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ソードアート・オンライン  ~生きる少年~

作者:一騎
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第一章   護れなかった少年
  第二十八話  悪夢(後編)

 
前書き
取り敢えず前中後編の三つに分けることにしましたw

そして文字数結構多めです。 

 
「どうしたの、ソラ」

リズが心配そうに聞いてくるが、既に耳に入っていなかった。

『あぁ......うぅ......そ......蒼空......』

声も、幼なじみ――あの頃の詩音と同じだ。

「詩音!!」

ボスが何故詩音の形をして、詩音の声で僕の名前を呼ぶのかは分からない。

でも、何故か涙が出た。

「ちょ、蒼空!?」

リズが僕の涙を見てか心配そうに声を上げるが、またも耳に入らない。

『そ......ら......?』

「そうだ、そうだよ詩音!! 僕だ、蒼空だ!!」

泣き笑いの表情で近づく。

『そう......蒼空......じゃあ――』

両者の距離が近づいていく。

両方とも笑いながら。

これが感動の再会だって信じてた。

恐らく、リズもそういう風に察していた。

が――

ザクッ

「えっ?」

お腹に何か棒状の物が刺さっている。

『――死んで。蒼空』

そして遅れてくる焼けるような痛み。まるでペインアブソーバが働いていないかのような痛みが襲ってきた。

「ガハッ......」

満タン近く回復していたHPが一気に半分近くまで削れる。

そして《貫通継続ダメージ》というものによって、そこから緩やかにHPが減っていく。

「ソラ!!」

リズが駆け寄ってこようとするが、視線だけでそれを制止、気合いを入れて腹に刺さった棒状の物を引き抜く。

「ガ......グゥゥゥゥゥウウウアアア!!」

そして引き抜く際に再度激痛が走る。

「どういうこと......詩音」

ポーションを煽り、質問する。

この目の前にいる詩音は完全に敵意を持っている。

『どういうことも何も、私は私の仇を取ろうとしてるだけ。アナタに()()()()私の、ね』

「ッ!?」

『大体何平然と生きてるのよ、私を殺して一人生き残ったくせに』

「ち、違う!! アレは――」

『何が違うのよ。アナタは自分が助かりたいが為に私を犠牲にした。そうでしょ?』

「違うっ!! 僕は......僕はっ!!」

『何が違うのよ、この()()()

『なー知ってる? 1の4の風峰って奴、人殺しらしいぜ』
『うわ、マジかよ。そんな奴いるとかマジ怖えんだけど。早く消えてくんねえかな』
『だよな。殺人者とか早く消えろよ。警察はなにやってんだか』

詩音の一言で過去がフラッシュバックする。

『ほら、あいつだよ。殺人者。自分の幼なじみを殺したんだと』
『うわっキモ!! 消えろよマジ』

『おい、あの殺人者、何やっても反撃しねえらしいぜ』
『マジで。いい的だなぁ。まぁ、こっちがチクれば全て終わりだからな。怖くて反撃できねえんだろ』

『殺人者が......何我が物顔で学校来てんだよ』
『殺人者が、調子乗ってんじゃねえよ、さっさと死ねよ』
『よぉ、殺人者。ちょっとストレス発散させろよ。断れねえよなぁ? 分かってっと思うけど断った瞬間、お前終わりだぞ?』
『おい、殺人者、ちょっと財布貸せよ。......しけてんなぁ。ったく、札と小銭だけで許してやんよ』
『殺人者――』『殺人者――』『殺人者――』『殺人者――』『殺人者――』『殺人者――』
『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』『殺人者』

頭の中でその言葉だけがぐるぐる回る。

嫌だ、違う。僕のせいじゃない。

そんな事を思いながらその言葉の中でもがく。

もがいてもがいてもがいてもがき続け、ようやく、一本の手が差し出される。

それを掴むと、僕をその思考の海から救い出してくれた。

その人の顔は詩音によく似ていて、穏やかに笑っていた。
見る人が安心するような、そんな笑いかた。

だから僕も微笑みながら

『詩――』

『消えなよ、殺人者』

その顔は、頬を限界まで釣り上げていた。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁああああああああっぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!」

―☆―☆―☆―

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁああああああああっぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!」

ソラが急に叫んだ。

何々!? 今の短時間で何があったの?
ソラが殺人者とか言ってたけど......。

瞬間、今までの表情が頭に浮かぶ。

主に笑ってたりしてたよね。基本的に善人って感じでわざわざ、数いるプレイヤー鍛冶士から私を選んでくれたし。

でも、ニュースとかだとそういう人が殺人を犯したとか結構聞くし......。

『発狂したか。ふん。私を殺した罪を味わいなさい。私の味わった痛みはこんな物じゃなかった!!』

「あぁぁぁぁぁあああああぁぁあああぁぁぁぁ......」

ソラの声が段々小さくなっていて、そして段々前のめりになって、倒れた。

「ちょ、ソラ!!」

倒れたソラの所に走って行くと、

『む、どけ小娘。この殺人者は私が殺すの』

目の前にいた、ソラの元大事な人(?)が手に槍のような物を持って言う。

「ちょ、何よ殺人者って!!」

憤りを感じ、噛みつくが、

『言葉の通り。さっきも言ったけど、私はこの殺人者に殺されたの』

チラッと、カーソルを確認する。

そこには、

『《The nigthmare》』

そして色はピュアレッド。

間違いない。コイツは魔物だ。精神攻撃をしてくる魔物。

ピュアレッドということは、適正の敵。

十分倒せる敵だ。

ソラの前に出てメイスを構える。

『何だ小娘。その殺人者を庇うの?』

「殺人者殺人者ってうるっさいわねえ、コイツは私の友達。友達だから庇う。何か文句ある?」

『面白い。ならこの殺人鬼への最後のプレゼントとしてお前の首をプレゼントするわ!!』

目の前のナイトメアが槍を構える。

先手必勝!!

メイスを上に振り上げると同時にメイスに緑色のエフェクトがまとわりつく。

「せいやっ!!」

そして振り上げたメイスを地面にたたきつける。

メイス専用範囲型スキル《パワー・ストライク》。

地面に叩きつけたメイスから衝撃波が走り、ナイトメアに直撃する。

『この程度、小娘!!』

がそのHPは元から一本の残り半分しか無いのだが、ほとんど減っていない。

ちなみにパワーストライクには一定確率で相手をスタンさせる効果付きなのだが、見た感じスタンにはなっていない。

うーん......流石腐ってもボス、ってとこね......。

そんな評価を下しながら再度メイスを構える。

『今度はこっちから行くわよ!!』

ダンッと音がして一気にナイトメアが踏み込んでくる。

『ハァッ!!』

もう一度ダンッと音がして凄まじい勢いの槍が突き出される。

「ハッ!!」

それをメイスで下から弾く。

そしてメイスを右手側に移動させる。

そこで、メイスが緑色のスキルエフェクトを纏う。

「セィッ!!」

右から、左、そして左から右、最後に右上から両手持ちで振り下ろす。

メイス専用三連続技《トライス・ブロウ》だ。

『グゥッ!!』

これは効いたようでナイトメアのHPが目に見えて減る。

これを繰り返せば......勝てる!!

そう思いながら心の中でグッと握り拳を作る。

『ふむ......。やっぱり槍は使いずらいわね......しょうがない。小娘、今から本気を出すわ』

そう言いながら槍を投げ捨てるナイトメア。

そしてその右手に現れたのは......1.5はあろう巨大な鎌。

『やっぱり突くよりも首を狩る方が楽ね』

そしてピュアレッドだった、ナイトメアのカーソルの色が変わる。

今度の色は......ダーククリムゾン。

ただ、その代わりにナイトメアのHPが減り、レッドゾーンに入った。

『じゃ、行くわよ小娘』

瞬感、ナイトメアの姿が()()()

「――ッ!?」

実際には恐らく消えた訳ではないだろう。ただ、視認出来ないだけで。

瞬感、直感的に

首の左側にメイスを移動させる、と。

ガインッ!! と音がして、メイスに振られた鎌が当たった。

『あら、以外とやるわね小娘』

「ま、まぁね......」

口ではそういった物の、おどろきを隠せなかった。

今防げたのはただの偶然。

サァ......と背中を冷たい物が通っていく。

次振られたら、避けられる気がしないわね......。

ならっ!!

「ハァッ!!」

地面を蹴って疾走する。

選んだ答えは単純、振られたらダメだら、振らせなければいい。攻撃は最大の防御、と言う訳だ。

スキルも何も使わず、真上から振り下ろす。
その一撃は鎌の柄の部分で防がれるが、これでいい。攻撃する暇は与えない!!

ガァン!! ギィン!!

金属と金属がぶつかる音が響く。

何回響いたか分からない。もう息が切れて、腕が重い。でも、それがようやく功を奏した。

ナイトメアが体勢を崩したのである。

「これでッ!!」

メイスを振り上げ、そこに緑色のスキルエフェクトが纏われる。

メイス重攻撃技《パッシブル・ブロウ》。

一撃だけだが、その威力はかなり高い。

正直、もうメイスがかなり重く感じる。頼むから、これで終わって――!!

『ひっかかったね』

瞬感、背後からそんな声が聞こえる。

これはやばい――!!

私の中で警鐘が鳴り響く。

今スキルの発動を止めると、硬直し、その瞬感に殺される。

なら――。

あえて、そのままスキルの動きに身をゆだねる。

このスキルは、真っ直ぐ真下に振る技なので、そのまま真下に振られる勢いを利用し、倒れ込む。

「くっ!」

それでも回避が間に合わず、左肩が若干切られる。

『ほぅ......。やるわね小娘』

スキルによる硬直が解け、ゆっくりと立ち上がる。

HPゲージを見ると、少し減っていた。

まぁ、ここまで出来れば上出来だろう。

改めてナイトメアのHPを見ると多少は減っていた。

「ハァッ!!」

再度メイスで殴りかかる。

『フム。諦めない所はいいわね。......でも今は』

そこで、メイスを思いっきり打ち上げられる。

『見苦しいわ』

そして隙が出来た私の胴に向かってナイトメアが鎌を振るう。

最大限お腹を引っ込めるが、避けきることは出来ず、結構深く切り裂かれる。

「キャァァァアァァアアア!!」

悲鳴を上げながら崩れ落ちる。

今度はHPが大きく減り、半分を割る。

勝て......ない......やっぱり......。

死力は尽くした。

あいつを護ろうと頑張った。

でも、もう......。

『......心が折れたわね......。大丈夫。今、楽にしてあげるわ』

手からメイスがこぼれ落ちる。

鎌が振り上げられる。

死神が、私を掴んでいる。

そこで目を閉じた。

『安心して、痛みはないから。それじゃあ――』

バイバイ。

そんな声と共に風切り音がする。

さよな――

その瞬感だった。

ヒュウゥゥゥウという風切り音から、ガキィン!!、という金属同士がぶつかる音に変わったのは。

おそるおそる目を開けると、鎌の刃は、首の数cm手前で止まっていた。

そしてそれを止めたのは......柄の所に出された刀の刃。

そしてめの前にはいつも通りの黒いコートが映る。

「......ったく、心配したでしょうが!!」

そう怒ると、その人が謝る。

「あはは......ゴメン。そしてありがとう。護ってくれて」

そういいながらこっちを向いた顔は、涙のラインが残っているうえに、その瞳の色は暗い。

「ったく......当然でしょうが」

「なら、僕も当然のようにリズを護るよ」

そう言いながら二コッと微笑んでいる、が、その笑顔はかなり弱々しかった。

『アハハ!! 殺人者が急に出てきて何を言うかと思えば......護るぅ?無理無理アンタの力じゃ無理!!』

「......やってみなければわからない」

『アンタに私が切れるの?』

「......斬るさ。君はもう詩音じゃない」

『はっ、じゃあ誰が詩音なの?」

「......いないよ、もう。詩音は僕が殺した。だからもういない」

『何を言い出すかと思えば......』

そのまま鎌をソラに向かって振るナイトメア。

完全な不意打ちである。

「危ないソ――」

とっさに叫びかけるが、その瞬感にはすでに――

「......遅いよ」

ソラの手が、鎌の柄の部分を受け止めていた。

そしてそれを左腕で握りしめながら、右手の剣を納刀する。

そして

「《閃》」

一瞬で光が走った。

(早い!!)

正直全然見えなかった。

『ックソッ!!』

「......避けたか......」

ナイトメアはこれを、鎌を放棄して避けていた。

が、瞬感にもうソラは次の動きをしていた。

「《瞬》」

突進系スキルを使って、避けたナイトメアに密着していた。

そしてその状態で、刀が振られ、ナイトメアの身体を両断する。

これにより、ナイトメアのHPが消え、ナイトメアの上半身だけが、ゴロッと落ち、下半身は消えた。

そして地面に転がった、ナイトメアがしゃべり出した。

『ヒャーッハッハッハ!! やりやがったコイツ!!この殺人者が!!二回も幼な――ガッ』

「五月蠅いよ」

そしてその頭をソラが踏みつぶした。

これにより、ナイトメアの上半身も消えていく。

その場でソラが溜息を着きながら納刀する。

と、こっちに歩いてくる。

「大丈夫? リズ」

そう言いながらへたり込んだままの私に向かって手をさしのべてくる。

その手を掴み立ち上がる。

「ありがと、助かったわ」

お礼を言うと、弱々しく笑うソラ。

「それより、アンタこそ大丈夫なの?」

「僕は......大丈夫だよ......これくらい、もう慣れたから......」

そう言っているソラの顔は......明らかに無理をして笑っていた。

ったく......これだから......。

そのまま近づいていって、そのまま――抱きしめる。

「ちょ、り、リズさん!?」

ソラが急な行動にビックリしてか、慌て始める。

「ったく、強がってんじゃないわよ。元の世界じゃどうだったか知らないけど、泣きたいときはいつでも泣きなさい。私はアンタの味方だから、いつだって愚痴やら何やら聞いてやるわよ」

と、小刻みにソラが震え始める。

ったく......これだからこういう奴は放っとけないのよねぇ......。

「ほら、このリズベットさんの胸の中で思いっきり泣きなさい」

そう言いながら幼児はあやすように背中と頭をポンポン、軽く叩く。

「ぇぐ......あぅ......」

段々小刻みに震えてたのが、嗚咽に変わっていく。

「ほら、今までツラかったわね......でももう大丈夫よ......アンタには味方がいる。それこそ、アンタの言ってた《月読》のみんなだって」

「......ぅ.......ぅぁあ......ああああぁぁぁああっぁぁっぁぁああああああ!!」

そして嗚咽から段々声を出して泣いている。

ふぅ......あやすのも中々大変ねぇ......。

ソラがリズベットに抱きついて泣いている中、リズベットはただ、母親のようにあやしていた。

 
 

 
後書き
リズベットさんの母性ェ......。

若干キャラ崩壊とか起こしてるかもしれないけど見逃して下さい......。

ちなみに次回はナイトメア戦後です。

2014/10/28 題名の悪夢 中編を後編にしました。 
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