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万華鏡

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第六十四話 甲子園での胴上げその十七

「投打が噛み合って」
「見事日本一」
「こうしてね」
「一度観たかったんだよ、あたし」
 美優は飲みつつ泣いていた、感動で。
「本当にな」
「そうよね、日本一をね」
「阪神の日本一ね」
「胴上げをね」
「そうだよ、しかも甲子園だよ」
 今も甲子園ではファン達が喜びの声を挙げている、それだけで甲子園が上下左右に揺れそうである。
「嘘みたいだよ」
「これがずっと続けばね」
「いいわよね」
「来年もな」
 その次のシーズンもだというのだ。
「それで巨人の記録を抜いてな」
「十連覇ね」
「それね」
「いや、西武よりもさ」
 そのだ、圧倒的なまでに強かった西武の長い長い黄金時代以上の黄金時代をというのである。虎の時代を。
「優勝して欲しいよな」
「あの時の西武って」
 その時代の西武のことをだ、ここでも話す里香だった。
「本当に凄かったからね」
「一杯いい選手いたよな」
「秋山さんに工藤さんにね」
 秋山もかつては西武にいた、ホークスに移籍して監督まで務めるまでにそのチームに溶け込んだが。
「辻さんに平野さんにね」
「吉竹さんもいてね」
「それだけいたんだよな」
「そう、まあ今はね」
 今はだ、どうかというと。
「どの人も西武にいないけれど」
「清原もだったよな」
「そう、あの人もね」
 かつては西武の四番だった、遂にホームラン王等にはなれなかったが。
「西武だったのよ」
「そうだったんだな」
「まあ今はね」
「あんなのになってるけれどな」
 西武時代と比べれば別人だ、柄が悪くなり過ぎた。
「昔はよかったんだな」
「本当に昔はね」
「その清原もいてか」
「監督もよくて」
 広岡森とだ、知将が続いた。その采配も西武の強みだった。
「本当に最強だったのよ」
「その西武みたいにか」
「ええ、阪神もね」
 まさに無敵のだ、長い長い黄金時代を迎えるというのだ。
「絶対にそうなるわ」
「夢だよな」
「けれど夢はね」
「実現させるものだよな」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「来年も再来年も」
「凄い道が険しいわよね」
 琴乃は連覇、そして十連覇と聞いてだった。笑って言う。しかしその険しい道が何なのかもわかって言うのだった。
「けれど目指すかいはあるわね」
「琴乃ちゃんもそう思うわよね」
「最下位になることを考えたら」
「遥かにいいわよね」
「勝つ為に道を進んでいくのはね」
「そう、連覇ね」
 それをしていってだというのだ。
「やっぱりいいと思うわ」
「そうだよな、じゃあ今はな」
 美優は焼酎を一杯ぐい、とやってから言った。
「飲んでいくか」
「阪神の日本一を祝って」
「ここは」
「ああ、そうしような」
 連覇も大事だ、だがというのだ。  
 今は祝おう、こう四人に言う美優だった。
「今はさ。とことんまで飲もうな」
「焼き鳥もまだまだあるしね」
 琴乃は皿の上の焼き鳥達を見た、すると。
 その焼き鳥達はまだまだあった、それを見て四人に言うのだった。
「もう今日は浴びる様にね」
「じゃあね」
「今日はとことんまで」
「飲もうね」
 言いながら早速だった、琴乃は早速だった。
 飲んでいく、そうして五人で阪神の日本一を祝うのだった。


第六十四話   完


                        2014・1・5 
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