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美しき異形達

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第九話 風の力その二

「かなり好きだよ、ただあたしはオフロードに乗ってるけどな」
「薊ちゃんモトクロス部だからね」
「そうそう、それでな」
 オフロードのバイクに乗っているというのだ。
「そうしてるよ」
「薊ちゃんらしいね、オフロードって」
「そう思うだろ、自分でもそう思うよ」
 笑顔で言う薊だった、やはり自分から。
「あたしにはオフロードってな」
「そうよね」
「普通の道でも走られるしな」
 そのオフロードのバイクで、というのだ。
「いいバイクだよ」
「つまり私達三人共バイク派ね」
「私はどっちかっていうと車だけれど」
 裕香は少し申し訳なさそうに述べた、三人に。
「そっちの方がいいかしら」
「それはどうしてなんだよ」
「うん、やっぱりものを一杯運べるから」 
 だからだとだ、裕香は薊に答えた。
「車の方がいいかなって思うの」
「そういうことか」
「バイクもいいと思うけれど」
 それでもだというのだった。
「運べるものの多さを考えたらね」
「車か」
「そう、私はね」
「実用面からなのね」
 菖蒲も裕香に言った。
「裕香さんの好みは」
「ううん、夢がないかしら」
「いえ、それもありよ」
「ありなの」
「ええ、実用性はやっぱり外せないから」
 どうしてもというのだ、このことも。
「そうしたことが理由でもね」
「いいのね」
「むしろそれを見ることが大事だと思うわ」
「そうなのね、いや自分ではね」
 どう思っているかとだ、裕香は難しい顔で述べた。
「色気がないって思ってるけれど」
「そうかしら」
「うん、こうした実用性を優先させる自分の考えってね」
「そうでもないと思うけれど」
「いいのね、とにかく」
「ものはどう役に立つかよ」
 こう言ってだ、菖蒲は自分が愛用しているサイドカーのことを話した。この独特なバイクはどうかというのだ。
「サイドカーも横に人が乗られるわね」
「ええ、それはね」
「荷物も多めに置けるわ」
 人をその横の座席に乗せていない時にだ。
「だから便利なのよ」
「実用性も高いのね」
「サイドカーは元々軍用よ」
 ドイツ軍がよく使っていた。
「人を横に乗せる為にね」
「移動が楽だから」
「そう、開発されたから」
「格好よさだけじゃないのね」
「そうなの、軍用だから」
「成程ね、いいのね」
 裕香は菖蒲の話を聞いて納得した。
「そういうことなのね」
「そうよ、バイクも実用性よ」
 それが重要だというのだ。
「移動に使えるから」
「乗ってて楽しいだけじゃないからな、バイクって」
 薊も言う、こうしたことを。
「速く移動出来るっていいよ」
「そうそう、忍者も移動は速くよ」
 菊も言ってきた。
「というか移動が速くないと忍者じゃないわ」
「だよな、遅い忍者なんてな」
「問題外よ」 
 それこそは、というのだ。 
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