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つまらないもの

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第六章


第六章

「そうした組織に常に便宜を計ってきたらしいわ」
「それじゃあ」  
 そこまで聞いてだ。連は顔を曇らせて妻に言った。
「あの人は犯罪組織に加担していたのかい?」
「過激派とかそういう手の団体が犯罪組織ならね」
 それならばそうなると。妻も話した。
「そうなるわね」
「まずいね、それは」
 連はその顔をさらに曇らせていた。
「じゃああの人は」
「危険よ」
 危ないというのだ。
「あの人はとんでもない人みたいよ」
「ううん、そうだったんだ」
「あなたあの人と高校時代同じ学校だったのよね」
「同じ学年でね」
 妻にこのことを正直に話していく。
「同じクラスだったこともあるよ」
「その時はどういう人だったの?」
「ううん、頭がよくてスポーツができて」
 その記憶をだ。思い出しながら話すのだった。
「それで家がね」
「お祖父さんの家よね」
「凄い家だったね。何でもあってね」
「お祖父さんもね。そうした怪しい組織や団体から色々な献金を受けていて」
 つまりだ。祖父の頃からだというのだ。
「怪しい人だったみたいね」
「僕は地元だったけれどそうしたことには疎いからね」
 それでだ。知らなかったというのだ。
「そういう人だったんだ」
「今主民党がマスコミに贔屓されて凄い追い風だけれど」
 そのだ。管がいる政党がだというのだ。
「政権に就いたらあの人も要職になるのよね」
「大臣になるのかな」
「なるわね。絶対にね」
「ううん、そういえばあの人総理大臣になるとか言ってたけれど」
「なったらどんでもないことになるわよ」
 そうなるというのだ。
「もう何をするかね」
「どうなるのかな、本当に」
 連は管のことを知りだ。暗澹たるものを感じた。それは彼の素性を知りだ。一体何をするのかがだ。不安になりそうなったのである。
 そしてだった。選挙の結果だ。主民党は与党になった。管は公安委員長と防衛大臣を兼任してだ。早速様々な怪しい法案を提出しだした。
 だが主民党自体がだ。どうかというとだった。
 そのあまりにも酷い嘘と危機管理のまずさ、政策実行能力のなさに無数の汚職騒動により国民、彼等がマスコミと結託して騙した彼等の信頼を失いだ。与党になってから選挙という選挙で敗れ続けた。
 管もだ。ネットで指摘されていた疑惑が表に次々と出てだ。
 外国人からの献金や領土問題で相手国の決議に参加していたことが流石にマスコミでも取り上げられだ。それが報道されてだ。
 失脚した。二つの大臣の職も失いだ。
 政権自体が不信任案を出されそのうえで総選挙になりだ。彼は主民党ごと破滅してしまった。
 落選しそのうえでだ。数々の疑惑が調べられ地検に告訴され家宅捜査までされ。政治家はおろか様々な権益も剥奪されだ。何もかもを失った。
 実家からも見離され離婚もされてだ。行方もわからなくなった。
 連が聞いたのはここまでだった。だがある日のことだ。
 彼のところにだ。こうした話が来たのだった。
「診察?」
「そう、診察なの」
 こうだ。連絡を受けた妻から聞いたのだった。
「離れの一軒家の。その人の診察をね」
「してくれって?」
「ええと、依頼してきた人は」
「うん、誰かな」
「この町の人で。名前は秋元っていうの」
「秋元さん?」
「その人が連絡してきたの」
 こう夫に話すのだった。
「その人の診察を頼むって」
「町の離れの一軒家ね」
「住所は聞いてるわ」
 それはだ。もうだというのだ。
 
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