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孤独の水の支配者

作者:Naho
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花咲学園
不思議な都市
  ―隠される力 5―(変)

その後、


昼に追いかけてきた人たちに追いかけられそうになったものの


放課後になるとすぐに雪斗と合流して家へ帰宅すると


あたしと雪斗はあたしのベッドの上でノートパソコンを膝に乗せて今日見つけた物を見ていた



『――――××年4月×日

この日、十人の子供が私の学園へやって来た。

十人の子供の内、五人は能力が開花し・・・

・・・残りの五人は少しずつだが能力を制御し始めたように見える。

何という素晴らしい日だ

わずか六歳だとしてもこの子たちは立派な能力者に育つだろう』



雪斗「姉ちゃん・・・!」


萌依「静かに」



『――――××年5月×日

十人の子供たちが私の学園で生活を始めようやく一月。

この一月で敵襲されたのは二回。

その内の二回とも・・・子供たちは立派に戦った。

皆、治癒の力も持っとるようで・・・どんな怪我でもすぐに回復し、戦闘において怪我以外困る事はなかった。

・・・平和な世界は来ないのか?』



・・・この日記、能力者とアリゼウスの戦い記録・・・?


十人の子供たち・・・って誰の事?


萌依「少し飛ばすよ」


雪斗「あ、ああ・・・」


とりあえずどんどん下へ移動した時、


見覚えのある数字にその日記をクリックするとあたし達がさっきまで読んでいた日記とは違い、


かなりの長文に雪斗と顔を見合わせ読み始めた





『――――×4年9月×日


この日、アリゼウスと我々能力者の間で今まで以上に大きな戦争が起こった。


・・・認めたくはないがアリゼウスの力は大きすぎた。


奴らには私でさえも知らない〝能力者〟を仲間につけていた。


これを祖先様方は〝偽統継承者〟と呼んでいただろうか・・・


例え正統継承者が十人いたとしても奴らは〝偽統継承者〟だけでは物足りんと言いたげのように・・・とんでもない〝怪物〟を作り出した。


アリゼウスの当主はその怪物たちをこう呼んでいた――――ラルド、と。


どうやらラルドと呼ばれる化け物たちは〝アルクス〟という我々の人知を遥かに超え、


その力はとてつもなく恐ろしかった・・・。


私が奴らを見て分かった事、それは・・・


奴らは正統継承者の能力を真似て作ったかのように・・・一匹一匹・・・いや、一体一体・・・子供たちを超える力を持っていた。


他のアルクスとは違う絶対的な強さ・・・圧倒的なあの化け物たちを誰が倒せるというのか?


子供たちは・・・立派に、戦ってくれた・・・。


だが誰もラルドに勝つ事は出来なかった。


私自身・・・アリゼウスらがどうやって帰ったのか覚えていない。


初めて味わった苦痛の敗北感だった。


途中で港の時空間の能力が切れたのか・・・どうやら都市にも大きな損害が出ていたらしく


都市外の人間の記憶を操る事は出来たものの・・・都市中の人間の記憶は全く操れなかった。


やはり戦争で私も力を使いすぎたのだろうな・・・。


――もう誰も傷つけとうない。私は二度と子供たちに嫌な思いは味わせたくない。


この学園は私の宝物だ、何としてでも私の〝家族〟を守りきるため・・・子供達に安心して貰えるような場所を作る為・・・私は巨大な〝結界〟を学園に張り巡らせた。』





萌依「成る程・・・こういう事だったのね」


雪斗「何か・・・すげぇ・・・感動」


・・・どこで感動するのかは分からないけど(呆)


あのサイトで書かれていた『自然災害』はこういう事だったのね・・・。


萌依「この日記を書いてる人の話が本当なら・・・アリゼウスはラルドとかっていう化け物を手下にしてるのね・・・これは厄介になりそう」


雪斗「ていうか結界って何だよ!?」


今まで気付かなかったって事は・・・やっぱり雪斗には水の能力の血が一滴も受け継がれてないって事か・・・。


・・・一応分かってたつもりなんだけど・・・。


グラン「つまり・・・そのラルドってのが厄介なのね」


萌依「・・・そう。この人は皆を守る為に結界を張っただろうけど・・・大きな誤算が出ている」


雪斗「え?」


グラン「どういう事?」


萌依「・・・つまりこの人は皆を守る為に四年前、結界を学園に張り巡らせた

自分たちの代わりに戦ってくれる守備兵が生まれた事で十人の子供たちは自分たちから戦う事はなかった。

・・・戦争後の日記を読んでも結界の中に侵入してきたアルクスだけを仕留める程度で、一年また一年と月日が過ぎてく内にこの人たちは気付かずに結界の力を強めていったの。

大抵・・・薄い結界ならば正統継承者は何も変わってないと思い込む、けど・・・結界の中での暮らしが何年と続いたせいでこの人たちは自分たちが〝弱くなった〟事に気付かないの」


・・・どうりで可笑しい訳だよ。


どんな力でも跳ね返すこのペンダントがあの結界を跳ね返さなかった時は何かの間違いかなって思ったけど


聖獣でさえもあの結界に気付いたとなるとあの学園、そうそう持たないだろうね


萌依「むしろアルクスの力が弱くなったと思い込んでる、本当は反対なのにね


結界の中にいる能力者たちが弱くなって、結界の外にいるアルクスたちが強くなってるの」


雪斗「じゃあ・・・ラルドの軍勢が攻め込んだ時・・・」


萌依「花咲学園は一時間も持たない内に沈没ね」


・・・あたしがそう言った時だった


「「「ドォォォオオオオンッ」」」


何処かで大きな爆発音が鳴ったかと思うと今度は強い地震が花咲都市を襲った


雪斗「うわお・・・」


けど・・・あたしの制服の下に隠れているペンダントが黄色く光ると


あたしたちがいる家だけが少し宙に浮く


萌依「・・・キモイとか勝手に言えば」


驚いてあたしの顔を見る雪斗の反応にムスっとしながらベッドの上を下りると


後ろから溜息が聞こえる


雪斗「キモイとか思ってないから」


萌依「そう」


雪斗がそんな風に思うわけないって分かってるのに素直になれない


・・・あたしってほんと、バカだ


グラン「やっぱこの街は呪われてるのね。見て、さっきまで青かった空が紫に変わってる」


雪斗「うわあ~・・・すげえ・・・」


窓から外を眺める雪斗とグランディーネの背中を見つめると


机の上にノートパソコンを置いて溜息をついた


・・・あたしは本当、何から逃げてるんだろ


雪斗たちを守れればいいってずっと思ってきたけど


この街に来たからには中途半端な気持ちでいる訳にはいかない


・・・今日はたまたま早く家に帰って来たけど


明日、明後日と敵がいつ来るのかも分からない


そんな状態で雪斗を傷つけたら・・・どうしよう。


・・・あたしが、もっと強くならなくちゃ


「「シャッ」」


雪斗「姉ちゃん?」


部屋のカーテンをしっかり閉めると今でも家の外で聞こえる嫌な音は気にせず、


雪斗とグランディーネの手を握った


萌依「雪斗、グランディーネ・・・これから先、何があっても・・・こういう日は絶対、家の外に出ないで」


・・・せめて、せめて・・・


あたしがふたりのことを近くでしっかり守れれば安心できる。


・・・もうあたしのせいで誰も傷つけはしない


この力はもう使わない


・・・使っちゃいけないの


何が何でも隠し通さないと・・・ 
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