【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)
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17 女子力(魔法)の高い女性たちのお茶会 その二
「そうじゃ。エリー。
お主もここに住まぬか?」
そんなナーナ様の爆弾発言から喜劇の幕が上がる。
イイハナシダッタノニナー。
「はい?」
間の抜けた声をあげる私。
それを見て、楽しそうに笑うナーナ様とアクエリアス殿。
なお、私は王宮内の一室を住処にしているが、ここに住むというのは後宮に入れという意味だろう。間違いなく。
オウガバトルにはちゃんとそのエンディングまであったりする。
だから、私を含めて信者がいまだについていたりするのだ。
そのエンディングTHE PRIESTESS--女司祭長--エンドというのが、私が王妃としてトリスタン陛下を支える形になっている。
ナーナ様がいるからそのフラグは折ったつもりだったのだが。
「それ、私がトリスタン陛下の側室になれと言っているので?」
「当たり前であろうが。
お主がトリスタンと子を成せば、その子が侯爵となるので王室権力は飛躍的に強化されるからの」
なるほど。
色恋沙汰にも政治の影か。
「ナーナ様がばんばん子供作って、その子達に私の侯爵領あげればいいじゃないですか」
「なんと、お主ずっと独り身で過ごすつもりか?」
やばい。
退路をふさがれた。
こっちが気づいた時には、アクエリアス殿が追撃をしかける。
「一身に仕事に打ち込む姿勢は尊敬しますが、貴方を支える者がいればそれはずっと強化されると思うのです」
なんて言い返そうかと汗をかきながらお茶を飲むと、ナーナ様がその手を緩める。
後の話だが、もちろんそれは獲物である私を油断させる罠だったのだが。
「これ。アクエリアス。
堅苦しい事は言うでない。
まぁ、後宮に入らぬかと言っても、お主にはデスティン殿がいるからの。
からかってみたまでよ。許せ」
……………………はい?
「え?
は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!?」
私は立ち上がって思わず紅茶をこぼしてしまう。
というか、何で話がそんな方向に行く訳?
お、お、おちつけ。くーるになろう。
とりあえず紅茶を飲んでリラックス。
「だってお主等、この忙しい時に二日も開けて逢瀬を楽しんできたのであろう?
で、もう寝たのか?」
たまらず派手にお茶を吹き出す私。
笑い転げるナーナ様にアクエリアス殿。
本当に勘弁してほしい。
「エリーよ。
お茶は飲むものであって吹くものではないぞ」
「わかっています。
とはいえ、あまりにも荒唐無稽なので吹かざるにはいられなかったんです!」
涙目で抗議したが、女王様の顔は冗談を言う顔ではなく真面目モードになった。
その状況の変化に私がついていけない。
「エリーよ。
お主とデスティンが事を成した後、この国から去ろうというのはわかっておるのだ」
むせた私が真顔でナーナ女王を見てしまい、己の顔でバレた事を悟らざるをえない。
明らかにわざとらしいため息をついてナーナ女王が愚痴る。
「わからぬと思うていたか?
トリスタンも同じ事をして去っていったのだぞ」
あ、そういえばやっていたな。トリスタン陛下。
ラスボス倒して故郷に戻るエンド。
「お主らは、去る事で穏便に済んだと思うておるのだろうが、残された者の事を考えい!
わらわが、どれほど陛下に『行かないで』と言いたかった事か!!」
あの、ナーナ様。
ヒートアップするのはよろしいので、淑女にあるまじきテーブルぶったたきはおよしになられた方がよろしいかと。
ポーシャちゃん引いてるし。
落ち着いたのか手が痛かったのか、手に息を吐きかけながら、ナーナ様が話を続ける。
「トリスタンもわらわと同じ思いをすればいいと思わなかったと言えば嘘になる。
じゃが、わらわとて一国を差配した身。
功臣を無碍に去らせたと言われたくはない」
「……」
私は返す言葉がない。
返せる意思がない。
『帰りたい』という思いはあるが、それ以上にこの世界がどこか自分にとって現実ではないと思っているから。
伝説のオウガバトルにおけるエンディングは隠しステージクリアを除くと全部で12個ある。
これに敗亡、つまりゲームオーバーを入れた13の選択肢が私が選ばないといけない道だ。
私は、今までTHE WORLD--世界--エンドを目指していたのだが、それだと来るべきローディス教との対決で敗北する事が確定してしまう。
それは避けないといけないといろいろ弄り回した結果、別のエンディングの選択肢が出てきたという事なのだろう。
そのエンディングはTHE CHARIOT--戦車--エンドと呼ばれるもので、主人公が将軍となってこの国を支えるエンディングだ。
私の場合宰相なんだろうが、この際それは置いておいていい問題だ。
「真面目な話、私とデスティンがいなくなった方が王権安定しますよ」
ああゲームではここまでするかと感動したが、現実にあるならば何で作りやがったと罵倒したくなるTHE HANGEDMAN--吊るし人--エンドなんぞには絶対に行きたくない。
あれは革命成就の宴会時に主人公が暗殺されるという救いの無さで、その命令者と実行者がまた……
「お主等二人が居らずに、どうやって貴族層をまとめよと言うのじゃ?」
そうだった。
新生ゼノビア王国は旧ゼノビア王国以上の広大な領土を持つのに、革命の中核メンバーがほとんど居なくなるのだった。
それを防ぐ為に私が宰相として国の形を整備しているのだけど道はまだまだ遠い。
ロシュフォル教会との関係、カストラード王国をはじめとして新興独立国との外交関係、そして実際に国を運営する貴族層の早急な再編。
「そこは陛下とナーナ様とアクエリアス殿の三者で。
陛下とナーナ様は国王と王妃という関係で、アクエリアス殿は教皇という立場で内外を押さえられます。
ウォーレン殿は宮廷魔術師の地位に入れておけばいいでしょう。
問題は私とデスティンです。
この二人がいると陛下とナーナ様に集まった権力が分散して内乱の種になりかねません」
要するに、現在運営している私とデスティンが残る事それ自体が害なのだ。
そのあたりはナーナ様もわかっているらしくため息をついた。
「やはり荒れるか」
「はい」
トリスタン陛下とナーナ様の親政に移行すると反対層が私とデスティンを担ぎかねない。
多分、この後宮の争いですらナーナ様は押し込まれかねないほど、外様出身というナーナ様の経歴がマイナスに働いている。
ここで、空気を読んで口を開かなかったアクエリアスが口を挟む。
「それならば、デスティン殿に王になってもらって、その后にエリー殿がつけばよろしいので?」
「ちょ!おま……」
「なるほど。
我が祖国みたいな立ち居地か。
それもありじゃな」
私が黙り、ナーナ様が手を打ったその理由は、政治的に美味しいからだ。
無事にクリアした場合、新生ゼノビア王国は広大な領土を得る事になるが、既に現状ですら手が足りていないのだ。
ハイランド王国はこの間連れてきたラウニィーを女王にすえる事で丸投げが可能、ドヌーブ王国も現在石像になっているサラディンを据えればいい。
問題はホーライ王国とオファイス王国で、これにマラノの都を加えた三つを誰が統治するかで火種が出かねないのだ。
オファイス王国はマラノの都と隣接しており、関係が深いハイランド王国に渡すとハイランドの力が強すぎる。
ここを直轄地とした場合、僻地になってしまうホーライ王国に手が回らない。
で、デスティンをホーライ王位につけて管理させるというのは悪い話ではない嫌がるだろうけど。
「決まりじゃな。
何ならば、トリスタンに掛け合って勅命にしてもいいぞ」
楽しそうに笑うナーナ様に私が嫌味を切り返す。
その条件ができるならば、私もあきらめざるを得ない。
「そうなると、また五王国に戻るようなものです。
それではローディスは押さえきれないでしょう」
私は言葉を一旦区切った。
それを言うのには少し躊躇いがあったからだ。
「ローディスをとの事を考える場合、王の上の位がどうしても必要になります。
つまり、神聖ゼテギネア帝国の帝位が」
私の言葉にナーナ様とアクエリアスも押し黙る。
現状の失政は批判対象としつつも、ハイランドの建国理念--ローディス教国の脅威を認識しての大国建国--は評価しないといけなくなるからだ。
そして、それを踏まえたうえでトリスタン陛下には、新生ゼノビア王国国王ではなく、神聖ゼテギネア帝国二代目皇帝を目指すという選択である。
「そこまでの覚悟はありますか?
そして、次の戦いから私は去る用意をするつもりでした」
次の戦場からカオスゲートが発見されるからだ。
内政屋として体制を固めてしまえば、マラノの都・天宮シャングリラ・アラムートの城塞を抜いてしまえばこの戦争負けは無くなる。
後は、ドラゴンズヘヴンを独力でクリアしてFORTUNEエンドを達成してカオスゲートを使って帰る。
これが一番後腐れの無い終わり方だと思っているからだ。
「なに、簡単なことではないか。
陛下とデスティンが勝てば良いだけの事」
楽しそうに笑いながら、私の懸念を切って捨てるナーナ様。
ああ。
この人は王の器だ。
否応無く、それを思い知った。
「だから、エリーよ。
この席に加われ。
陛下の夜伽をしろと言わんが、デスティンを支えてやってくれ。
それに、我ら三人子宝に恵まれた上で、孕んで茶を飲むというのはきっと楽しいものになろうぞ」
「そうですね。
人を殺す戦争より楽しいものになるでしょうね」
ナーナ様の言葉にアクエリアス殿も反応する。
それだけは、私も否定できない。
だから、こう答える事しかわたしはできなかった。
「少しだけ時間をください。
帰るか、残るかを決断するつもりですから」
と。
後書き
久しぶりだったので難産でした。
とりあえずの、深入りを避けてのフォーチュンエンドを選択肢に追加。
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