dark of exorcist ~穢れた聖職者~
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第17話「クリス・フランペア 乱入者」
「ヴオオオォォォオオォオォオオ!!!」
バフォメットが咆哮する。
「ッ!?」
2人は咄嗟に耳を塞ぐ。
ビリビリと空気が激しく振動し、周りの物質を吹き飛ばしかねないほどの音量が鼓膜を襲う。
耳を塞いでいても、お構い無しに大音量が響く。
10秒ほどでバフォメットは咆哮を止めた。
両手を耳から離すと、不愉快な耳鳴りが鳴った。
「ッ……何です? いきなり………」
「いやぁ~驚いたねぇ~」
クリスは耳鳴りを振り払うように首を左右に振り、フランは驚きながらもニコニコしている。
「…………!! フランさん! 全方位から悪魔が来ます!」
クリスが突然フランに向かって叫んだ。
フランは笑顔を消し、周囲を見回し始めた。
フランの視界の中で、複数の影が動いた。
目を凝らして見ると、ビルからビルを複数の下位悪魔が跳び回っている。
「確かバフォメットの咆哮には、下位悪魔を呼び寄せる力がありましたよね?」
「そうだっけ~? でもねぇ~、やることは同じでしょ~」
「…………………そうですね」
何体が咆哮に反応して来るのかは分からない。
しかし、フランの言う通りやることは変わらない。
悪魔の討伐。
クリスは拳を構え、フランは袖から仕込み刃を出した。
そして、バフォメットの咆哮に反応して来た6体のゴブリンが、2人取り囲むように着地した。
「ケケケケケケケ…………」
「ギャガガガガガァ!!」
ゴブリン達は汚ない笑みを浮かべ、涎を垂らして獲物を見た。
「あぁ、クソ。やっぱこうなってやがったか」
2人の後ろから声が聞こえた。それと同時に………
バァン!!
拳銃より大きな銃声が鳴り響いた。
銃声と同時に……ゴブリンの首が消失した。
「……!?」
クリスは驚き、銃声が聞こえた方に振り向いた。
「………あなたは、さっきの……?」
そこに立っていたのは、先程廃ビルから出ていってもらった不良達のリーダー格。
黒と金のリーゼントが特徴の若者だった。
「おや~意外なところで再会したねぇ~」
「まったくだな………あぁ、やっぱこの髪形うぜぇ! 邪魔だ!」
若者は苛立ち始め、リーゼントを片手で崩し始めた。
リーゼントはあっという間に崩れ、黒と金の長髪になった。
「? どこかで見たことあるような………」
「えぇ~、クリスちゃん忘れたの~? 大聖堂で隣の部屋だったじゃんか~」
クリスは記憶を遡り、ようやく若者の正体を思い出す。
「…………ああぁ!! ブライアンさん!?」
「やっと思い出したか、クリス」
黒と金の長髪の若者の名前は「ブライアン・バルバーニー」。
アリシアの兄で、アイリスに銃の扱いを教えた人物。
"ルークス・ソーリエ"の中ではアルバートの次に所属期間が長い。
しかし放浪癖があるため、他のメンバーから忘れられることが多い。
「さて、久々に会ったけど話してる暇はなさそうだからよ。さっと終わらせようぜ」
そう言うと、ブライアンは右手に持っていた武器をゴブリン達に向ける。
ブライアンの武器は、M3というショットガンだ。
「グガガガァァ!!」
3体のゴブリンが同時にブライアンに襲いかかる。
残りの2体も、クリスとフランに襲いかかった。
バァン!!
再び銃声が鳴った。
正面にいたゴブリンの頭が吹き飛んだ。
素早くショットガンを右肩に担ぎ、噛みつこうと飛びかかって来たゴブリンを蹴り飛ばす。
同じように飛びかかって来たゴブリンの頭を掴み、クリスの方にぶん投げた。
「えっ……ちょっと!?」
いきなり飛んできたゴブリンを、クリスは咄嗟に蹴りブライアンに返した。
「グギャッ!?」
蹴られたゴブリンは真っ直ぐブライアンの方に飛ぶ。
ブライアンは担いでいたショットガンを、まるでバットのように持って構えている。
「ぅおら!!」
バギャッ
ショットガンのフルスイングはゴブリンの頭に命中し、ゴブリンの頭が砕けた。
そして、先程蹴り飛ばしたゴブリンに歩み寄り
「じゃあな、クソ野郎」
バァン!!
ゴブリンの頭を吹き飛ばした。
「パトリックちゃんみたいな豪快な戦い方するなぁ~」
いつの間にかゴブリンを切り刻んでいたフランが、ブライアンを見て感心していた。
「いきなりゴブリンを投げて寄越された僕は迷惑ですよ」
クリスは眉間にしわを寄せてブライアンを睨む。
その足元には、顔を殴り潰されたゴブリンが横たわっていた。
「悪い悪い、面倒くせえから任せようと思って」
全く反省の色を見せず言葉だけでクリスに謝る。
「グゥオオオオオオオオ!!!」
バフォメットが怒号を上げながら3人に襲いかかる。
「そういや、コイツ忘れてたな」
頭をボリボリ掻き、バフォメットにのんびりと歩み寄る。
直後、バフォメットの拳がブライアンの顔に近づく。
「遅えよ馬鹿」
バァン!!
銃声が鳴り、バフォメットの拳が砕けた。
「隙あり~」
バフォメットの後ろから、間の抜けた声が聞こえた。
声に気づいたバフォメットが振り返った瞬間………
「敵前でよそ見ですか?」
ドスッ
バフォメットの腹部を、クリスの抉るような鋭い右ストレートが直撃した。
「これで終わりさ~」
フランが仕込み刃を袖に戻す。
すると、バフォメットの頭が少しずつ斜めにずれていく。
「オオォ……………」
バフォメットが唸った数秒後、その頭は完全にずり落ちた。
「これで終わりですね」
「そうだねぇ~」
「はぁ、これでようやく俺も安心して放浪できる………」
ブライアンの言葉に、クリスは眉間にしわを寄せる。
「ブライアンさん、今度という今度は報告のために戻ってもらいますよ」
「やだよ、面倒くせ………痛でででで! 分かった! 戻るから耳引っ張んなって!!」
クリス・フランペアは、放浪癖のあるベテランの耳を引っ張りながら"ルークス・ソーリエ"に帰還した。
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