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万華鏡

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第六十八話 秋深しその十一

「鶏肉とケーキ買ってな」
「あとワインね」
「それも買って」
「ツリーも飾ってな」
 最後はこれだった、クリスマスの象徴であるこれが。
「明るく楽しもうな」
「あの、悪いけれど」
 ここで申し訳なさそうに言ってきたのは景子だった、何故そう申し訳なさそうに言うのかはこうした理由からだった。
「うち神社だから」
「だから景子ちゃんのお家では駄目なのね」
「クリスマスは」
「確かにお部屋の中にはツリー飾ってるわ」
 それはしているというのだ。
「鶏肉もケーキも食べて」
「あと赤ワインね」
「それも欠かしてないのね」
「お父さんとお兄ちゃんは教会に行って親睦深めてるし」
 そうした名目でだ、することはというと。
「飲んでるから、毎年」
「クリスマスもなのね」
「飲んでるのね」
「神父さんと牧師さんだけでなく」 
 キリスト教の宗派の違いは何なくクリアーしていた、欧州では凄惨な殺し合い、戦争にまでなった関係だが。
「お坊さんも天理教の教会長さんも集まってね」
「あらゆる宗教でなのね」
「親睦深めてるのね」
「忘年会とは別にね」
 クリスマスに親睦を深めているというのだ。
「新年はうちに集まるから」
「つまり飲んでるのね、年末年始」
「クリスマスも」
「そうなの、けれど神社だから」
 このことが重要だった、何はともあれ。
「公にはお祝い出来ないの、クリスマスはね」
「じゃあ景子ちゃんのお家でクリスマスパーティーはか」
「ちょっとなのね」
「無理なのね」
「そういうことだから」
 それでだというのだ。
「ちょっと遠慮してね、新年は大歓迎だけれど」
「そうか、じゃあクリスマスはあたしの家でやろうか」
 美優があっさりと言った。
「それで新年は景子ちゃんのところだな」
「とはいっても私新年は忙しいけれど」
 肝心のその時はというのだ。
「神社の一番の仕事の日だから」
「ああ、皆お参りに来るから」
「だからなのね」
「八条神社もね」
 この街で最も大きい神社もだというのだ。言うならば八条町の神社の元締めである。他の宗教に対しても顔役だ。
「凄い人来るでしょ」
「うん、だからね」
「それでよね」
「景子ちゃんにしても」
「忙しいんだな」
「三日まではね、けれど忙しいのは日中だけだから」
 だからだというのだ。
「日が落ちたらね」
「参拝の人も来なくなって」
「だから」
「大晦日から元旦の朝までも忙しいけれど」
 つまりこの間は徹夜だというのだ。
「元旦の夜は忙しくないから」
「じゃあその時にはね」
「元旦の夜には」
「飲めるから」
 それも盛大にとだ、景子は言葉の中にそうした言葉も入れてそのうえで他の四人に対して言うのだった。 
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