インフィニット・ストラトス 自由の翼
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双零と自由VS.漆黒の狂戦士……模擬戦闘 後半ですコラボ完です。
○side A一夏
こんなものか……大したことはないんだな。
失礼ながらにも目の前の女にはそう感じてしまった。
その刹那、俺は侮ったことを少しばかりか後悔することとなる。
動こうとしなかった春奈が後退していく。ビームサーベルを避けるつもりのようだが……。
「フンッ!」
もう交戦距離、ここは俺の間合い。ほうけるのは敗北を意味する。だが、春奈からはなぜか隙が見当たらなかった。
シャコンッ……その音と共にフリーダムの右側サイド・リアアーマーが展開されて砲身が生成される。
[クスィフィアス・レールガン]……原作のフリーダムが同じ場所に装備していた武器だ。
だが、その砲身の長さはMSの物と比べれば短く、コイルガンほどの射程しかないだろう。
「無駄だ!」
「果たしてそうでしょうか?」
口調はこっちがムカつくほどに冷静だった
轟音と共に砲弾を撃ち出す春奈。しかし、撃った方向は俺とは真逆の左側。
だが彼女の狙いがわかった時には回避はできなかった。
反動制御を切っていたのだろう勢いを殺しきれずにあいつの体が反転したのだ。そして―――
「私はまだ諦めない!」
春奈はその場で横に回転して俺の右腕ISアーマーを蹴り飛ばしたのだ。
蹴られた手からビームサーベルを蹴り飛ばされた。そのまま彼女はルプス・ビームライフルを投棄して俺の保持していたビームサーベルを右手で掴んだ。
だが、使用権限を発行しなければ使えないはずなのになぜ―――ヴンッ―――訂正しよう。相手は何故かはわからんがビームサーベルを使えるようだ。
「セアッ!」
春奈の動きが変わる。型こそはないが我武者羅な動きで光剣を振るう。
鋭く、俺の反応が鈍い死角を狙って剣が振るわれる。
俺もやられっぱなしは趣味じゃないので残りのビームサーベルを振るい斬撃を受け止め、逸らす。
互いに光剣を交わす中で春奈と視線が交錯する。
彼女の瞳からは光が失われている。だが、その暗い瞳の奥には闘志があった。
流れが変わった……感情の流れがな。
迷いを振り切って俺を見据えるその瞳には闘志が見えた。
一つの[覚悟]を感じた……。
「……SEEDか。」
SEEDとはSuperior Evolutionary Element Destined-factor―――優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子―――の略称であるとエリカ・シモンズから聞いたことがあったが俺には確認されなかった。
位置の関係上俺を見る春奈……表情が一定になっているがゾッとするほどの美少女ぶりだと改めて認識させられた。
世界さえ違えば俺はコイツを自分の女にしていたかもしれんな……まぁ今となってはセシリアとシャルだけで十分だがなっ!
「いい目になったな、春奈ッ!」
「……褒め言葉としてもらっておきます。」
抑揚のない声、感情を察するのが難しくなっちまったな。
春奈はさっきよりも無駄が少なくなった最低限の動きで俺に光刃を振るう。
右腕だけでよくこんな動きができるなと感心させられる。
右上からの切り下ろしを弾くがすぐに左上から斜めの切り下ろしが俺に迫る。
それを後退で避けて切り込もうとしたが跳ね返るような右下からの切り上げから横一閃。
それらを弾き切り伏せようとするも俺と同じかそれ以上の反応で剣を避ける、避けられる。
―――クックックッ……面白い、面白いぞ!
体が戦いに酔い始めた。追い詰められたコイツがこんなに必死で剣を振るうだけでなく俺に噛み付いてくる……殺るか殺られるか―――究極の駆け引き。
春奈のSEはもうギリギリだろう。後一撃で沈めることができるはずだ。
だからこそ俺に食らいつき本性の牙を向ける。諦めない、泥にまみれようと汗にまみれようとも……その精神に俺は敬意を示して応えよう。
―――少しだけ本気を出してな。
●
○side天地
「何だよ……あの戦いは。」
俺は普段とは違う春奈の一面に戦慄した。
まるで牙を剥き、猛り狂う獣のように彼女の温厚な一面は消え去っていた。
[今割って入るのは気が引ける……あれは春奈のケジメの戦いだ。]
「わかってるよ。アイツから言ってきやがったんだ。」
春奈は俺に手を出すなと通信を入れてきやがった。二人でも手を持て余しそうな相手に単身で挑む……正直言って無謀だ。
でもどうだ?アイツは一人で食らいついていやがる。
VLスラスターの驚異的な機動力を持て余すこともなく的確な防御と攻撃を同時に行っている。
高速でぶつかり合うビームサーベル。と、A一夏は空いている手を春奈に向ける。
ドンッと言う炸裂音とともに打ち出されるのはアンカーランチャーか?
春奈は苦にも感じずに飛来するアンカーを避け瞬間加速で距離を詰める。
A一夏はワイヤーを垂れたままにしている……まさか。
春奈は加速時の勢いを乗せた突きを放ち、A一夏を……貫くことはできなかった。
A一夏はストライカーパックをパージしてすぐにPICを解除して落ちる。
その場に残ったストライカーパックを貫いて起こった爆発に巻き込まれて春奈は視界を塞がれたようだった。
一瞬の隙にA一夏は換装して加速しながら飛翔する。左腕を振り被り垂らしていたアンカーを春奈に向けて投げた。
視界が塞がれていた春奈は気がつかなかったんだろうな。機動兵装ウイングにワイヤーを巻きつけられて姿勢を崩した。
「終わりだ……」
その声と共にA一夏は翼のビームブレイドを引き抜きながらワイヤーを巻き取り春奈を牽引して距離を詰める。
そして、ザンッと言う音と共に春奈の翼を断ち切って背後に回るとスラスターの応力を下に変えて春奈の背中を空中で踏んだままに地面に向かって加速した。
「―――ッ!?」
刹那、轟音と地響きが起こる。
巻き上げられた土煙が晴れる頃には深さ2m程の大穴が穿たれていた。
その中心にうつ伏せで目を回している春奈がいた。
『織斑春奈、戦闘不能だよ。』
リボンズがそう告げると春奈の体が粒子となって弾けた。
『天地くん、不本意ですが……あとは頼みます!』
アリーナに響いたのは春奈の声だった。どうやらAピットに転送されたようである。
「さて、残るはお前だけだな。」
「やれやれ、貧乏くじを引いたな。」
俺は大げさに頭を振ってやれやれのジェスチャーを表現する。
「まぁ、タダではやられねぇぞ?俺は―――なーんてな。」
GNソード改とGNソードⅡを構えながら俺は切り札を切る。
「やるか、相棒!」
[了解。]
俺ほ刹那と互いの心を重ねるようにイメージする。……変な妄想はしてんじゃないよ?そこの君。
―――シンクロ率60%オーバー……[TRANS-AM]使用可能―――
「[トランザム!]」
俺は強く、高らかに声を出した。―――さぁ、殺ろうじゃねぇか……A一夏!
●
○Noside
A一夏はノワールストライカーを現在装備している。彼のISアーマーは現在黒を基調としたものに変化していた。
そして、赤き修羅と漆黒の狂戦士が荒々しくも澄んだ剣戟を響かせる。
「やるじゃねぇか、天地ッ!」
「お前もなっ!(ありえねぇ……トランザムについて来んのかよ……。)」
天地は3倍になった機動力、攻撃力でA一夏に挑む。
残り高出力稼働可能時間……70秒
天地は奇襲、フェイント、不意打ちを重ねた捉えられないはずの斬撃を何度も、何度も何度も何度も繰り返す。
しかし、A一夏はそれを逸らし、流し、躱し、受け止める。
残り高出力稼働可能時間……55秒
数え切れない剣戟は延々と続く……
天地の右上からの斬り下ろしをA一夏は左下から相殺、左横一文字を下からの垂直両断で、弾かれた反動で大車輪切りを放つもクロスさせたフラガッハ3ビームブレイドで受け止めるA一夏。
残り高出力稼働可能時間……40秒
「うおォォォ!!」
「全力を出せ、天地ッ!!(リミッター強制解除!)」
いつからか互いに剣を受けるのを辞めていた二人のISはボロボロになっていく。
致命的な一撃は本能的に止めてそれ以外は無視して斬り続ける。
2対のフラガッハ3ビームブレイドの鋒が、ビーム刃、峯が天地のOOを引き裂かんと乱舞する。
GNソード改とGNソードⅡの真剣が、鋒、柄頭がA一夏のストライクEに穴を穿ち傷つけていく。
リミッターを外しパワーの増したストライクEのブレードアンテナの数本は欠けてさらに右肩のサブスラスターは切り飛ばされている。
天地のOOも胸部や所々からスパークをはしらせていた。
そして、二人は切り結んだ。
残り高出力稼働可能時間……12秒
鍔迫り合いを弾いてキャンセルした天地はGNソードⅡをA一夏に投擲すると同時に腰のGNビームソードを引き抜く。
残り高出力稼働可能時間……9秒
飛来したGNソードⅡの腹を蹴っ飛ばし回避したA一夏の前に天地がいた。
「「ここらで決める!」」
二人は同時に叫ぶ。
振るわれる光剣と実体剣。右の切り込みを峯で弾きながらそのまま切り返しそれをビームサーベルで弾きながら回転蹴りをA一夏の鳩尾めがけて叩き込むもつま先は届かず脚部ISアーマーの3割を切り飛ばされたがお返しにと言わんばかりにA一夏の右腕ISアーマーの拳を破損させる。
残り高出力稼働可能時間……2秒
「終わりだあぁぁぁぁぁぁッ!!」
振りかぶった渾身のGNソード改による一撃はA一夏の右肩から胸部ISコア近くを浅く抉りそのまま跳ね返るように深く切り込む。
そして―――
残り高出力稼働可能時間……0.1秒
「……惜しかったな。」
残り高出力稼働可能時間……0秒
ガギン……
―――[TRANS-AM]強制解除します。―――
シュゥゥゥ……
OOの装甲が元のトリコロール調に戻る。
「押しきれなかったか……」
A一夏の左手には逆手でシュベルトゲーベル改が握られていた。
「今回ばかりは俺もやばいと思ったが―――そういう訳にもいかねぇんだよな。」
言いながらの一閃で天地のSEはゼロとなった。
『七ノ瀬天地、戦闘不能。勝者、織斑一夏。』
長いようで短かった20分の激闘がその幕を下ろす。
『流石だよ、A一夏。二対一で勝利するとはね。』
「辛勝だよこんなもん。……まぁ楽しかったがな。」
『フフッ……それは良かった。では皆、ログアウトするよ。』
このリボンズのセリフの後、春奈たちの意識は暗転した。
春奈と天地はこの戦いで学んだことと敗北の悔しさをを胸に刻み込んだ。
●
○Noside
あれから数時間後、ソレスタルビーイング号の居住区にてリジェネが幹事のパーティーを開いた一行は興奮冷めやまぬうちにRCI社に帰還した。
余談だが、このパーティーでヒリングやリヴァイヴたちイノベイド勢がA一夏に酒飲み勝負を挑むも全員があっけなく撃沈していたのは笑い話である。
帰還した理由はA一夏を元の世界に帰還させる準備が整ったからであった。
「さ~て、Aいっくん。ちゃんと調整を済ませておいたからね。」
「そうでなくては困るぞ?束さん。」
「束さんに不可能はないのだ!」
「言い回しが古い悪役みたいですよ、束さん。」
「はるちゃん言うことが辛辣だよぉ~」
しおしおと萎れる束に春奈はウソをつかないでくださいと突き放す。
「よくわかったねぇ~」
そんなふたりを放ってA一夏は天地に右手を差し出した。
「今回の試合は一歩お前が及ばなかっただけかもしれない。正直言って負けてたよ。」
「なんだ?[試合に勝って勝負に負けた]か?」
「そういう事だ。もし会う機会があったらまた殺ろうぜ?」
「……字が違うだろうがよ―――まぁいいがな。」
がっしりと手を握り合い硬い握手を交わす二人は終始笑顔であった。
束は春奈との言い合いを切り上げて計器を弄って次元を安定させた。
「じゃあいつでも行けるよ~」
「わかった。……春奈。」
「はい?なんでしょうか?」
「……またお前と出会う日が来たときは―――」
「……?」
この時、春奈は首をかしげたが……彼の後の言葉には驚いた。
「お前を全力で手に入れるぞ?」
「―――ッ!?」
真っ赤に染まった春奈の顔。
「フハハハッ。引っかかりやすいな。―――では、またな。」
そう言いながらゆらゆらとうごめく次元の層にA一夏は足を踏み入れて消えていった。
こうして、春奈たちの長い休日は幕を下ろしていくのであった。
●
後書き
初夏の訪れとともに春奈たちのクラスに転入生がやってきた。
「シャルル・デュノアです。よろしくね?」
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。皆、教導くらいなら付き合ってやろう。」
次回インフィニット・ストラトス 自由の翼
来たるはブロンド貴公子とプラチナ軍人(?)
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