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万華鏡

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第六十九話 十二月になってその一

              第六十九話  十二月になって
 十二月になった、まずは何があるとかというと。 
 テストだった、しかしそのテストはあっさりと終わってだ。
 琴乃はテスト開けすぐにだ、プラネッツの五人でテスト打ち上げ記念のカラオケパーティーの場でこんなことを言った。場所はスタープラチナだ。
「いや、今年最大の障害がね」
「終わったわね」
「これでね」
「ええ、終わったわ」
 マイク片手にほっとしていた、左手にはビールの大ジョッキがある。
「だからこうしてね」
「歌って飲んで」
「そうしてよね」
「そうしよう、今はね」
 こう言うのだった、共にいる四人に。
「何か店員さん今日もぶすっとしてたけれど」
「助っ人の交渉難航してるから」
 里香が店員が不機嫌な理由を指摘した。
「だからね」
「何かあのチームそういうこと多いわね」
「ちょっといい選手すぐに巨人に獲られるから」
「クルーンとか村田とか」
「その助っ人も狙ってるのよ」
 人類普遍の敵である憎むべき読売ジャイアンツがというのだ。
「だからね」
「店員さん不機嫌なのね」
「相変わらずね」
「相変わらずっていうのがね」
 もうこれがだった。
「横浜よね」
「そうなってるわね」
「シーズン中は連敗続きで」
「ストーブシーズンもね」
 つまり今もである。
「何かとね」
「こうした騒動起こって」
「気が休まる暇もないわよね、あのチームは」
「だからか」
「ああして今も」
 憮然とした顔でいるというのだ、店のカウンターにおいてベイスターズの帽子を被り
ベイスターズグッズに囲まれながらも。
 それでだ、琴乃はこうも言った。
「とにかくね、あのチームのファンは阪神ファンもだけれど」
「茨ね」
「困難の道ね」
「苦難の道って言ったら北朝鮮だけれどね」
 世襲制の独裁者達の失政による苦難の道である。
「それでもね」
「そうよね、ちょっとね」
「ベイスターズはちょっとね」
「あまりにもね」
「お家騒動というか選手が出ること多いよな」
「毎年みたいにね」
「折角いい選手が出て来ても」
 それでもだというのだ、琴乃も。
「ああして騒動の後出るとね」
「後味悪くて」
「見ている方も」
「横浜ファンじゃなくても嫌になるわ」
 ここにいる五人は全員阪神ファンだから関係ないか敵チームのことなので喜ばしい筈だ、だがそれでもなのだ。
「あまり嫌いなチームじゃないからね」
「そうそう、巨人じゃないから」
「巨人じゃないとね」
 四人も特に、という口調だ。
「あまりね」
「不祥事とか起こって欲しくないから」
「素直に送りたいからな」
「巨人以外のチームはね」
「横浜はちょっとフロントに問題があるの?」
 こうも言う琴乃だった。 
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