美しき異形達
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第九話 風の力その一
第九話 風の力
薊達四人は商店街のお好み焼き屋に入った、そこは裕香が知っている店だったが菖蒲はその店の入口を見てこう言った。
「このお店なのね」
「あっ、菖蒲ちゃん知ってるのねlこのお店」
「ええ、何度か入ってるわ」
「美味しいわよね、このお店」
「お好み焼きでなく焼きそばもね」
お好み焼き屋には大抵これもある、それで言うのだった。
「美味しいわ」
「そうなのよね、モダン焼きもね」
「いいわ。広島焼きもあって」
「そうなのよね。このお店どちらも食べられるから」
「いいお店よ」
感情は感じられないが素直な評価を述べた菖蒲だった。
「このお店は」
「そうよね、それじゃあ」
「中に入りましょう」
菖蒲から言った。
「そうしましょう」
「あっ、これ見て」
ここでだ、菊は店の左手にあるバイクを見て三人に言った。そのバイクはというと。
かなり大きなバイクだ、黒くかなりの重量を感じさせるデザインだ。菊はそのバイクを見てそのうえで三人に言った。
「ワルキューレね」
「いえ、これは八条オートバイのバイクよ」
菖蒲が菊がホンダのワルキューレではないかと言ったことにこう返した。
「似ているけれど違うわ」
「ワルキューレじゃないの」
「ええ、八条オートバイのバイクなの」
「そうなの」
「よく見たら細部が色々違うわ。エンブレムもね」
それも違うというのだ。
「また別のバイクよ」
「ううん、似てるわね」
「そうね。ところで菊さんはバイクは」
「乗るわよ」
微笑んでだ、菊は菖蒲に答えた。
「2ストね、八条オートバイのね」
「そうなの、貴女も」
「貴女もってことは菖蒲ちゃんもなの」
「サイドカーに乗ってるわ」
「へえ、意外ね」
店に入りながらだ、菊は菖蒲に言った。店の中には鉄板がある席が十程ある。そしてカウンターにも鉄板がある。商店街のお好み焼き屋としては普通の広さで内装もだ。
まさに商店街のお好み焼き屋だ、ソースと小麦粉が焼ける香りに紅生姜と鰹節、マヨネーズの香りもする。その店の四人の席に座ってだ。
注文をしてからだ、菊は菖蒲にこう言ったのだ。
「菖蒲ちゃんもバイク乗るの」
「そうよ」
「へえ、そうなのね」
やはり意外といった顔で言う菊だった、自分の向かい側に座っている菖蒲に。
「菖蒲ちゃんもバイク乗ってサイドカーに乗ってるのね」
「そうよ」
「ううん、バイクに乗るなんて意外と活動的ね」
「バイクは好きよ」
菖蒲は表情を変えず少し驚いている顔の菊に答えた。
「免許を取ってすぐに乗ったわ」
「サイドカーになの」
「ええ、元々お父さんのサイドカーをね」
「貰ってなのね」
「乗っているの」
「成程ねえ。まあ私のバイクは一番上のお兄ちゃんのお下がりだけれどね」
その2ストのバイクはというのだ。
「お兄ちゃん車買ってそっちに乗るようになってね、私に」
「三人のお兄さんのうちの」
「そう、探偵さんでもあるね」
その一番上の兄からのお下がりだというのだ。
「それに乗ってるの」
「あたしもバイク乗ってるよ」
薊は自分からこのことを言った。
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