魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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そら来たみんなの魔法モデル☆リリカルガールズ
†††Sideヴィヴィオ †††
午前までの授業も終わって、わたしは今日から家に泊まることになってるルールーとレヴィの居る聖王教会を目指す。
あ、もちろんわたしだけじゃない。友達のコロナとリオ、それにイクス、アインハルトさんも一緒。アインハルトさんはレヴィと組み手をしたいみたいで、こっちにレヴィが来ると知ってちょっと嬉しそうです。イクスは聖王教会がお家だから、帰るっていうのが正しいのかな。
「ミッドでルーちゃんとレヴィちゃんに逢うのってインターミドル以来だね」
「うんっ。だから今日から三日はとことん遊ぶつもり♪」
コロナにそう答えたけど、わたしは“テスタメント事件”の時に逢ってる。でも今回のような楽しい事じゃなくて、操られたルシルパパとの戦いで、だ。ううん、その事は忘れよう。だってルシルパパは確かにこの世界に居て、お話し出来るし遊ぶことだって出来る。だからもうそれだけでいいんだ。
「あ、あれってクラナガンの次元港だよね?」
リオが緊急ニュースを放送してる巨大モニターを指差した。確かにクラナガンの次元港で・・・あれ? ちょっと待って。ルールーとレヴィがミッドに降りるのは、そのクラナガンの次元港だった、よね。
「あの、ルーテシアとレヴィは大丈夫なんでしょうか?」
「あ! イクスの言う通りだよっ。船が到着する時間と被ってるし! 連絡取れるかな・・・!?」
「待ってくださいコロナさん。ニュースをよく観てください。今映っています民間協力者、というのは・・・レヴィさん、それにセインさんとディードさんでは?」
慌てるイクスとコロナを止めたアインハルトさんが指を差す。一般の人が撮影した映像に、どうも見憶えのある防護服を着た女の子が映り込んでる・・。それに教会の修道服を着た二人。レヴィとセインとディードで間違いない。ルールーは映ってないようだけど、絶対あの場所に居る。そのレヴィたち民間協力者のおかげで、犠牲者が一人も出なかったって紹介されてる。
「あ、フェイトママ! それにルシルパパも!」
フェイトママとルシルパパがインタビューされてる場面に移った。だからつい声を大きくしてしまった。周囲からの視線が強まる。
わたしは、えっとみんなも苦笑いをして、その場をどうにか誤魔化し切った。別に隠してるわけじゃないけど、なのはママもフェイトママもすっごい有名人。というか“機動六課”や“特務六課”とか、大きな事件を解決した部隊の前線の人たちは漏れなく有名人。中でも有名なママ達。その娘となると、やっぱり大変だったりする。
「ヴィヴィオのお父さん、すっごく綺麗でカッコいいよね」
「うんうん。美人ママに美人パパ。羨ましいぞ~♪」
コロナとリオにほっぺを突かれる。大切な家族が褒められると、とっても嬉しい。あ、でも美人パパって言うのはルシルパパちょっと嫌がるかも。わたしは謙遜しないで「もちろんっ。自慢のママとパパだよ♪」って笑う。
フェイトママとルシルパパ(この前プレゼントしたヘアゴムをしてくれてる♪)がインタビューを受けてるのは地上本部みたい。ミッドに降りてきてたんだ。でもすぐに帰っちゃうんだろうな。すごく残念だけど、仕事があるって言ってたし。だからルールーとレヴィが来たんだから。
「ヴィヴィオさんのお父様とは一度きちんとお会いしてご挨拶したいですね」
「ルシリオンさんと話したのってモニター越しだったもんね」
「うん。ヴィヴィオの友達としてちゃんと話してみたかった」
「わたしもお会いして、シャルの事でお礼を言いたいです」
ルシルパパはわたしの友達にも人気者です。嬉しくてふにゃってなる。ルシルパパとは“テスタメント事件”が解決してから半年くらい経って、ようやくモニター越しで話す事が許された。その時に、ルシルパパにわたしの大切な友達を紹介できた。でも通信できる時間が限られてて、ちゃんと出来なかったけど。それ以来、ルシルパパとリオ達との接点はほとんどないって言ってもいいかもしれない。
「たぶんこれからはちゃんと会えると思う。もうそれほど管理局から制限を受けてないみたいから」
管理局従事っていう形からしての行動制限を受けてたけど、もうそんなことはない。だから地球、なのはママの出身世界まで旅行に行けたんだから。また行きたいなぁ。
「洗脳されて操られてたんだよね、ルシリオンさん。ニュースで持ちきりだったから憶えてるよ」
「ヴィヴィオさんのお宅で拝見した写真に写っていた、ヴィヴィオさんのお父様と紹介されていた方がニュースで取り上げられていたのを見て本当に驚きました。お母様ともどもとても有名な方だったのですね」
「元管理局本局の超一等空佐で、管理局史上最強の空戦魔導師。これを聞いただけで、なんていうか、こう・・・うわって感じ?」
「リオ、それだけじゃ解らないよ」
リオは両腕をブンブン振って興奮気味。えっと、アインハルトさん? なんでそんなにニヤニヤしてるんですか? 無言なのがかえって不気味で少し怖いです。イクスに「ニヤけてますよ?」って指摘されると、「恥ずかしいところを見られました」ってちょっぴり反省モード。
「いつかお手合わせ出来ればいいのですが・・・」
やっぱりそんな事を考えていたんですね、アインハルトさん。でもそういうわたしももう一度、今のルシルパパと戦ってみたいって気持ちがある。今までにも真っ向から戦った事はあるけど、一度はバエルって人に操られて(あんまり憶えてないけど)。
二度目は“機動六課”の隊舎で、テルミナスって人に操られて(それもうっすらだけど)。三度目は本局で、操られていたルシルパパと。四度目は公園で、ルールーと一緒に戦った。どれもお互いの意思じゃない中での戦い。だからカウントに入らない。今の、成長したわたしを見てほしい。ちゃんとお互いの意思がある中で。
「今年もインターミドルの予選会前にカルナージに行きますから、そこでなら、たぶん」
「それは楽しみですね」
アインハルトさんが胸の前に持ってきた右拳をギュって握る。ごめんなさい、ルシルパパ。勝手に約束してしまいました。それから今年のインターミドルの目標とかの話をしながら、聖王教会へ向かった。
†††Sideヴィヴィオ⇒レヴィ†††
次元港からディードの運転する車に揺られて辿り着いたのは、ベルカ自治領の聖王教会本部。ここ聖王教会で、ヴィヴィオ達と待ち合わせする約束だ。ディードは車を駐車しに行って、わたしとルーテシアは、セインの案内で敷地内を歩いている。
そこに、「セイ~~~~ン」って伸びた声がどこからか聞こえてきた。聞き覚えあり。わたしとルーテシアの前を歩いていたセインがビクッとなって固まる。三人揃って声のした方へと視線を移す。そこに居たのは・・・
「う゛、シスターシャッハ・・・!」
「「オットー」」
両手を腰に当てて仁王立ちしているシスターシャッハと、恭しく会釈してるオットー。シスターシャッハは半眼でセインを軽く睨んだ後、わたしとルーテシアを笑顔で見た。
「いらっしゃい。ルーテシア、レヴィ」
「長旅お疲れさまでした。ルーテシアお嬢様、レヴィお嬢様」
ビクつくセインを横目に、わたし達は「いらっしゃいました~♪」と返す。シスターはまたセインを見て「話があるので、あとで私の部屋に来なさい」と問答無用な感じで告げた。セイン、大ピ~~ンチ。さぁこの場をどう乗り切るの、セイン。
「ちょ、ちょっと待ってシスターシャッハ! 確かに掃除サボって抜け出したのは悪いって思うけど、でも今回はそのサボりのおかげですっごく役に立ったんだよ!」
やっぱり次元港での活躍っていうカードを切るんだ。まぁそれくらいしかないし、セインもそれで説教が無くなるって読んでたし。で、その切ったカードの効果はというと・・・・
「次元港での事件なら、先程フェイトさんとルシリオンさんから窺いました。ディードと共に人質救出に一役買ったそうですね」
「お、おお、そうそう、そうなんだよ! あたしが現場に居たから、被害も少なかったんだから!」
「そうですね。あなたのディープダイバーがあったからこその結果だというのは解りました」
「さっすがシスターシャッハ、話しが解るぅ♪」
お、これは決まったかな。思いの他シスターシャッハの反応が良い。セインもどこか勝ち誇った、やりぃ、これでお説教は無しだぜ☆って顔をしてる。セインはスキップしそうな感じで「そんじゃあたしがルーお嬢様とレヴィお嬢様を案内するからっ」って、シスターシャッハの脇を通り過ぎようとした。だけど、むんずっと襟首を掴まれて「ぐへぇっ?」ってカエルがぺしゃんこになった時のような呻き声を漏らすハメに。
「げふっ、えほっえほっ。し、シスターシャッハ・・? いきなり襟首を掴まないでよ。危うく目ん玉がポーンするとこだったじゃん」
咽ながら抗議するセインだけど、シスターシャッハは謝罪とは別の言葉を告げた。
「話はまだ終わっていませんよセイン。つまり、それはそれ、これはこれ、です。私の言いたい事が解りますね?」
「え、え~と・・・サボった事に変わりないから、お説教はしちゃうぞ☆ってこと・・?」
シスターシャッハがニコリと笑った。はい、セインの淡い期待が砕け散りました。切り札は没カードへ転落。ルーテシアと二人で苦笑いしながら、セインの絶望に染まった表情を眺める。
「ではオットー。私はセインと大切なお話があるので、お二人をご案内してください」
「た、助けてルーお嬢様! レヴィお嬢様!」
(何か見たことあるよこの構図。えっと、どこだったかなぁ・・・?)
あ、そうそう。シャルがイクスを診察しに来た日にも似たような事があったっけ。んー、セインはどうやらこういう星の下に生まれたのかもしんない。常にお説教をくらうスキル。そんなの嫌過ぎる・・・。必死に助けを乞うてくるセインを、わたしは「またね~」って手を振って見送った。
「それではお部屋にご案内します。陛下と御学友の皆様が来るまで、そちらでお待ち下さい」
「「は~い♪」」
セインの事はもう忘れちゃって、わたし達はオットーに続いて教会内へと足を踏み入れた。大きな噴水のある広場を通っていると、噴水の前でレトロなカメラで写真を取っている女性がこっちをじーって見てきたのに気付く。
オットーもその視線に気付いて、わたしとルーテシアを庇うかのように女性とわたし達の間に立つ。そんでわたしもルーテシアを背後に庇うように立ち位置を変える。
「ごめんなさい。変に警戒させちゃったね。アタシはグロリア・ホド・アーレンヴォール。ミッドチルダへは仕事で来たの。で、今はちょー有名な聖王教会を観光中なの、クフフ」
骨董品とも言えるごついカメラを胸の高さまで掲げて笑う。グロリアは赤いグロリオサがプリントされた白生地のTシャツとシフォンスカート姿。写真家か記者、そんな辺りの仕事をしてる人かな、と思ったりもした。だけどそれよりわたしは、グロリアの身に付けているアクセサリー、そのデザインに注目してる。
(なにあれ? あんな偶然ってある?)
耳飾りは、右が黄金のロレーヌ十字で左が翡翠の聖ペトロ十字。指環は白銀のマルタ十字と鋼色のロシア十字。ネクタイピンは燈黄のギリシャ十字。色も形も“界律の守護神テスタメント”の武装・聖典とおんなじ。1STの白銀に2ndの黄金に6thの翡翠に8thの燈黄に10thの鋼。
でも、どう気配を探っても魔力のない人だし。やっぱ偶然? でも偶然にしてはちょっと。んー、念のためにもあとでルシリオンに連絡入れておいた方が良いかなぁ・・。
「仕事、ですか。ではこの子たちへは何かご用が・・・?」
「そんな警戒されるとやっぱり悲しいんだけど。そうだね、ただ景色や建物を写すだけじゃつまらないって思って。だからちょーどいいモデル、特にかぁいい女の子を見繕ってたってわけ」
『ねぇ、レヴィ。あのグロリアって女の人、ちょっとマズいかも・・・?』
『ルーテシアもそう思う? 気を許したら何か変な事されそうな感じ』
さっきからこっちを見てニコニコ笑う。ちょっと危ない人だ。暴走したシャルの危険度と同等、そんな感じだ。オットーと話し合うグロリアは、「何枚かで良いからモデルになってほしいなぁ、なんて」って頭を下げた。
そこにあるのは純粋な願い。嫌な感じはしないし、ちょこっとだけでもいいかな?なんて思う。ルーテシアをチラッて見ると、肩を竦めて「ま、いいんじゃない」って苦笑。
「お二人がよろしいのであれば、僕としては何も言いませんが・・・。ただ、このお二人に危害を加えるような仕草を少しでも見せればただでは済まさないので」
「だいじょぶだいじょーぶ。クフフ、やったやった☆」
グロリアはその場でクルクル回って機嫌の良さを表す。ピタッと止まって、「まずは一枚」ってシャッターを切った。
「ん。アタシの事はグロリアとでも呼んでね。で、えっと、名前を訊いてもいいかな?」
「ルーテシア・アルピーノです」
「妹のレヴィ・アルピーノ」
お互いに自己紹介した。彼女は「姉妹かぁ。クフフ、それは素敵だ♪」って微笑む。まぁ写真を撮られるだけで、あれだけ喜んでもらえるっていうのはこっちも嬉しい。
「クフフ。それじゃ、まずは噴水の前で、二人並んで――」
そんなこんなで色々とポーズを取りながら撮影って事になった。
†††Sideレヴィ⇒ルーテシア†††
「クフフ。いいよいいよぉ❤」
えーっと、どうしてこうなったのかなぁ? レヴィと向かい合い、両手を取り合って頬をくっつけて、視線はカメラのレンズへ。そこでフラッシュ。レトロなカメラのシャッターを切るグロリア。これで何枚かな・・・? 少なくとも十枚は撮ったと思う。枚数的には少ないけど、ポーズだとかで色々と疲労が溜まる、特にメンタル面で。
「次! 次はどういう風に撮るの!?」
「今度は、この衣装を着て撮ってもらおうよ! ほら、ルーお嬢様、レヴィお嬢様。あたしの貸したげるからっ♪」
特に疲れる要因が↑の声の主×2。二人に訊ねられたグロリアは「聖王教会に所属する人ってもっとお堅い感じだと思ってたけど、シスターがこんなにノリの良いなんて、嬉しい誤算だよ、クフフ♪」って心底楽しんでる。
「セイン、シャンテ。またシスターシャッハに怒られるよ?」
「「それなら大丈夫♪」」
セインに修道服を胸に当てられたレヴィが嘆息したけど、二人はお構いなし。シスターシャッハはどうやら少し本部を空けているよう。だからそんなに余裕を見せてる。シャンテがそれを注意深く眺めて、「あーダメ。レヴィっちの方が胸あるし」と悪気のない一言。
セインが硬直。静かに自分の胸を見下ろしてぺたぺた触って、次にレヴィのそれなりに大きな胸を見た後、がくりと両膝をついた。レヴィはレヴィで「レヴィっち言うな。次言ったら判るよね?」と警告。
「クフフ。シスターセイン。そんなに落ち込まなくてもいいよぉ~☆ 世の中は胸の大きさが全てじゃないって、どこかのレディーが言ってたよ」
「グロリアさん。説得力がゼロなんですけど」
全員の視線がグロリアの豊満な場所へと一点集中。まぁグロリアは大人の女性だし、子供なわたし達より大きくて当たり前だよね。レヴィはヘコんだままのセインから引っ手繰った修道服を受け取って、
「どこで着替えようかなぁ・・?」
「こっちこっち。この植え木の陰で着替えればいいよ」
シャンテにそれなりの大きさの植え木の陰に引っ張り込まれる。ちょっとちょっと。周囲には参拝客(見えるだけじゃ数人だけど)が居るのに、堂々と着替えられるわけが・・・
「近くに空き部屋とかないの? さすがにこんな空の下で、下手すれば痴女の疑いが掛けられてしまうような行動したくないんだけど」
「そ、そう! うちの大切な妹にそんなはしたないマネさせるわけには・・・!」
「でもこの近くに空き部屋はないはずだし。大丈夫だって、ちゃんと人か近づかないように注意するから」
「じゃあ仕方ないか」
「そんなあっさり!? 待ってレヴィ!」
やっぱりレヴィの感性はどっかおかしい。グロリアも「そこまでして着替えなくても」って、嬉しい事に止めに入ってくれる。とここでセインがようやく復活して、
「あたしのディープダイバーで空き部屋まで連れてって、着替えさせてまた戻ってくればいいよ」
そう提案した。こんな外で着替えるよりは断然マシだ。その案に反対意見は当然無くて、セインと手を繋いだレヴィが地面に潜っていった。待ってる間にも、わたしとシャンテは二人で写真を撮られることになったんだけど、「待っててば! セイ―――ほぇ?」レヴィとセインが一分もしない内に戻ってきた。この場に居る全員が、レヴィの今の格好に唖然となる。
だって今のレヴィの格好は・・・・
「レ、レヴィ・・・? ハッ、い、今すぐ“服を着て”ッ!!」
「~~~~~~ッッ!! いやぁぁぁああああああああああああああッ!!」
レヴィが体を抱くようにして、悲鳴を上げながらしゃがみ込んだ。フレッシュグリーンの下着姿で、いきなり人目のある場所に登場した所為だ。すぐにセインが「ごめん! すぐにどっかの部屋に・・!」って、レヴィを自分の体で隠す様に抱きついて潜っていった。
わたし達、グロリアを含めて周囲を見渡す。男の人は・・・運良く居ないのを確認。ご年配の女の人たちが目を丸くしてこっちを見てて、わたし達は必死に誤魔化す事に。
「う、う~~。セインに辱められた」
「ごめん! ホントにごめんなさい!」
私服のワンピース姿で戻ってきたレヴィがガックリ肩を落としてる。一体何があったのか訊いてみたら、入る空き部屋入る空き部屋に着替えようとした直後に人が入ってきたみたいで、ようやく大丈夫だと判断したところで服を脱いだ。その直後に人が入ってきて、急いでディープダイバーで脱出。脱出した先にも人目があって、気付けばこっちに戻ってきてしまったということだった。
「ううん、もういいよセイン。ただ運が悪かっただけだから」
「不幸中の幸いで、男の人に目撃者が居なかったってことだけど」
「ごめんなさい。アタシが写真を撮らせてってお願いしたから」
「そんな、グロリアに悪いとこなんてないよ。はぁ。それにしても何だったのかなぁ・・・。人を呪わば穴二つって」
「なにそれ?」
「何かよく判んないんだけど、下着姿でここに出て来た時、人を呪わば穴二つ、って聞こえた気がして・・・きっと気の所為だと思う」
どういう意味か考えてみるけど、結局意味が解らないから切り上げる。
「あっ、居た居たーーーっ!」
この声は。振り向くと、こちらへ向かってくるヴィヴィオ達を発見。駆け寄ってきたヴィヴィオ達と挨拶する。今ばかりはセインもシャンテもしっかりと挨拶。相手は、聖王教会の象徴たる聖王の子孫とも言えるヴィヴィオだからね。そして話題は次元港での出来事に変わる。
「レヴィさん、お怪我などはありませんでしたか?」
「心配してくれてありがと、アインハルト。わたしは全然問題無しだよ。こっちはマジな戦争を潜り抜けたんだし。あんな数だけのド素人相手に遅れはとらないって」
「そうは言いますけど、危ない事には変わりないですから」
「ルールーも大丈夫だった?」
「一応ニュースで民間協力者は無傷って出てたけど」
アインハルトとイクスに心配されてるレヴィは、照れくさそうに頭をかく。わたしもヴィヴィオとコロナに心配されるけど、わたしはほとんど何もやってない。リオが「うん、本当に何も無いみたい」って安堵してくれた。
「あ、そうだ聞いてよっ。あたしさ、人質救出に貢献したのに、シスターシャッハに説教くらったんだよ!?」
まだ言ってるんだセイン。その話はもう過ぎたことなのに。話を聴いたイクスが「セイン、また掃除などをサボったんじゃないんですか?」って訊くと、セインは少し黙った後「うん」って頷いた。
ヴィヴィオ達の反応は「それは自業自得だよね」って嘆息と苦笑を漏らすばかりだ。わたしとレヴィとシャンテは「そうだよね~」って同意してると、袖をくんくん引っ張られる。グロリアだ。両目にキラキラな☆を浮かべてる。ま、眩しい・・・。
「もしかしてこの子たちって、貴女と同じインターミドルで活躍した・・・」
「うん。ヴィヴィオ、アインハルト、コロナ、リオ。大切な友達だよ」
「やっぱりっ☆ ねぇねぇ、あの子たちも撮りたいんだけど。アタシ、ファンなんだよね♪」
キラキラ度がハネ上がったのは気の所為じゃない。止めてもグロリアは勝手に交渉に入るんだろうね。だったら何か問題を起こす前に、わたしから事情を説明して協力を取り付けた方がいいかも。雑談してるヴィヴィオ達に「ちょっといい?」と声をかけて、説明開始。グロリアも「アタシに記念と思い出をお願いしまーす」と頭を下げてお願いする。
「いいですよ。あ、撮ってもらった写真とかあとでもらえますか?」
「クフフ。もちろんですよヴィヴィオちゃんっ」
「じゃあ撮ってもらおっかな。アインハルトさんとイクスも、いいよね?」
「え? あの、撮られた写真などは一体どうなるのでしょうか・・・?」
アインハルトは、自分が撮られた写真の行方が気になるよう。そう言えば、その事について何も訊いてなかった。ちょっと不注意だったかな?
「あーだいじょーぶ。モデルに無断で公表とかしないから。信じて。写真は単なる趣味で、撮った写真はアタシのアルバムにしまうだけ。だから安心して、アタシに写真を撮られるがいいのさ、クフフ♪」
アインハルトは「そう、ですか。ヴィヴィオさん達が良いと言うのであれば」ってノリきじゃないにしても嫌じゃない、と。アインハルトが折れたら、もう残りのメンバーの心配はいらない。コロナとリオも初っ端からノリ気だし、ヴィヴィオとイクスもアインハルトが良いと言った事で笑みを浮かべてる。
「クフフ♪ 今日は何て運のいい日なの。主よ、感謝いたしますッ。ということで、さっそくみなさんには仲の良いシーンを見せてもらいましょっか。シスターセイン、シスターシャンテ。お二人もどうぞご一緒に」
お騒がせシスターズも本格参戦。早速ポーズをとってるし。そしてパシャリ。グロリアはどれだけ嬉しいのか頬をピンクに染めてニッコニコ。
「ささ、ずずいっとこっちへ来てくれたまえ。可愛く撮ってあげるから。そうね、まずはヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんから先撮らせてね。もちろんそのウサギさんとネコさんも一緒にね。クフフ」
グロリアに手招きされて、ヴィヴィオとアインハルトは顔を見合わせる。導かれるままにグロリアの指差す場所に立って、アインハルトが一言。
「あの、このティオは猫ではなく、一応雪原豹なんですが」
「え? あー、それは失礼。でも、ニャアって鳴くし、てっきりネコかと。この子のお名前を訊いていいかな? 名前があるならそっちで呼ばないと」
「あ、はい。この子はアスティオン。愛称は、ティオ、といいます」
「ティオちゃん、ね。よろしく、アタシはグロリアっていうの」
「ニャア♪」
軽い自己紹介が交わされる。にしても、ここでも言われちゃったか。アインハルトのデバイス・アスティオン(愛称はティオ)の外見は、どう見てもネコに見える。気を取り直すためか、グロリアがコホンと咳払いして、
「ヴィヴィオちゃん、この子はウサギで良いよね? ウサギに見えて実は耳の長い白クマとか」
「あはは、ウサギで合ってますよ。この子の名前は、セイクリッド・ハート。愛称は、クリス、といいます。クリス、ご挨拶して」
宙に浮くクリスが、グロリアの元まで飛んで、その短い手をスイっと差し出す。
「お、おお。握手を求められてる? クフフ、よろしくねクリスちゃん。クフフ。それじゃ、ヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃん、それにクリスちゃんとティオちゃんも、このレンズを見てね」
まずは二人を自然に立たせて、その腕にパートナーを抱きかかえさせる写真を一枚。それから若干のポーズを付けさせて二枚。クリスとティオだけで一枚って撮る。
「じゃあ次は、コロナちゃんとリオちゃんとイクスちゃん」
「「は~い❤」」「き、緊張しますね」
次に指名されたコロナ達が、ヴィヴィオ達と入れ替わるようにグロリアのカメラの前に立つ。そのトリオで、数枚ポーズを変えた写真を撮られる。今度は場所を変えて、配置にポーズに防護服って色々と変えて大撮影会。
「じゃあ今度は、みんな肩を組んで・・・スマイルスマ~~イル♪」
†††Sideルーテシア⇒レヴィ†††
いつの間に増えたギャラリーの視線の中、夕日を背にわたし達は噴水に腰かけて並ぶ。セインとシャンテの姿はない。オットーとディードに連行されていったから。隣の子(わたしの右にルーテシアで左にリオ)と手を繋いで、お互いの人差し指を立ててピースサインをつくる。
「んーいいですよぉ~♪ クフフ、それではラスト一枚いきま~す☆」
パシャっとシャッターが切られる。かなりの疲労感と、それ以上にこんなに楽しい時間を過ごせた嬉しさで胸がいっぱいになる。みんなそれぞれ顔を見合わせて、やり遂げた感の笑みを浮かべる。
「みんなお疲れ様。クフフ、とってもいい写真が撮れたよ。現像したら、そうだね、ここ聖王教会に送るから。それまでお楽しみって事で」
グロリアが差しだしてきた右手の意味を察して、わたし達は握手に応えていく。
「さて、そろそろ帰らないと。今日はホントにありがとね。すごく楽しかった。またどこかでアタシを見かけたら、声をかけてくれると嬉しいな」
ヴィヴィオとコロナが「こちらこそありがとうございました」「すごく楽しかったです」と感謝。イクスが「グロリアさんはこれからどちらへ?」と訊ねると、グロリアは「西部行って南部、東部、最後に首都と回ってから次元港って予定」って答えた。ミッドチルダの一周旅行みたいな感じだね。ん? 次元港ということは、グロリアはミッドの人間じゃないんだ。
「そうそう。これ訊いとかないと。今年のインターミドルにはみんな出るの?」
「「「「「もちろんですっ♪」」」」」
「わたしはまだ決めてないかな」
ルーテシアとヴィヴィオとコロナとリオとアインハルトは即答。みんなはそのために毎日トレーニングを欠かしてないし。前回よりもっと上の成績を目指してる。
わたしは未だに悩んでる。ルーテシアとぶつかるのが嫌なんだよね。トレーニング旅行でヴィヴィオ達がカルナージに訪れた際の陸戦試合の時は、試合って形だからちゃんと戦うけど、大会のような本気の戦いとなるとどうも気が引ける。ルーテシアは気にしないって言ってるんだけどね。
「わたしは出ないと思います。わたしは医療系を専攻してますから、スタイルが戦闘向きではないので」
イクスは攻撃系の魔法はあまり習得してない。治癒魔法を主とした補助型だ。目標は、現代の医学じゃ治せないと言われた自分を治したシャルロッテ。でもあれは魔術だから、その境地にまでたどり着けないって事は解ってるみたい。それでも少しでもシャルロッテに近づきたいって話を以前聞いた。それが恩返しとも。シャルロッテがそれを聞いたら、やっぱり喜ぶだろうな~。
「そっか。応援してるから頑張ってね。それじゃ、バイバイ♪」
わたし達が見送る中、グロリアは大きく両腕をブンブン振りながら、去っていった。
「んんーーっ。撮影大会がこんなに長引くなんて思わなかったね~」
コロナが背伸びしつつ、きっとみんなが思ってる事を代弁してくれた。ホント夕方になるまで付き合う事になるなんて思いもしなかった。そこでふとヴィヴィオが時刻を確認。
「もうこんな時間・・・」
「もうちょっと遊んでいたかったけど、もう帰らないと」
「そうですね。残念ですけど。でもとても楽しかったです」
「うんっ。すごく面白かった♪」
コロナとリオとアインハルトは時間的にもそろそろ帰らないといけないみたい。
「コロナ様、アインハルト様、リオ様は僕が車でお送りします。そして、陛下とルーテシア様とレヴィ様は・・・」
「私がお送りいたします」
グロリアと入れ違いで来たオットーとディード。二人がそれぞれ車で家まで送ってくれる事になった。
駐車してある車の元まで一緒に行って、
「じゃあアインハルトさん、リオ、コロナ。また明日」
「はい。ヴィヴィオさん、ルーテシアさん、レヴィさん。ごきげんよう」
「またね、ヴィヴィオ、ルーちゃん、レヴィちゃん」
「バイバーイ♪」
「ディード。陛下達の事は任せた」
オットーの運転する車が見えなくなるまで見送る。遅れてわたし達もヴィヴィオの家に向かう事になった。そう言えば高町家に訪れるのって随分久しぶりかも。
「ただいま~~~っ♪」
「「お邪魔しま~~~す♪」」
高町家に着いた時には陽も暮れて、すぐさま夕食の準備に取り掛かる。
「食材はなのはママ達が買い込んでくれたから好きに使って良いって」
「了解♪ それじゃなに作る?」
「それぞれの得意料理で良いんじゃない?」
わたしはそう提案。三人で話し合った結果、種類はオムライス一点。だけど味付けは三人バラバラで、ってことになった。一度に三つの味を堪能できるって寸法なのだ。
「わたしは普通のオムライスなら作れるけど」
「じゃあわたしはバターライスのオムレツを作ろっかな」
ヴィヴィオはノーマル(チキンライスだね)。ルーテシアはバターライス(ちょい手抜き感)の奴。
んー、ならわたしは・・・・よし、いっちょアレを作ってみますか。わたしはヴィヴィオに「カレー粉ってある?」って訊いて、ヴィヴィオに場所を教えてもらう。
「レヴィ、まさか・・・アレ作るの・・・?」
「うん、そのまさか。カレー、チャーハン、オムライス。わたしの好きなご飯を一緒くたにした伝説級の宝具。その名もドライカレーオムレツ。意中のあの子のハートを狙い撃ち♪ 」
右手で銃をつくって、ルーテシアの胸にドッキューン☆
カロリーだとかそんなん気にしな~い。だって毎日体を動かしているしね。好きなモノは好きなんだから。というわけで、それぞれ作るオムライスを決定した事で調理開始。黙々と、時には雑談しながら作ってると、ピピピ、ってコール音が鳴る。
「あ、なのはママからだ」
展開されたモニターに表示されているのはなのはさんの名前。ヴィヴィオがコールを受けて通信を繋ぐ。
『ヴィヴィオ~♪ ちょっと気になって連絡しちゃった☆』
教導官の制服を着たなのはさん。仕事が終わったばかりみたい。
「こっちは大丈夫だよ、なのはママ。今ね、ルールーとレヴィと一緒に晩ご飯作ってるの」
調理中の鍋とかを見て、なのはさんは『そっか。今日はカレー?』って微笑む。わたしの料理を見てそう推察するけど惜しいです。
「あ、レヴィがね。えっと、ドライカレーオムレツ?っていうのを作ってるの」
『おお、それはまたすごい。私は食べたことないけど美味しいってよく聞くよ』
なんと。わたしと同じ境地に立っている人がすでに居たなんて。ヴィヴィオとなのはさんのほのぼのした会話を聴いていると、モニター越しから二つの声が漏れてきた。なのはさんが『フェイトちゃん、ルシル君。お疲れ~♪』って、その声の主に労いをの言葉を掛ける。
「フェイトママとルシルパパもそこにいるの?」
なのはさんが『いるよ~』と言うと、なのはさんの両隣りからひょっこり顔を出すフェイトさんとルシリオン。ヴィヴィオの表情がパッと明るくなる。まずフェイトさんが『ごめんね、ヴィヴィオ。今日は一緒に居られなくて』って手を合わせて謝った。
「ううん。お仕事だからしょうがないよ。あ、ニュース観たよ。インタビューのやつ。フェイトママもルシルパパもキリッてしててカッコ良かった♪」
『ありがとう、ヴィヴィオ。ほら、ルシルも』
『ああ。ごめんな、ヴィヴィオ。さっさと仕事を片付けて帰るから』
「うん、気にしないで。ルールーとレヴィが一緒に居てくれるから平気。あ、そうだ。ルシルパパ、アインハルトさんの事憶えてる?」
『もちろんだ。ヴィヴィオの大切な友人の事を忘れるわけがない。それでヴィヴィオ。その、アインハルトがどうかしたのか?』
「えっと、アインハルトさんが一度ルシルパパと手合わせしてみたいって。だから勝手になんだけど、次のカルナージでのオフトレツアーでならきっと戦えるよって約束しちゃったの。ごめんなさい」
ヴィヴィオが申し訳なさそうに謝る。モニターに映るなのはさん達が顔を見合わせて、ニッコリ笑った。
『そうか。魔導師の私で期待に応えられるか判らないが、その時は手合わせを願おう』
『『よかったね、ヴィヴィオ』』
怒られるかもって俯いてたヴィヴィオが顔を上げて、微笑んでるなのはさん達を見る。
『その次のオフトレツアーにちゃんと参加できるように、仕事を溜めこまないようにしないとな』
『そうだね。じゃあルシル。こっちのデータ処理をお願いね♪』
こっちからは見えない、フェイトさんが表示したデータを見たルシリオンが硬直した。なのはさんが『ルシル君?』って声を掛けると、『あははははは』ってちょっと壊れた感の笑い声を上げた。フェイトさんも『やっぱりそうなるよね』って嘆息交じりの苦笑い。どうやらわたしとルーテシアがこっちに居る間は逢えないみたいだ。
『じゃあヴィヴィオ。なのはママ達はちょっと仕事の話があるから、今日はこれでバイバイ。ルーテシア、レヴィ。ヴィヴィオのことお願いね』
「うんっ。お仕事頑張ってね、なのはママ、フェイトママ、ルシルパパ」
「任せて♪ わたしとレヴィが居る限り、ヴィヴィオの心配は要らないから」
なのはさん達とヴィヴィオとルーテシアが手を振る。ここでわたしは「ルシリオン。今日、ちょっと気になる事があったから後で連絡していい?」って訊ねる。
『ん? ああ、判った。私一人の時がいいなら0時以降に連絡入れてくれ』
「0時以降ね、判った」
念のために、グロリアの事を訊いてみよう。わたしから見れば一般人なんだけど、十字架のアクセサリーの事がどうも引っかかる。思い過ごし、杞憂ならいいんだけど。みんなの視線がちょっと痛いけど、グロリアの無実がハッキリするまでは言えない。
†††Sideレヴィ⇒ルシル†††
本局の局員寮に用意してもらっている私の部屋で、レヴィから話を聴いていた。フェイトとなのはに先程まで隠し事はダメって散々説教を喰らったが、レヴィが私に話となるとどう考えても“界律”関係と思えてしまう。だから何とか誤魔化す・・・ことは出来ず、まず話を聴いてから教えると誓わされた。
「グロリア・ホド・アーレンヴォール? それは何かのギャグか何かか?」
『どういうこと?』
モニターに映るレヴィが首を傾げる。
「いいか。グロリア、ホド、アーレン、ヴォール。そのどれもが“栄光”を意味する単語だ」
『栄光・・・? あっ! アポリュオンのナンバーⅩⅢ・栄光グローリアム!!』
レヴィはすぐにしまったって顔をして口を噤んだ。どうやらヴィヴィオとルーテシアはもう眠ってしまっているようだ。レヴィは大きな声を出さないように注意しながら話を進めてくる。
『じゃあ今日会ったグロリアって、グローリアムだったっていうの?』
「いや、それはないな」
『即答って。何で断言できるのルシリオン』
何でも何も、テルミナス撃破からセレスに召喚されるまでの約三千年。その間に“絶対殲滅対象アポリュオン”と色々あったからなんだが。とりあえず今言える事を言っておこうか。
「現在、アポリュオンの十六座席に栄光の座がないからだ。そもそも十六座席ですらない。今は十三座席となり、ずっと空席だった栄光の座は消えた。栄光グローリアムの他には空虚ウァーニタース、威厳ディグニタースが消えている。それに、夢想ソウニウムは革命レースノワエへ、支配インペリオールムは恩寵グラーティアへ、覚醒ススキターティオーは叡智スキエンティア、という風に名を変えている」
『・・・・そ、それだけ消滅させてきたって事、だよね・・・』
「ああ。滅ぼして滅ぼして滅ぼし続けた結果だ。まだ湧いてくるがな。とは言え、そのグロリアという女が、ピンポイントで守護神の聖典と同じデザインの十字架を持っていたのは確かに気になるな」
レヴィの話だと、アークの白銀マルタ、ティネウルヌスの黄金ロレーヌ、雪姫の翡翠ペトロ、プリンス・オブ・レディエンスの燈黄ギリシャ、フヴェルトヴァリスの鋼ロシアを持っていたらしい。
同じデザインだけならそう深く考える必要のない問題だ。なぜなら十字架のデザインは数が限られているからだ。問題は、色がそれぞれの聖典と同じ配色ということだ。偶然として片付けるには看過できない確率。
しかし、
「私たちにはどうする事も出来ない。私はもう守護神ではなく、レヴィも殲滅対象じゃない。もしグロリアが本当にアポリュオンの一体、もしくは操られている一般人だとしても手は出せん。私たちはグロリアに対抗する術を持ち合わせていないからだ」
すでに人の身である私には神秘はない。レヴィも“テスタメント事件”以来、神秘を扱う事が出来なくなった。お互いに完全な人間になったという事だ。神秘を打倒するにはそれ以上の神秘を以って当たるべし。この真理は永遠だ。だからこの件には手を出せない。
『そう、だよね・・・。本当に本当の偶然ならいいんだけど』
「ああ、そうだな。そう願うしかない」
もし奇跡のような偶然なら嬉しいんだが。ま、本当の“アポリュオン”と関係している存在なら、“界律の守護神テスタメント”の誰かが動く。その守護神に任せておけばいい。
『話は大体こんなところ』
「教えてくれてありがとう、レヴィ。あまり役に立てなくてすまないが」
『ううん。聴いてもらっただけで十分。・・・心配ないよね? もしものときは、守護神の誰かが来てくれるよね?』
「ああ。アポリュオンの現れるところに界律の守護神あり、だ」
レヴィは少し気持ちが楽になったのか、安堵した微笑を浮かべる。私は最後に「レヴィ。明日明後日とヴィヴィオの事、頼んだ」とお願いしておく。レヴィは『任せておいて。悪い虫がつかないように見とくから』と親指をグッと立てた。それから二人で、おやすみ、と挨拶を交わし通信を切った。
「魔力も感じなければ神秘も感じない、か。ただの偶然で十字架を持っていた、ということであればいいんだが」
モヤモヤ感に気味の悪さを抱いたが、それ以上にデータ処理の疲労から来る眠気の方が強い。フラフラとベッドに倒れ込み、私の意識は数秒とせずに途切れた。
†◦―◦―◦↓????↓◦―◦―◦†
レヴィルー
「・・・・・」
ルーテシア
「人を呪わば穴二つ・・・。ルシリオンさんの言ってた通りになったね」
レヴィ
ビクッ「た、確かに大恥をかいた・・・。藁人形に釘刺したから? たったそれだけで、呪いが掛かるっていうの・・・?」
ルシル
「下着姿を衆目にさらすとは・・・哀れだな」
レヴィ
「ぅぐ! ベ、別に男の人に見られたわけじゃないもん!」
ルーテシア
「でも見られた事には変わりないよね」
レヴィ
「がはっ。ル、ルシリオン・・・もうこれで大丈夫だよね?
呪いはこれでもう起こらないよね?(泣)今度は素っ裸ってことはないよね?」
ルシル
「・・・・たぶん大丈夫だろ?」
レヴィ
「たぶんって言わないでぇぇぇーーーーーっ!!」
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