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万華鏡

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第七十一話 おとそその二

「何時でもお酒はビールもあってね」
「ううん、いいわね」
「八条グループってお供え凄いのよ」
「伊達に世界的な企業グループじゃないわね」
「元々あそこ財閥だしね」
 維新の時から出て来た家だというのだ。
「三井三菱に並ぶ」
「そうだったわね、あそこって」
「財閥解体にも遭ったけれど」
 それでもだというのだ、企業としては残ってというのだ。
「今でも世界的な企業グループだから」
「お供えも凄いのね」
「やっぱり大物は違うわ」 
 八条グループ程の巨大企業グループになると、というのだ。
「お供えも災害の時の寄付も凄いから」
「ああ、地震とかの時」
 このことは今ここにいる五人全員にとって他人事ではなかった。何しろ阪神大震災は彼女達が生まれる前のこととはいえ神戸市民に忘れられない傷となっているからだ。
「凄かったのよね、寄付が」
「八条グループ自身もかなり被害を被ったけれど」
 その神戸に本拠地があるからだ、大きな被害を受けない筈がない。
「それでもね」
「寄付が凄かったのね」
「ええ、全世界の傘下企業を動員してね」
「寄付してくれたのね」
「あそこは気前がいいのよ」
 八条グループは、というのだ。
「破格でね」
「破格なのね」
「そう、だからうちもお酒には困ってないの」
 そうだというのだ。
「いつもね」
「成程ね」
「だからどんどん飲んで」
 景子自身も飲みながら皆に言う。
「元旦だしね」
「いや、アルコール中毒になるかも」
 彩夏がその赤ら顔で言ってきた。
「これだけ飲んだら」
「それには気をつけないとね」 
 かく言う里香もその顔は真っ赤だ、そのうえでの言葉だ。
「急性アルコール中毒にはね」
「そうよね、飲み過ぎにはね」
「ええ、けれどね」
 それでもだと言いながらだ、里香はというと。
 自分で杯に酒を入れて飲む、そして言うのだった。
「本当に美味しいわ、お酒って」
「里香ちゃんも飲むわね」
「それもかなり」
「お酒は百薬の長だから」
 一応は医学部志望らしい言葉ではある。
「だからね」
「飲むのね」
「そうなのね」
「ええ、そうなの」
 応えながらも飲む里香だった。
「こうしてね」
「ううん、それにしても」
 ここでだ、琴乃も飲みつつこんなことを言った。
「本当にこのお酒美味しいわね」
「一級酒だからね」
 景子がその琴乃に答えた。
「だから美味しいのも当然よ」
「一級酒なの」
「そう、特級もあるけれど」
「そっちは?」
「今全部飲んじゃって」
 それでだというのだ。
「ないの、御免ね」
「全部飲んだの」
「そうなの、お家にあった特級酒はね」
 全て飲んでしまったというのだ。 
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