【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)
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16 女子力(魔法)の高い女性たちのお茶会 その一
前書き
ここからオリ設定の嵐。
新生ゼノビア王国王都ゼノビア。
かつては、ゼテギネア一美しいと言われた都は、ゼノビア王国滅亡とその後の圧制にともなって巨大スラム街を抱える城塞都市に変質した。
人口およそ15000人だったがそのスラムには把握できない数万の住民が生きる希望を失って、この牢獄に自ら繋がれていたのだから。
そのゼノビアを解放してまだ三ヶ月だが、復興の足音は静かにだけど確実に響いてきているのだった。
「開拓地に行きたいやつはいるか?
宗教都市エルランゲンで募集があるぞ!」
「下水道の管理の仕事があるわ!
受けたい人は貿易都市カルロバツに来て!」
「街道工事の仕事はこっちだ!
城塞都市アンベルグで募集してるぞ!」
職を与え、食を与える事で、彼らの生活を支援する。
その復興事業の総責任者が私だったりする訳で。
スラムをそのプリンセスドレスでのしのし歩きながら、現状確認の作業中。
「つーか姫さん度胸あるなぁ。
普通のお偉方はこんな所、そんな格好で来ないって」
護衛のコリが呆れ顔でぼやき、同じく護衛のオデットも苦笑するばかり。
コリは途中参加組だから知らないが、オデットはシャローム組だから私がバリバリの武闘派というのを知っているからだ。
ちなみにコリはしっかりとニンジャマスターになっており、オデットもウィッチ上位クラスのハガルの姿だったり。
束に担って悪者が襲ってきたところで、さらわれる可能性は少ない。
なお、それぞれコリとオデットの下に数人のニンジャとヴァルキリーがついているから警備も万全である。
「ほらよ。姫さん。
ここが、娼館街だ」
この手のスラムを見る時に、手っ取り早いのが娼館だったりする。
どうしてかというと、売春というのがぎりぎり合法の線でスラムの住人が金が稼げる場所だからだ。
これは時代や社会によってNGな所もあるが、この世界では合法のラインらしい。
なお、この世界でも明確にNGなのが薬と暴力である。
「何だあれ?」
「新手の奴隷か?」
「新しい娼婦の顔見せだろ。
何処の店なんだろうな?」
案の定の反応ありがとう。スラムの住民の皆様。
通りに面する所にあるのが奴隷市場で、ここで女性奴隷を買って娼館に送り込むという訳だ。
ちらりと眺めると、目の光が無い女性たちが首輪をつけてドナドナされてゆく姿が。
で、この世界人間以外もいる訳で、トロールとかリザードマンとかゴブリンとかが人買いにやってくる姿は『それなんてエロゲ』と思わずにはいられない。
ついでだから、この世界の貞操感も少し説明しておこう。
この世界には魔法というものがある。
その結果、女性の兵士率というのが現実世界に比べてはるかに高い。
アマゾネスとして弓を放ち、経験を積んだらヴァルキリーかウィッチかクレリックという魔法使用職にクラスチェンジするからだ。
で、そんな戦場なんかに男女が居たらまずできる。
勝てば勝ったで馬鹿騒ぎ、負けたら負けたで陵辱の嵐という訳で、まける前にとわっふるする訳で。
「男に抱かれて一人前、できたら退職」
というブラックな職場なのだ。
で、ここからが更に救いが無い。
アマゾネスからクラスチェンジできるウィッチ系は露骨に色事が絡んでいる。
何しろALIが低くてCHAが高いという事は、『目的の為に手段を選ばす肉欲系な体を持つ』と解釈できるのだから。
ちなみに、少し前の私がまさにこれで、デネブとの絡みで私自身『ウィッチプリンセス』と兵達に呼ばれていたのだから。
なお、大神官ノルンへの懺悔と赦免によって、ALIが回復したので『清楚系ウィッチプリンセス』にクラスチェンジしている。
あれ?かえって悪化してね?
話がそれた。
スタータスから見たウィッチというのはこんな形になっているので、スラムの女達が成り上がるのに一番楽な手段となっているのだった。
チャームが使えるのと使えないのでは稼ぎが格段に違う。
という訳で、一流娼婦ともなるとほぼウィッチ適性者だったりする訳で。
彼女達を引っこ抜いて部隊編成をできないかと真剣に考えていたりするのは内緒だ。
じゃあ、クレリックやプリーストは清純じゃないの?なんて考えたそこのあなた。
もっと悪いから覚悟するように。
今の大神官ノルンを例にとるが、ロシュフォル教会というのは基本的に女性優位の宗教である。
で、彼女は神聖ゼテギネア帝国時代に法王なんて地位についていた。
これは、男性権力者が王位を持っている場合にその影響力がはっきりと出る。
宗教関係者は神にその身を捧げたので、一人の男のものにはならない建前がある。
つまり、男女の関係となる事によって、男性王に宗教的権威を与えるのだ。
それを聖娼と言う。
だから、ロシュフォル教会というのは田舎における女性の避難先であると同時に、田舎の娼館を兼ねているという結果に。
こんな話になったのもトリスタン陛下の即位と新生ゼノビア王国の建国に伴う政治の話が絡んでくるからなのだ。
王妃としてナーナ様が隣に座るのは規定路線。
では、もう一人のアクエリアスの位置づけをどうするよという事で調べた結果だったりするのだ。
結論から言おう。
アクエリアスは新生ゼノビア王国ロシュフォル教会法王として王に教会の加護を与える任につく。
これで明確かつ第一側室の地位が揺るぎないものになると同時に、領内のロシュフォル教会に王国側が介入できる。
ちなみに、この手は女性王だとまったく役に立たない。
神聖ゼテギネア帝国でノルンが失脚した理由の一つが、女帝エンドラだったからというのが大きい。
まぁ、長々と話をしたが、力が全てのこの世界のこの時代。
魅力もりっぱな力なのだという事なのだ。
さて、ゲームで気になった事はないだろうか?
クリア後に出てくる賞金の事である。
あれ、どうやって捻出していたかというと、捕虜を奴隷として売り払っていたという驚愕な事実が。
つまり、
速攻クリア>捕虜多数なので奴隷売却益大>ボーナスたっぷり
という夢も希望もない現実がむざむざと見せ付けられる訳でして。はい。
閑話休題。
厳重な警備と護衛のならず者がいるのが娼婦専用の装飾店。
コリが先に話していたらしく、店主が揉み手でやってきやがった。
「宰相閣下がこのような場所にお越しになるとは、光栄の極み」
「世辞はいいわ。
品物を見せてもらえるかしら?」
私の言葉に店主が頷いて、その店の最高級品だろう品々が並べられる。
私が見たかったのはこれなのだ。
「素晴らしい物ばかりね。
ゼノビア貴族縁の品かしら?」
「ドヌーブ王国の品も出回っていますが、最近は値段が上がり気味で」
つまり、こんな所にこんな品が出回るぐらいゼノビア貴族層は窮乏していた。
そして、そんな品を回収するという事は、金のあてができたというより、無理して買い戻しても元が取れると踏んだ。
私はあからさまなため息をついて店主を狼狽させる。
「何かお気に召さないものがありましたか?」
「いえ。こっちの事よ。
気にしないで」
つまり、トリスタン陛下の後宮開設に向けた壮大な色仕掛けが既に始まっているという事に。
「おかえりなさい。エリーさま。
ナーナさまが、お茶会に招待したいって言っていたよ」
「わかったわ。ポーシャ。
ナーナ様に伝えてくれないかしら?」
「はーい」
彼女はディアスポラ出身の少女で、父親を亡くして病み上がりの母親と路頭に迷う所をナーナ様に拾われて侍女としてここで働くようになったという。
ディアスポラ攻略戦は、ナーナ様主導で行われ、帝国軍がローディス教国侵攻によってフィガロ将軍が召還され撤退した事もあって、たいした損害も出ずに我々の勝利に終わった。
ポーシャを救えた事を、顛末を知っている私はそれゆえにナーナ様を高く評価している。
後宮に到着すると、ナーナ様つきのメイド(ヴァルキリー)が一礼して中に通してくれる。
長物の槍を持ってると、武装メイドとして妙に様になるから困る。
「ただいま戻りました。
ナーナ様。
アクエリアス殿」
「すまぬが先に始めているぞ。
とりあえず、お茶を持ってこさせよう。
ポーシャ。頼めるか?」
「まかせてっ!
ナーナさま」
子供らしいあどけない笑顔を残してポーシャが走り去ってゆく。
私たちがいるこの場所は後宮として多くの女達の戦場となる予定なのだが、今の所住んでいるのはナーナ様とアクエリアスの二人しか居ない。
ここにいずれラウニィーがやってくる事になるのだろうが、女の戦いで内乱なんて避ける為に東奔西走いる羽目に。
「スラムに行っていたらしいが、宰相自ら何をしておったのだ?」
「娼婦達の装飾品を眺めておりました。
最近は、どこかに送るらしく高価な装飾品が高くなっているとか」
茶飲み話も色事と政治が絡み、砂糖菓子の甘さでごまかさないと腐臭がどこまでも臭ってくる。
陰湿でどろどろするのが女の戦いである。
ナーナ様とアクエリアスも私の言いたい事に即座に気づいて顔を険しくする。
「やはり送られてくるか」
「どのぐらいの規模になりそうですか?」
女の戦争は子宮で行うとは誰の言葉だったか。
孕めは侍女でも一発逆転が可能なのがこの戦場である。
「年頃の娘を持っている家はこぞって送ってきますよ。
当然、侍女が数人着いてくるから、ここも華やかになるでしょうね」
まったくそう思わない事を顔に出しながら、私はケーキスタンドからパンを取ってむしゃむしゃ。
実は、このパンが貴重品になりつつあり、私達を狼狽させていたり。
ゲーム内での時間が一年以内で終わったという事は、それだけ民への負担が少なかった事を意味している。
だが、体制を作りながら侵攻する為にいやでも長期化している現状ではその負担、特に収穫物がらみで問題が発生しているのだった。
ぶっちゃけると、種植えの季節に入ったので労働力が足りない。
ドラゴンなどのLユニットが食物連鎖ピラミッドの上位にいる所から考えれば、この世界は私の居た世界よりはるかに豊かなのは間違いがない。
それでも消費行為として軍を拡張すれば収穫が落ちるのは目に見えている。
スラムの住民を使ってその手の労働力供給を領内各地に送り込んでいるが、間に合うかどうが微妙である。
更に厄介なのが、神聖ゼテギネア帝国の統治の惨さ。
ヒャッハー上等な統治の結果は、秋の収穫物を冬に食べつくして春に飢えるという信じられない現状に、金はあるのに食料がないなんて事になって私達を慌てさせる事に。
デネブのかぼちゃがここでも大活躍して、スラムを中心に窮乏家庭では現在かぼちゃ料理が並んでいるはずである。
とにかく、秋の収穫まで大規模な戦力増強はできそうにない。
「そういえば、アヴァロン島での活躍、ご苦労だった。
特に人魚たちと和解できたのはうれしく思うぞ」
ナーナ様は私の前に一枚の羽を差し出す。
その羽から神々しさや優しさが溢れるのを感じて、それが何か神聖なアイテムである事をいやでも感じざるを得ない。
あ、そういえば、この二人人魚に対してトラウマ持ちだったか。
「わらわの故郷にレゴ群島というのがあってな。
マレノアというニクシーがおったのじゃ」
知っているがゆえに、私も顔色を変えずにはいられない。
金属加工の排水による環境汚染によって、嘆き苦しんだマレノアは闇の騎士バルドルと手を組んだ。
その結末がこの羽だ。
「『うつくしかった…うみをかえせ…へいわだった…あのころをかえせ…かえせ…かえして…』……マレノアさんの最後の言葉。
あの人、息絶えるまで泣いていたわ」
アクエリアスの呟きは重たく、物悲しい。
彼女は海が汚れていくのが辛いが、人間が生きてゆく為には悲しいけど仕方がないと割り切り、何もできない自分が惨めで泣く優しい人魚だった。
その優しい人魚の命を奪ったのは、私の目の前に居る二人とトリスタン陛下とケイン達だ。
「この羽はの、マレノアが息絶えた時に空から降ってきたものよ。
わらわの罪の証でもある。
こんな悲しい事を二度と起こしてはならぬ。
それを胸に国を治めたつもりじゃ」
語っていたナーナ様の両目から涙がこぼれる。
いや、それはアクエリアスも同じだった。
「筋違いじゃが、言わせてくれ。
何故、お主はあの場に居なかったのじゃ!
なぜ、こんな形で悲劇を回避できるのならば、それを世に広めてくれなかったのじゃ!」
「……」
分かっている。
それが無理な願いというのは二人とも分かって言っているのだ。
自分達が解決できなかった問題を、まるで賢者のように私が解決したのだから。
だからこそ、私は二人に対して何もかけてやれる言葉を持たない。
ナーナ様とアクエリアスが落ち着くまで少しの時間を要した。
「おちゃ持ってきたよ?
あれ?
ナーナさまとアクエリアスさま泣いてた?」
「なんでもない。
目にごみが入ってな」
「ええ。
そうよね。エリーさん」
女というのはこういう時にこそ百面相になる。
もちろん、泣いた目で(口裏合わせて)と私にアイコンタクトを送るのも忘れない。
私は、それに乗ることにした。
「そうよ。ポーシャちゃん。
良かったら一緒に食べましょうか?」
「わーい♪」
今だからこそできるお茶会だろう。
泣いてまで本心を吐露できる事も、侍女と共にお茶会を楽しむ事も。
ナーナ様とアクエリアスが目で(ごめんね。そしてありがとう)と言ってくれた事も。
多分、私はこのお茶会を絶対に忘れないだろう。
……で、ここで終われば「イイハナシダナー」だったのになぁ……
「そうじゃ。エリー。
お主もここに住まぬか?」
そんなナーナ様の爆弾発言から喜劇の幕が上がる。
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