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バスケ

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第四章


第四章

「どうしてオーストラリアにいるんだ?」
「しかもバスケを辞めて」
「バスケに情熱をなくしたっていうけれど」
「一体何があったんだ?」
「そのことか。やっぱりな」
 クローバーは話を聞いて述べた。
「その話か」
「言いたくないか?そのことは」
「何か事情があるよな」
「あるっていえばあるな」
 実際にそうだと話すクローバーだった。その長身で二人を見ながらの言葉だった。
「だからアメリカを離れてこの国に来てるからな」
「オーストラリアにな」
「そうだよな」
「実はな。バスケには情熱はあるんだ」
 それはあるというのだ。
「それはあるんだよ」
「それでまたどうしてなんだ?」
「どうして辞めたんだよ」
「プロとしての情熱はなくしたんだよ」
 そうした意味でだ。なくなったというのだ。
「もうな。やり尽くした感じがあってな」
「何度もタイトルを取って記録も残したからか」
「それでか」
「そうさ。もうプロとしては俺はやり尽くした」
 プロのバスケ選手としてはとだ。彼は話すのだった。
「だからな」
「それで引退したってのかよ」
「もうやり尽くしたからか」
「それで俺が次にやることはな」
「それがか」
「この国にあるっていうのか」
「バスケは素晴しいスポーツだよ」
 バスケットボーラーとしてかくあるべきと言える言葉だった。確かに言われてみればその通りだ。だが、だ。その言葉にはもう一つ含まれていた。
 その含まれているものをだ。彼自身が話した。
「けれどな」
「それでもか」
「この国じゃか」
「ああ、オーストラリアでも他の国でもな」
 どうかというのだ。
「バスケはアメリカみたいに流行ってないし定着していないからな」
「じゃあそれを広める為にか」
「それでここまで来たのか」
「そうさ。オーストラリアにもバスケを流行らせて定着させる」
 微笑んでだ。こう言うのだった。
「俺はそれを考えてここに来たんだよ」
「牧場でか?」
「しかもオーストラリアの端のこの町でか」
 二人はクローバーにこのことも問うた。
「ちょっとそれがな」
「わからないけれどな」
「ああ、牧場な」
 クローバーはまず牧場から話した。
「あれだよ。俺は確かに金はあるさ」
「年俸も凄かったからな」
「スポンサー契約もしてたしな」
「だからな。金自体は一生食うに困らないんだよ」
 それは確かだというのだ。
「けれどな。オーストラリアっていったら牧場だろ」
「まあオーストリアっていったらそうだな」
「羊だな」
 バスターもクラウンもだ。それはイメージ通りだ。オーストラリアの主要な産業の一つでもある。羊はこの国にとってそこまで重要なものだ。
 それを何故しているのか。彼は二人にさらに話した。
「食うには困らなくても仕事はしたいしな。それにな」
「それに?」
「それにって何だよ」
「牧場は広いだろ」
 ここで笑って言うクローバーだった。
 
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