で持ちこたえる。
「か、か、か、一真様!奥の法度が決まったんだって!?」
「ボクら詳しいこと何も聞いていないんだけど、どういうことなんだ!?」
「そうだそうだー、詳しい説明をよーきゅーするー!」
奥の法度?何のことだ。あれはこの世の決まり事なら決めるはずのあれか。でも、俺には必要のない事なんだが。
「おいおい。少し落ち着けってば!」
「相変わらず賑やかですね、この三人が揃うと」
「賑やかなのは結構だが、私たちがいる事に気が付いてないのか、こいつらは」
「目の前の一真様しか、見えていないのでしょうね、きっと」
「まったく、少々お仕置きが必要だな」
「ふふ、手加減はしてあげてくださいね」
「お前ら、少し落ち着かんか!!」
あーあ、壬月の強烈な拳骨を喰らった和奏と犬子。音的には痛そうだけど、奥の法度のこと誰に聞いたんだか。あと雛は逃げ出したがしっかりと拳骨を喰らっていたけどな。
「ほら一真様、静かにしてあげましたぞ」
「感謝するよ、壬月。あとお前ら、奥の法度なんて決まっていないからな」
「え?決まっていないとはどう言う事ですか。一真様」
「麦穂よ。俺にはすでに妻もいるし、側室も今のところ満員だ。だから今空いているのは愛妾だけ。久遠の宣言通りならば、恋人曰く愛妾といえば分かるか」
「ああ。そうでしたね。だから、決まっていないのですか」
そういうことで、こいつらにも説明したけど。奥の事は決まっていないからな、全員愛妾と言う感じになるわけだし。
「犬子は一真様に愛してもらえれば何だっていいけどね♪」
「雛もー。そもそも一真さんって、平等に愛してくれそうだしー」
「それはそうなんだけど」
「ボクだけを愛してほしかったなぁ、とか?」
で、なんか本人の前で失礼なことを言ったのでハリセン一発叩いた。かなり強めだったけどな。ついでに、壬月や麦穂も三若の味方になったので何も言えないが。孤立無援の俺をほっといて、三若は俺をネタにさらに大盛り上がりしてた。
「一真の魅力は、やっぱりあの鋭くなる顔だよな」
「犬子は逆に笑顔が好きかなぁ」
「雛は犬子に同意~。なんかこっちまでどきどきしてくるもんねー」
「わんわん!『あぁ、もう、一真様ったら!』ってなって」
「なにからナニまでお世話したくなっちゃう?」
「そうそう!何からナニまでって・・・・きゃ~っ!雛ちゃんってば、もう」
なんか盛り上がるが、お前らの初めてはとっくに貰っているはずなんだが。というか、まだ昼間なのにそういう話をしてていいのか。
「微笑ましいのはいいことなんだろうか。恋をすれば武将もただの女の子になるのは知っていたが」
「ふふふ。それを知っている一真様ならもう分かっているのでは。それにしても三若は変わりませんね」
「・・・・・そうだな」
「ん、どうしましたかな?」
「次の戦についてを考えていた」
「一真様は不安ですか?」
「ふむ。正直不安なんだけどな」
となんか静かになった三若がこっちをじっと見ていた。
「何、不安がってんだよ。一真」
「次の戦は魔物というか鬼との全面戦争だ。人間との戦とは訳が違う」
「戦は戦だよ一真さん。全力で戦って、散っちゃうなら、そこまでの運命だってことだからさ」
「犬子たち、とっくの昔に覚悟は出来ているよ♪」
こいつらときたら。それにこいつらは小さくても武士だ。それに織田に死を恐れる武士はおらんという壬月だけどな、それは神の目の前でいえることなのか。
「何をお考えになられてますかな」
「いつもと変わらん顔をして死を語るなど、神の目の前ではなと思ってな」
「そういえばそうでしたな。それで、三若には死相が見えますかな」
「いや、見えないな。俺の力でたとえ瀕死の状態でも生き返らせてやるよ」
それについては、もう毒を受けたとしても回復する薬を持っているし。三若の事を見ていると、壬月や麦穂も笑みを浮かべる。教師二人が教え子の成長にご満悦のようだ。
「たまには、拳骨ではなく褒めるとするか」
「ええ、褒めて伸ばすのも大切でしょう」
わいわいとふざけあっている三若に近づく壬月だが、次の瞬間。
「あ」
「~~~~~~っ」
「あーあ」
タイミングが悪かったというか、完全な事故だな。和奏が振り上げた拳が壬月の頬を打ってしまったようだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「あ・・・」
「わふぅーーーー!ちょちょちょっと、和奏!な、なんてことを!」
「だってまさか後ろにいるとは思わなくて!ボク、あの、ご、ごめんなさい!!」
「あのあの、壬月様?和奏ちんもわざとじゃなくて、だから、あのー、そのー・・・・雛は関係ないです!」
「ああこら!ずるいぞ雛!」
「だったら犬子も!拳骨は和奏一人にお願いします!」
「犬子まで!」
何とかその場から逃げ出そうとする雛と犬子だけど、もう手遅れなんだな。
「お前たちは・・・・やっぱり成長してない、なっ!」
褒め言葉の代わりに響く拳骨音。
「何もこういうところまでいつも通りでもなくてもいいんだけどな」
三人が壬月に褒めてもらうことは、まだまだ先のことだった。ああ、なんか三若の事を感じたのは拳骨のことだったのかもしれない。
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