戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十三章 幕間劇
勉学×一日遅れの初夜
「おーい、来たぞ!」
「おお、一真様。ようこそおいで下さいました」
本当はただいまになるんだと思うが、あえてこう言った。
「一葉に来るように言われたが、こんな朝から」
「こんな朝からではございません。ささ、お早くこちらへ」
「お、おう」
何か幽が焦ってるような気がするのは、気の所為か?いつも程の余裕が無いという感じがする。戦時とはいえ、幽は余裕を持って振る舞うって感じだった。
「公方様、双葉様。一真様がおいでなされました」
幽に案内されて奥の間に進むと、そこには一葉と双葉がいた。
「一葉に双葉、おはよう」
「おはようございます、一真様」
「ああ、一真様か」
「何か元気がないな。どうした?」
何故か知らんが、一葉と恋人同士になってからは呼び方が主様やお主となっている。名前で呼ばれるのは余りない。けど呼ばれると言っても様付だから、恐らく神だからかと思う。双葉はいつも通りだが、一葉は様子が可笑しい。
「いやそういう訳ではない。ただ一つ・・・・お主に謝らねばならん事があってな」
「謝る?何で」
「お主を余と双葉を恋人にしただろ?」
「したけどそれが何か?」
何か歯切れが悪いな、何か悪い事でもしたのか?
「一真様。お持ち致しましたぞ」
何やら大きな行李を抱えて部屋に入ってきた。この部屋に通されてからいないと思ったけど、何を持ってきたんだ?
「何だその本は?」
行李の中に入っているのは大量の書物。和綴じの本や巻物、折り畳んだだけの紙にお経みたいな折本まである。まるでちょっとした、古書古文書の博覧会みたいになっている。
「何?ではございませぬ。軍略に政略、礼式、歴史、家系図・・・・公方様の恋人ではありますが何れは旦那様になる御方。なる御方として恥ずかしくないように覚えて頂く、資料一式でございます」
「あー、だから一葉が俺に謝るのか」
「そうなる。余は別にどうでも良いのだ。公方の恋人と言っても、形式的なものであるからして儀礼に付き合う事はない。・・・・それこそ、久遠とお主の間柄は変わらぬ。だがこれがうんと言わんのだ」
「当たり前です。一真様が優秀な御輿なのは承知致しておりますが、それと公方様が恋人として相応しい相手ではないといけません。それに恥ずかしい輩を迎える事は、別問題にございます」
「優秀な御輿、ねぇ」
「ちょっと幽」
何かナメられてるような気がするのは、俺の気の所為か?頭脳は大学まで行ってるし、神仏の頂点でもある。
「それでな、一真様・・・・本当に申し訳ないと思うておるのだが」
「別に構わんが」
「良いのか?何ならこいつを蹴り倒して逃げ出しても、余は咎めたりせんぞ?」
「その場合は、検非違使なりを総動員させて頂きますが」
「総動員させても、俺には敵わんだろう。それにな、いつかはこういうのが来る事は予想済みだ。神であったとしても、礼式ぐらいは覚えないとなと思う事もある」
鞠から教えてもらおうと思ったが、上洛で忙しかったし。それに礼式とかは、調べれば出てくるんだがやり方が分からん。今の姿はただの人間であり、神の姿となれば礼式無しで出来る。俺はいつも神界でも上だ。
「それに今が覚える時期なんだろうと思うが」
それにしても、ああいう本とか文字とか分からん時は、スキャンしてノーパソに入れれば何とかなる。
「一真様」
「・・・・そうか。そう言ってもらえると助かる」
「もしやそれで元気がなかったのか?」
「・・・・まあな」
「そんな事で捻くれてたのか」
「・・・・ひゃ」
しょぼくれている一葉が可愛かったのか、頭を撫でる。何かこういう風になったら、撫でる癖がついてしまった。
「っと、すまん。いつもの癖でな」
「い、いや・・・・良い。余も頭を撫でられた位で、気を悪くしたりはせぬ」
「では気が変わらぬ内に、早速始めましょう。まずは不肖それがしめが、兵法について講義させて頂きまする」
そして俺は一応空間から、ノートとシャーペンを取り出してスタートしたんだが正直な・・・・。
「・・・・驚き申した」
軍略の勉強が始まって、ほんの少しであったが俺も久々の勉強にワクワクしていた。が、幽がぼそりと漏らしたのはそんな一言だった。
「お見受けするに兵法の基礎は出来ておるようでしたから、何かの書を学んだ事はあるのだろうとは思うておりましたが・・・・」
「一真様。魏武注孫子は、それ程お読みに?」
「それ程というより全部読んだし、孫子もだけど忘れてると思うが、俺の妻らの中には曹操とかもいたからな。あと諸葛亮とかにも結構読まされたし。書かれていない所も詳しく解説してくれたし」
「六韜三略もそれなりに読み込んでおられるようですし、それに妻の事忘れておりました」
「まあな・・・・色んな兵法書を読まされたしな」
「であれば、この辺りは省略しても構いませんかな」
「まあ一応読むから、ザッと流してもらえればそれでいい」
そう言いながら、幽は孫子以外の軍略関係の本を山の中から引き抜く。軍略を抜いても、まだこれだけあるのか。まあ何とかなるだろうが、それから結構経つが軍略が終わった。
「では次は、礼法と参りましょうか」
「おうよ」
「礼法なら余が直々に教えてやろうではないか」
「双葉様。よろしくお願い致します」
「何じゃと!」
「わ、私ですか?」
「どういう意味じゃ幽!余では不服と申すか!」
「不服も不服、大不服にございます」
「説明せい。双葉も礼法を修めておるのは承知しておるが、余とてそれは同じじゃ。何が不足か!」
「そうですよ幽。私がお姉様を差し置いて、一真様にお教えするなど」
俺としてはどっちでも構わないが、ふむ・・・・幽が言いたそうなのを当てるか。
「一葉、一つ聞くが礼法は完壁なんだろう。双葉とそう変わらないと思うが」
「当然だ」
「が、それは自分でそう思っているだけだ。誰かに伝授する事になれば、一葉の直感でなるからじゃないのかな?幽」
「はっ。一真様の仰る通りでございます。礼法には座り方や立ち方や歩き方からありますが、一葉様のはまさに直感になられます。なので、ここは双葉様にとそれがしも思っての事ですが、言い当てられるとは流石ですな」
一葉の教え方は、恐らく擬音とかで教えるんだろうなーって思った。昔でいうならIS世界の箒であったか。最初の頃はセシリアもシャルも記憶共有者ではなかったからだけど。
「では双葉様。よろしいですかな」
「あ、はい・・・・」
という事で、双葉に教えてもらう事になった。
「こうか?」
「はい。とてもお上手です」
「・・・・・」
やはり双葉で正解だった。一葉は擬音系で教えていたが、双葉は違う、一つ一つの説明に納得する分かりやすさだった。座り方はマスターしたから、次は歩き方になった。一葉はずっと唸っていた。
「こうか?」
「いえ、そうではなくて・・・・背中は、この位で・・・・うぅ」
今は立ち座りから歩き方なんだが、意外と難しい。俺の背中を軽く撫でるように触れてくる。
「もう少し真っ直ぐです。膝と腰も」
少し修正する位で、何とかなった。が、まだまだ修正は必要だった。
「ああ・・・・すみません。それだと力を抜き過ぎです。もう一度お手本をお見せしましょうか?」
「ああ頼む」
俺の言葉に双葉は小さく頷くと、部屋の隅まで行ってからこちらにゆっくりと戻ってきている。ふむ、そういう事かなと思いつつ、カメラで録画モードにしてデータとして残した。あとで角度などを、細部に渡って見る必要がある。
「あの・・・・一真様」
「ん?」
「余りそうじっと見られるのは・・・・」
「あー・・・・悪い悪い」
男にじろじろ見られるのは、双葉にとってはないだろう。一葉の影武者として、御簾の中にいたし。
「でも見ないと分からん」
「ですよね・・・・あうぅ」
まあ、これもいい機会だと思うんだ。これで少しは免疫出来てしまえばいいんだし。
「でも今ので覚えたから、大丈夫だろう。こんな感じかな」
歩き出したら、完璧ですと言われた。まあ一度撮ったものから再現しただけとなる。それから数時間が経過したが、俺達の前にあるのは夕食の膳。確かこれも礼法があった気がする。
「ではいただきます。ふむ・・・・美味いな」
「双葉が作ったのだ。美味いだろう?」
「ああ。でもこれ京の味付けではないな」
二口目から濃い味わいだが、京のは味が薄いがこの味は尾張の味付けだった。
「はい。以前、一真様に教えてもらった味付けを試してみました」
「双葉はお主に食わせたくて、ずっと鍛錬してたのだ。味わって食えよ」
「お、お姉様・・・・っ!」
「ほうそうか、練習したんだな。いい味付けになっているぞ」
そう言っては双葉に頭を撫でる。驚いていたが慣れるだろうと思っていたし、双葉自身も嬉しいと言ってた。
「む・・・・。一真様」
「何?」
「余も撫でよ」
「何で?」
「それが料理に対する褒美というのは分かるが、見ていて何やらムッとした」
「嫉妬かヤキモチか。まあこれぐらい何度でもやってやるけど」
言いながら、一葉の頭を撫でてみたけど。
「余りヤキモチしないでくれよな?一葉も形式的には愛妾で恋人だが、妻だと思っているから」
「う、うむ。そう思ってくれると助かる」
双葉も撫でたそうだったから、二人の頭を撫でている。
「お二人共」
「幽は駄目だからな。これは我らだけの特権じゃ」
「一応、それがしも軍略の講義を・・・・」
「軍略は既に修めておろう。それは褒める事ではないな」
俺は二人の頭を撫で終えると、幽の頭を撫でた。幽は驚いていたが、これも教えてくれた褒美だ。その後、冷めない内にご飯を食べた。
「で、話は戻るが礼法ってまだ沢山あるんだろう?」
「まだ山程あるな。食事の時の器の持ち方、食事の順、物の受け取り方に服の着方、風呂の入り方・・・・ああ、手の取り方もあったな」
何だそれは。食事や物の受け取り方なら、何となく分かるが服の着方に風呂まであるのか?冗談じゃないぜ。ま、服は量子変換機であっという間だ。
「とは言え、そこまで覚えろとは言わん。時間もないし、公の場で恥をかかん程度の事さえ覚えれば良いだろう。なあ幽」
「付け焼き刃ではそれが限界でしょうなあ」
「それなら良かったが、神の姿になれば礼法もしなくてもいいんだろ?」
「確かにあの姿ならば・・・・公方様より上の御方でしょうなあ」
「おや。一真様の事だから、風呂の入り方は実演で教えろとか言うかと思ったぞ。のう、双葉」
「そ、そんな・・・・お姉様」
「礼法無しなら、一緒に入っても構わんが」
「あぅぅ・・・・一真様」
「ふむ。なら、今宵は一緒に入るか」
「ふぇぇっ!?」
「既に余も双葉も恋人なのだから、別段不思議でもあるまい。のう、幽?」
「そうですな」
「そ、それは・・・・」
「一真様は嫌・・・・なはずがないな」
「それ以前に、妻になった者とは普通に一緒に入ってるし、大浴場の時に女性の時間だったとしても俺が入る時は問題は無い」
たまにトレミーに戻って、風呂に入りに行こうとすると、女性の時間で入れない頃があった。女性隊員が、俺を見つけると一緒に入りたがる。好意を持っているのは全員知っているし、入ったとしても騒がれはしない。
「ほう。すると主様は見慣れていると」
「まあな。あと今日は泊まるんでそこはよろしくー」
という訳で、風呂の時間になったら堂々とする一葉と恥ずかしがり屋の双葉がいた。冗談かと思ったが、冗談ではなかったようだ。とりあえず、量子変換機で腰のタオル以外裸になった時は流石の一葉も驚いて俺の鍛えられた身体を見ていた。
今は部屋にいるが講義の終わっていない資料の山があるし、各地の情報や有力豪族の家系図とかもあるそうだ。データ化すれば問題ないし、打ち込めばいい事。ノーパソを出して打ち込もうとしたら、襖が開いたので誰かと思ったら一葉と双葉の姿だった。
「何をしておる、一真様」
「何って・・・・この資料の山をこれで打ち込もうとしてたが」
「こんな夜遅くまでする事なかろう。灯火の油はそのような事に使う物ではないぞ」
とは言え、今の灯火は炎術で炎の精霊によって灯りがついてるだけ何だが。
「で、二人共。こんな夜遅くどうした?」
「・・・・お邪魔、でしたか」
「全然・・・・ふむ。二人共風呂上がりか」
「ああ。今宵は一日遅れではあるが、余らの初めての夜であろう?」
ああそういう事か。一緒に寝たりもするが、情事もする事もかな。それに双葉は俺と出会う前までは、顔も見た事ない奴に嫁ぐかもしれないと。気持ちは通じ合ってたが、一葉のは難しいので俺から言ってみた。
「では俺から言おう。愛してるぞ、一葉」
「ああ・・・・。主様からそう言われるのは、これ程までに胸が温かくなるものなのだな」
一葉にキス後に、双葉にもキスをする。
「ん、ちゅ・・・・ちゅ、んぅ・・・・。これが・・・・口づけというものか・・・・?」
名残惜しそうに唇を離せば、一葉はトロンとした瞳で甘い息を吐いてみせる。もう一度と言うが、今度は双葉だと言った。ちなみに俺の事は旦那様と呼んでいる。形式は恋人だけど、俺にとっては妻が増えたと思ってもいい事だ。
「んふぅ・・・・ちゅ、ん・・・・っ。んは・・・・ぁ・・・・」
でまた、一葉にキスをする。その後、防音結界と人払いの結界を張ってから情事開始。二人とも初めてであったが、俺がリラックス効果のある癒しの力をしながらであった。情事後、浄化をして孕まないようにした。これ何度目だろうと思ったけど。
「旦那様・・・・旦那様・・・・」
「んー、双葉か」
「おはようございます、旦那様」
挨拶後フライングキスをしたけどね。
「そういえば・・・・」
今は腕枕をしているから、双葉もいるという事は隣には一葉がいるはずだが。
「あ、旦那様・・・・そちらは・・・・」
そこにいたのは、口にしていいか分からない状態の一葉だった。
「一葉っていつもこんな感じなのか?」
「はい・・・・お恥ずかしいです」
目の保養にはなるな。でもこの状態は風邪を引くから起こす事になるが、ちなみに結界は俺が寝る時には既に解除済み。
「一葉。起きろ」
「んぅ・・・・。・・・・ああ、主様」
「そんな格好だと風邪ひくぞ」
「大丈・・・・夫・・・・っ!?ひゃ・・・・やだっ」
「一葉?」
一葉は寝ぼけていたのだろうけど、俺の視線に気付くと布団を胸元まで引き寄せて顔を真っ赤にさせる。
「おいおい。昨日の一葉は偉い可愛かったが」
と言ってまたフライングキスをするが、心の準備が必要とか言われてもな。あれだけやっておいて、今更心の準備とかいらんだろう。その後は幽が起こしに来るまで密着してたけどな。
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