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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十三章
  戦(5)

3番艦がSOSを出した頃に、一葉の腕が止まっていた。

「余には聞こえるぞ、主様」

「うん!鞠も聞こえたの!」

「それがしも、それなりには」

「ようやく来たか、援軍が」

「主様は聞こえるのか?」

「いや聞こえんが、風の精霊と地の精霊が教えてくれた。あとこれでね」

と言ったけど、本当なんだな。トレミーから近づく集団が見えてくると。

「だが、多くの刀を携えて、この日の本で鬼を斬る。第六天魔が波旬となりし、己の力の足音が!」

「あれは・・・・」

「ああ・・・・!やっと・・・・やっと来てくれた!」

「久遠遅いぞ!馬鹿者共よ!!!!」

とまあ叫んだ。そして久遠達本隊が到着した瞬間ゲートは開いた。ドウターが次々と空の上から出てきて、待機してるそうだ。ちなみに俺の声は聞こえていない。

「武士の衣をかなぐり捨てて、鬼と変じたど外道共が、一体誰に触れようとしているのだ!三好衆!そやつは我の恋人であるぞ!貴様ら外道の小汚い手で我の恋人に触る事、我は許した覚え無し!掛かれ柴田よ!鬼五郎左よ!」

「「応っ!」」

「攻めの三左よ!槍の小夜叉よ!」

「「応っ!」」

「我が頼もしき母衣衆共よ!」

「応!」

「はい!」

「おー!」

「蹂躙せよ!」

久遠が言い終わったあとに、森一家の桐琴と小夜叉が叫ぶ。

「行くぞクソガキ!」

「応よ、母ぁ!」

「織田の家中が一番槍はぁ!」

「悪名高き、森一家ぁ!」

「逆らう輩の返り血浴びてぇ!」

「槍を朱色に飾り立てーん!」

「喧嘩上等、鬼上等!森一家ぁ、腐れ三好に目にもの見せてやんぞぉ!」

「ひゃっはーーーっ!皆殺しだぜぇぇぇーーーー!」

何だか無性に懐かしく感じるのは俺だけであろうか?相変わらず森一家の口上が、二条の空に木霊する。血と汗と。火薬の匂いに満ちた戦場に、森鶴の丸の旗が翻る。

「うわー・・・・すごーい!」

「・・・・何ですかアレは」

「アレ扱いか(ドウターは今どうしている?)」

『停滞中です。恐らく全部出たらゲートが消滅するパターンでしょうから』

「(今の所何体いる?)」

『小型が1万体、大型が1万体です。ゼットンは未だ姿は見えません。あ、今見えました。ゼットンは2体です!』

「(ゼットンが2体とは骨が折れそうだ。だが、やらなければならん。MS隊とIS部隊は空に上がらせろ!絶対に地上にはいかせるな。俺も少しこの戦いを見学したら行く)」

俺が皆に聞こえないように、トレミーと連絡してたら鞠が説明してた。

「あれはね、森の小夜叉なの!剣術とかした事ないらしいけど、すっごく強いの!ほら、鬼達を押しているでしょー♪」

「強い、ねぇ。・・・・押し返すというよりも、何と言うか・・・・虐殺してますなぁ」

「まあな、森一家らしいといえばらしい」

「ふむ。血飛沫がまるで霧のようだ。この世の風景とは思えん美しさがあるな」

「お頭ー!援軍です!援軍ですよー!」

「何とか間に合ったようで、何より・・・・」

「・・・・あれが昨今、噂に聞く、織田上総介様の軍勢なのですね」

「見惚れるのは陣を整えてからにしましょう。・・・・一真様御下知を」

本来なら空に行かなければならないが、まだドウターは停滞しているようだ。なので、おそらくこの戦が終わるころに地上に降りるのではないかと思っている。

「よし。姫路衆、八咫烏隊、それに一真隊の鉄砲隊と黒鮫隊の射撃班は集結!崩れ始めた鬼達を薙ぎ払え!」

「はっ!」

「はーい!」

「・・・・(コクッ)」

黒鮫隊のは、通信機で言ったから80名が集まってくるだろう。狙撃班はそのままで、狙撃しろと言ってあるし。

「小波!」

「お側に」

「各所の様子は?」

「両箇所とも、援軍が到着しております。南門の方は援軍に呼吸を合わせて挟撃を開始致しました」

「なら、あとはここだけだ。小波もここで戦え」

「ここでですか?」

「ああ。俺はちょっとやる仕事があるんでね。俺の代わりに皆を守ってほしいんだ。君の力が必要だ」

「・・・・承知!」

「これより反撃に移る!一気呵成に鬼を討つぞ!」

「「「応!」」」

「さてと、俺も仕事に行ってくるわ」

「主様、どちらへ?」

「ちょいと空にな、俺の本来の使命は鬼を倒すことと他にあるんでね。来い!黒鐵!ISモード!」

俺は仲間達の前でISを展開。光り輝くと同時に、黒い装甲が俺を包み込んでから全身装甲になった。

「そ、その姿は!双葉を攫った時と同じ黒き鎧の者!まさか、正体が主様だと言うのか」

「悪いな。隠してたのは悪かったと思っている。が、俺の使命があるのでね。野郎共!ここは任せた」

『おおおおおおおおおお!!!!』

「という訳で行ってくるわ。久遠に聞かれたら空にいるとでも言っといてくれ。ではな」

俺は空に上がった。俺達の敵であるドウター殲滅のためにな。一方母衣衆である和奏達は前に前に行こうとしていた。

「犬子ぉ!ボクの前を走るんじゃねーよ!」

「あははっ!和奏はずーっと私の尻尾を拝んでれば良いんだよー♪」

「てめっ!鬼より先に成敗してやる!」

「はいはーい、喧嘩している二人は放っておいて、滝川衆は左に回り込むよー」

「ああ!抜け駆けすんなよ雛ぁー!」

「犬子とじゃれてる和奏ちんが悪い。おっさきー」

「くっそ!おい、ボクの黒母衣衆!赤母衣ぶっ飛ばして鬼の奴らに先槍つけんぞ!」

「応っ!」

「むー!負けるな赤母衣衆ー!一真様を確保するのは私らなんだからー!」

「応っ!」

「「全隊、突撃ぃぃぃーーーーっ!」」

そのまた一方二人の家老である壬月と麦穂は。

「あの馬鹿共は、まだ一騎先駆けの武者の真似事か」

「うふふ、元気が良くていいんじゃありませんか」

「限度がある。三若が暴走せぬよう、手綱を頼むぞ」

「はい、承知しておりますよ」

一方俺は空を飛んでいたが、改めて凄い仲間だなと思った。鬼の背後から襲い掛かった織田の軍勢は、虚を突いたとはいえ、数多居る鬼たちを叩きのめしながら二条館に向かっている。俺がいると思って進んでいるんだろう。何せ先行して、二時間ぐらい鬼と少数で戦っていたからな。

「これで鬼と互角以上に戦えることを証明できた・・・・という事でしょう」

「戦況を見るに、ようやく切所まで来たという事でしょうな。ですが・・・・」

ふむ、もう一押しってことか。俺は上昇したが、戻って行ったけど。一葉のお家流で何とかしようとしているが、俺に任せてほしいね。

「トレミー、MS隊とIS部隊は動きがあるまで待機してろ!」

『了解』

「でも私達にはもう後詰めが・・・・」

「俺に任せろ!!!」

「あれは・・・・一真様?どうして戻ってこられたのです?」

「一葉のお家流にてやろうとしていたようだが、ここは俺に任せろ。ここでの鬼退治は終わりだ」

「余にも任せてほしい。一緒にやろうではないか!」

「いいだろう」

と言って、俺は一葉の隣で浮かんでいた。

「余には見る事能わぬ歴史が流れると言われる、三千大千世界。その歴史は古の時代から、余らとは違う余らがいる現世(うつしよ)、果ては遥か来世が数多存在し、等しく時が流れているという。古の古刀よ。余の知らぬ現世の業物よ。遥か来世の新刀よ。辿り着く事能わぬ世界の想刀よ。その力を余に貸すが良い」

出てきたな、呪文のように紡がれる言葉に呼応し、蛍の光のような光玉が、一葉の周囲に集まっていく。俺も準備しないとな、ストフリモード。腹にも砲台で腰にはレールガン兼スラスター。そして翼は青い翼と共に10個のビットを飛ばす。ミーティア装備させて、マルチロックオンシステム作動!

「丙子椒林剣よ、金銀鈿荘唐太刀よ。童子斬り安綱よ。鬼丸国綱よ。長曾祢虎徹よ。和泉守兼定よ」

刀の名を呼ぶたびに、まるで一葉に寄り添うように刀たちが顕現する。そしてその数は、百になりそうになったとき。

丙子椒林剣は、7世紀作の直刀で現代では日本の国宝に指定されている。

金銀鈿荘唐太刀は奈良時代(8世紀)正倉院御物。

童子斬り安綱は、平安時代の伯耆国の刀工・安綱作の日本刀。

鬼丸国綱は、鎌倉時代初期、山城国の京粟田口派の刀工で、粟田口六兄弟の末弟である国綱の作。

長曾祢虎徹は、虎徹(こてつ、慶長元年(1596年)? - 延宝6年(1678年)?)は、江戸時代の刀工。和泉守兼定は、室町時代に美濃国関で活動した刀工。

「滅せよ」

一葉が告げた一言を契機に、刀達が鬼に向けて一斉に放つと同時に俺も行くぜ。

「ハイマットフルバースト!!!!」

高エネルギー収束火線砲、エリナケウス 対艦ミサイル発射管とストフリの装備であるビットとレールガンにて、マルチロックオンシステムで鬼をターゲットロックオン。近くに味方に当たらないように計算してから撃った。

地に満ちる鬼達は、宙を滑る刀達を防ぐ事も出来ず、次々と串刺しにされていく。ハイマットフルバーストも、鬼の頭か心臓を狙って攻撃してから爆破されていく。

「今です!この機を逃すな!鉄砲組、撃って撃って撃ちまくれーっ!・・・・よしっ!」

「あのぉ・・・・官兵衛さん。一応、采配は私に任せられているのですが・・・・・」

「・・・・あああっ!!す、すみませんすみませんすみませんすみません!余りの好機だったもので、つい出過ぎた真似をしてしまいました・・・・!」

「はぁ、まぁ構わないですが。・・・・ふむ。それでは采配はあなたにとって頂きましょう。・・・・よろしいですか?」

「構わん。詩乃がいいのならここは任せられる」

「は、はいっ!有難き幸せ!」

詩乃から采配を受け取った官兵衛が、目をキラキラさせながら戦場を見つめる。俺?俺はフルバーストを終えて、待機している。

「敵左翼に怯みが見える。長柄組、穂先を並べて突き崩しなさい!」

「は、はいっ!」

「弓組は左翼より中央に向かって矢を放て!長柄の攻撃を援護するのです!」

「はっ!」

「鉄砲組は中央左翼を中心に、とにかく撃って撃って撃ちまくりなさい!」

「応っ!」

黒鮫隊の射撃班も答えてフルオートで撃った。

「ほお・・・・これはこれは。素晴らしい采配です。さすが名高き黒田官兵衛殿」

「ふむ。なかなか良い武者振りであるな」

そうだな。俺は浮かんでるけど。ミーティア装備してるが、まだドウターは停滞中のようだ。この戦を見ているのか?それとも鬼と言う存在を見ているのか、ドウターの思考は分からん。

「とりあえずこれでよかったが、上空からの敵は、停滞中だから俺もまだここにいるとするか」

「敵だと?空にいるのか。だから主様はその姿になったのだな。それと詩乃が采配してたのに、いつの間に官兵衛に譲ったのじゃ?」

「空からの敵だとすれば、一真様にお任せする以外ないですね。官兵衛さんに渡したのは適材適所だと思いまして」

「最初に助けてくれた時だって、良い采配であったからな。だから問題ないと思っただけだ」

「まぁ二人が良いのなら、余は構わんがの」

「一真様ぁーーーーー」

と犬子の叫び声が聞こえてきたので、犬子の方を向くと来たが俺を探しているようだ。

「あれ?一真様はどこです?詩乃」

「そちらに浮かんでいるのが、一真様ですよ。犬子さん」

「えぇ!どう見ても一真様じゃないんですけど『呼んだか犬子』本当に一真様ですか?」

「そうだ。今はある任務でこの姿になっている」

と浮かんでいたら、二人来たな。雛に和奏。

「犬子ー。一人で何抜け駆けしてるのー。雛だって居るんだからねー」

「ボクだって居るんだぞ」

「あれ?一真さんはどこ?『目の前にいるだろう』わっ!もしかして黒い全身鎧は一真さん?」

「か、一真まで異形の者になったのか?『違う。ある任務でこの姿になっている訳だ。第二の姿といっていい』な、なるほど」

「無事で良かったよー。だけどまだ終わってないから、一真さん、手伝ってくれる?」

「ちょっと待て(トレミー、ドウターの軍勢はどうしている?)」

『未だ停滞中です。まるで隊長を待ってるか、それとも地上の戦いが終わるのを待つだけかだと思われます』

「(俺は地上にいる鬼達を駆逐してから、そちらに向かうが動き出したら攻撃開始だ。絶対に地上に降ろさせるな!)」

『了解です』

俺はオープン・チャネルで話してた。無言の状態だったけど。

「まだここにいるからさっさと倒すぞ!」

「わん!一真様が手伝ってくれるなら、犬子張り切っちゃうわん!赤母衣衆集合ー!」

「黒母衣衆も出てこいやぁ!」

ここにいる兵たちは、俺のことを見ていた。何せ浮いてる黒い甲冑だしな。

「お前ら、突っ込むのもいいが、森一家のところには近づくな!刈られても知らねえぞ!」

「森一家には近づくな!って事で和奏!」

「応!黒母衣ぉ!気合い入れて行くぜー!」

「赤母衣も行くよー!」

「「母衣衆、突撃ーーーーーーー!」」

「それじゃ、いってきまーす」

それぞれの馬印を誇らしく掲げ、三若は兵を率いて鬼の先頭に突撃していった。

「織田の三勇士に後れを取るな!姫路衆よ、ここが死に場所ぞ!死んで公方の道となれ!」

「応っ!」

「八咫烏隊!」

「ほーい、小寺さんについていくぜーってお姉ちゃんが言ってまーす!」

「ならば行きますよ!姫路衆、一真隊、突撃ぃ!」

和奏達の突撃から少しタイミングをずらし、しかも鬼の横に食い込むようにし、一丸となった兵達が雄叫びと共に突撃する。突撃に合わるよう、後方から八咫烏隊と黒鮫隊が鉛玉と鉄玉の雨を降らせる。

「さすが。正面に気を取られている鬼の死角を、上手く突いた。見事な采配ですね」

「珍しいな、詩乃がそう言うのは」

「用兵の仕方が、私とは全く違っていて、見ていてとても楽しいです」

「そうだな。ああいう子みたいなのが、仲間になってくれると心強いよ」

「それはこちらの都合でしかありませんからね。どうなるかは分かりませんが、ですが私には予感があります」

「俺の場合は勘だな」

「勘ですか。確かにそうかもしれませんね。戦い続け、鬼との最後の戦いの時に・・・・きっと日の本の武士達は皆、一真様の下に集まっているのではないかと、そんな予感がします」

「俺もそんな感じだな」

と俺は浮いていると、後ろから来る者達が来た。

「ハニーっ!」

「お頭ぁー!」

「何とか間に合いましたか・・・・っ!」

おやおや、ころに梅、それにエーリカまで来たよ。俺の事を探しているのか、きょろきょろしているがころは俺を見て言った。

「その姿は!もしかしてお頭ですか?」

「ころさん。こんなのがハニーな訳ありませんでしてよ『それが本当何だよねー』ハ、ハニーなんですの?」

「それは黒き甲冑ですか?」

「解釈は何でもいいや。それより一真隊集合!これがここでの戦いは最後だ。最後の力を振り絞って鬼を叩き潰す!」

「応っ!」

後方では森一家が暴れまわり、前方では和奏達母衣衆と共に、小寺衆、一真隊と黒鮫隊が連携を取りながら攻め立てる。鬼から見た立場は、たまったものではない。前後左右から、自分らでは敵わない荒武者達が、目の色を変えて襲い掛かってる。俺も行こうかとしたが、後程の戦いに温存したいので主に黒鮫隊射撃班と狙撃班でやってくれる。

「ひゃっはーっ!死ね死ね死ね死ねーっ!」

「おらぁもっと気合い入れて襲いかかってこいやぁ!んなちょろい頸なんざ刈る価値ねーんだよぉ!」

一部の奴らにとっては、歯ごたえ無いらしいが。織田勢の圧倒的な武力を前に、魔薬を飲んで鬼になった三好衆は、次々と駆逐されて行った。やがて二条館を囲んでいた鬼達は数を減らし、全ての鬼を駆逐した時は夜空に白々とした光が広がっていた。魂の浄化だ。

地上戦である人間対鬼との戦は終幕となった。次の戦は黒鮫隊対ドウター。屋敷にいた者、庭で鬼達と戦っていた者、隠れていた者、怪我していた者。皆が戦の終わりを祝うように庭へ集まって来る。俺はこの二条館の屋根で待機。久遠が来たが、俺は次の戦に集中しようと上を向いた。 
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