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とある物語の傍観者だった者

作者:パズル男
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20話:C級映画

 
前書き
B級映画じゃなくC級映画でしたね。前話も修正しときました 

 
 8月の某日。

 決戦の映画館前にて、時刻はジャスト午前9時――――――

「――――――超おはようございます。ちゃんと逃げず超時間通りに来ましたか、超偉いですね超O2WLさん。私とデートするのがそんなに超楽しみだったんですか、近簿超ロリコンさん。さあ、超中に入りますよ!!」

 ………。

 もう帰りたい。

「ひゃ、ひゃほーーーっい!!」

 でも、今日精一杯のテンションで中へ入っていく。もうヤケクソだ。

 館内は夏休みだというのに平日だからなのか、お客さんは数人しかいなかった。

 流石だな、C級映画館。

「あ、子供1枚にロリコン1枚超ください」

「子供は500円、ロリコンは特別価格で500円、合計1000円ちょうだいしまーすwwww」

「………」

 2人分のチケットを買う。

 そこは普通に学生料金とかでいいじゃね?と思うが、学生料金より安いので甘んじてロリコンでいいよ。我慢だ。

 つーか、この子、子供料金でよく買えたな……まぁJSでも見えなくもないか? 本当はJSなのかもしれない。

「ほら、ぼさっとしてないで超行きますよー」

 映画館の定番と言ったらポップコーンとか買わなきゃな。

 あの子はもう特大サイズを買っていた。あと、ジュースも特大サイズ、本気で夜まで居座るつもりだ!??

「つーか、オレが料金払うよ…いくら??」

「いえいえ、ここは私が全て払いますよ、奢らせてください。元はといえば、こんなお子様な私の誘いに付き合ってくださったんです、だからその超お礼ですよ」

「お、お前ってやつは……」

 ええ子やええ子! ウチめっちゃ好きやわ!!

「まぁどうせ超O2WLさんは見るからに貧相で超貧乏学生でしょう。だから、ここは超稼いでいるこの絹旗に任せてください」

 前言撤回。

 生意気なガキだ。

 しかし、カワイイから許す!!

「つーかお前、絹旗っていうんだな? 苗字??」

 そう、まだろくに自己紹介をしてもらっていない。

 向うはオレのことをネットで知っているらしいが、オレは今初めてやっと知った。

「はい、絹旗は苗字です。ちなみに名前は最愛。もあい、とも読めますけど、さいあい。絹旗最愛、それが私の名です、超覚えておいてください」

 そして、自己紹介終了のお知らせ。

 なんか、虚しい。

「ところで超絹旗」

「なんですか、超ロリコン」

 ………。

 オレもふざけたから我慢しよう。イーブンだ。

「映画は何を観るんだい??」

 超絹旗に全てを任せっぱなしのオレ。

 ちょっとは期待してんだぜ? C級映画とやらに。

「朝の部に超観るのはこれ、【世界は義妹で満ち溢れている】です」

「あ、あっそう……」

 なんか、ラノベのタイトルみたいだ。さらに謎の義妹推しだ。

 もういいんだよ、義妹推しは。

 何なの、超絹旗もオレの義妹になりたいっていう一種のアプローチなの? いや、いやちょっと自意識過剰なだけかもしれないが。

 何なの、神様はオレに何を試そうとしているのだ……いや、自惚れるのはやめよう。

 もう何も言うまい。

 人もまばらだから、好きな席に移動する。

 真ん中より少し上の席。オレと超絹旗は席を一つ空けて座る。真ん中に特大ポップコーンを置くために。

 なんか、ポップコーンはもう3分の1は減っていた。いつの間に……

「あん、だめよ、こんなところで」

「ふひひ、ちょっとぐらいいいじゃないか」

 なんか、いちゃつくカップルがいるな。

「ちょ、ちょっとっっ。他のお客さんもいるし子供もいるんだし恥ずかしいからやめてよ」

「ふひひ、だったら聞かせてやりゃいいじゃないか。君が奏でる卑猥なワルツを」

「うひっ、うほっ、おほっ、あひっ、あひーっ、あひょひょひょーーー……っ!!?」

「「………」」

 最悪のワルツだ。オレと超絹旗は耳を塞いだ。

 そして、なんやかんやと上映時間になり、オレは彼女に「寝たら超叩き起こしますからね」と上映前に警告され必死に映画観るのであった。

 内容は、次から次へと自称・義妹と名乗る少女達がお兄ちゃんの前に現れ、次から次へと求愛してくるがお兄ちゃんはこれから魔王討伐で旅に出かけなければならないから、義妹たちはお兄ちゃんの帰りを待つ間に誰が真の義妹なのか決闘を始める一種のバトルロワイヤルだった。
 まぁ、そんな自称・義妹な彼女等の心境とは裏腹に主人公なお兄ちゃんは旅でさらに義妹を増やし、バトルロワイヤルをしている所に送りこむという鬼畜さを見せレベルを着々と上げていく。
 魔王城に辿り着いたお兄ちゃんは魔王と対峙し、見事魔王を打ち負かした。これでお兄ちゃんが最強。この世界はお兄ちゃんの支配下におかれた。この世界の女たちはお兄ちゃんのもの。
 お兄ちゃんの恐怖政治によりお兄ちゃんより年下の少女たちはお兄ちゃんの義妹になるようにと命令され、未だ決着の着かないバトルロワイヤルへ義妹たちを送りこみ勝負のつかないくだらない勝負を繰り広げてさらにカオスになった。
 めでたしめでたし……という内容。

 さすがはC級映画だ、誰がこんな糞みたいな内容を考えたんだ、ちょっと監督出てこいよと文句を訴えれるレベルだった。

「兄貴ー、私この映画感動したぞー」

「にゃー、皆健気で良い子ばかりだったにゃー」

 とか聞こえたけど無視しよう。

 土御門兄妹、来ていたか……アレで感動するとか、こいつらアホだ。

 映画はイミフだし、後ろの方からは最悪のワルツが奏でられているし、土御門たちはアホだし、何一つ楽しめていないオレ。ふと隣の少女を窺うと感動して泣いていた!??

「超涙が止まりません」 

 オレも涙が止まらないよ。違う意味で。

「さて、この感動を引き継ぎ、昼の部を見ましょうか」

「……御意」

 昼の部は朝の部よりも地獄が待っていた。

 6時間耐久映画……

 トイレ休憩を済ませばすぐ始まるのであった。お昼ごはん食べる時間もありゃしない。

「「………」」

 タイトルは【好きだっちゃ】

 ……アウトだろ、これ。

 さっきのがラブコメならお次は純粋な恋愛ものだそうだ。

 ただ、内容が最悪で確かに耐久映画だった。少年少女がいろんなシチュエーションで好きというだけ……と恐ろしく眠たくなる。
 学校の教室で、授業中も、休憩時間も放課後も、校舎の裏で、トイレの中で、保健室で、屋上で、放送室で生放送とか、街中で、いろんな店で、カラオケで自分の番になり愛を叫び、家に帰宅しても、実は2人は義兄妹だったりまた義妹推しかよと思ったり、夕飯を食べている時も、お風呂入っている時も、ハミガキしている時も、トイレしている時も、寝る時も、寝不足になっても、朝起きても、朝食食べている時も、隣で両親がいちゃついていたら怒る自己中な2人だけども、また一日が始まり学校へ登校する時もずっと「好き」と言うだけ……と、まぁ微笑ましい限りでリア充爆破しろと言いたいけども。

 まだ1時間しか経ってない!!

 退屈すぎて、死んでしまいそう。いっそのこと殺してくれ!!

 残り5時間、遊園地やら水族館やら動物園やら海やら山やら川やら旅行やら宇宙やらいろんな場所で愛を伝えていただけども。

「うぅっ、本当に愛し合ってるんですね、この超義兄妹さん達は……ッ!!」

「………」

 またしても隣では超絹旗が超号泣していた。

「兄貴ー、私たちだってあの義兄妹に負けてなんかいやしないぞー」

「そうだにゃー、俺たちの愛が最強だにゃー」

 これはスルーしよう。

「ふひひ、ここがええんか? ここが気持ち良いんか?? ウサギちゃん」

「あひょ?? あひょひょひょひょひょひょひょひょーーー……っ!!」

 これはスルーできない。完全に女がラリってる……

 もうオレは何事にも動じない精神を身につけたつもりだったが、まだまだ修行が足りないらしい。土御門兄妹はともかく、後ろの奴らはこの映画館から追い出したい気持ちで一杯だった。

「いやー、中々の超名作でしたね」

「……そうだな」

 オレの顔はやつれているだろうな。それが自分でも分かるくらいげっそりしているぞ。

「さて、夜の部まで少し時間がありますんで、超晩御飯を食べておきましょう」

 やっと飯にありつけれるというこの悦び!

 オレたちは一旦映画館を出て、近くにあったファミレスで腹を満たしてやったわ。

「超近簿、ドリンクバーのおかわり、何か入れてきましょうか??」

「だったらオレが入れてくるよ、超絹旗は何がいい?」

 最早呼び捨てで呼べる仲にまでなっていた!?

「じゃ、ヤシの実サイダー超よろしくです」

「了解」

 などと、オレはドリンクバーを入れに席を立った。

 そして、最悪の展開が待っていた。

「ちょっww近簿さんwwO2WLさんww偶然ですね、こんばんわwwww」

「ほ、ほんと、偶然だな、こんばんわ……」

 なんでこのタイミングで会うか!!?

「O2WLさんww私見ちゃいましたよwwまた知らないロリな女の子とデートですかwwww」

「ま、まぁ、否定はしないけど……」

「うはっwwほんとロリコンですねww私たちにも手を出し、他の女の子にも手を出すとか浮気の天才ですねナニしちゃってんですかwwどこまで変態になれば気が済むんですかww私、本気で怒りますよwwww」

「え、なんかごめん……」

 とりあえず謝っておこうか……

「ところで近簿さん」

「は、はい」

 なんか空気が変わった。佐天さんの雰囲気が変わった。

「最近、御坂さんの様子がおかしいのですが、何か心当たりありませんか??」

「み、美琴が? い、いや知らないな……」

 いきなり佐天さんにボディブローをかまされた気分だ。

 様子がおかしいというのはやっぱり「妹達」のことだろう、それをオレは知っているために動揺をしてしまった。

 今までそのことについては触れず、目を逸らしていたのに……精神的ダメージは大きいぞ!!

 オレを疑いの眼差しをかける佐天さんがマジぱねぇ。

「もしもですが、もしも、近簿さんが何かを隠し御坂さんを苦しめているんだったら私、絶対に許しませんからね」

 そんなこと言われても非常に困る。

 でも、言い訳できないオレ。ロリコンんだから? そうロリコンだから。

「まぁ、もし何かわかりましたら教えてくださいね……はい解散wwww」

「………」

 佐天さんはどうもその掛け声が気に入ったらしい。

 じゃあ解散!

 オレはドリンクバーのおかわりを入れて席に戻った。

「今の超知り合いですか? 超彼女ですか?? 私と超デートしてるというのに他の女と超楽しそうにお喋りしてるとか超嫉妬してしまうじゃないですか、超最悪の気分ですよ」

「オレも最悪の気分だよバカヤロウ……」

 せっかく忘れようとしていたのに。

 今日は超絹旗と超C級映画を観て嫌なことから忘れようとしたのに。

 先日、それらしき問題な人物と出会ってしまって、あれから何も考えないようにしていたというのにな……なんでここで美琴のことを思い出さなきゃならないんだよ……

 もう一回考えてしまうと駄目だ。

 嫌な汗が噴出す。

 隣でぶつぶつ文句をいうパンチがもの凄い脅威な少女の存在も忘れてしまうほどに考えこんでしまう。

 オレは知っている。御坂美琴が今どういう状況で1人苦しんでいるのかを……

 オレは知っている。彼女にとっての地獄の実験を止めるため、1人で戦っていることを……

 オレは知っている。『妹達(シスターズ)』と呼ばれる御坂美琴のDNAから作られた2万のクローン人間たちが、レベル5第1位の一方通行(アクセラレーター)をレベル6にするための実験で殺戮されていることを…………。

 オレはそれを知っているけども、目を背けた。

 オレはそんな残酷な実験を知って苦しむ少女を知っているけども、助けない。

 はっ、そうだよ、オレは平穏を望むサイテー野郎だ。だから、オレは彼女を見捨てるんだ。

 ……それに、彼女は助かる。救われる。

 助からない命もたくさんある。一万ほどの少女たちは犠牲になるだろう。

 美琴にもオレにもこの物語の主人公でも助けられない命があるんだ。

 でも、それでもこの物語は、事件は解決するんだ。

 オレじゃなく、カミやんという本物のヒーローによってだ。

 だから、オレは頑張らない。命もかけない。

「さあ、お口直しに超最後の映画です」

 だから、オレはこうやって超絹旗とC級映画を観続けるんだ。

「超近簿、夜の部のC級映画はここ学園都市を舞台にした超アニメだそうですよ」

「え、なんだって??」

 ついにオレも難聴スキルが身についたか。

 嫌なワードを聞くと発動する便利な能力である。

「私、今回始めて観るので超楽しみなんです。タイトルは【とある魔術の禁書目録~妹達編~】ですよ」

「……え、なんだって??」

 もう超不吉なタイトル名だった。

 誰だよ、これ仕組んだ奴。ぶっ飛ばしてやる。

 もう、やだー。 
 

 
後書き
次どうしよっかなー……

できるかぎり頑張ります 
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