久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第九十九話 四人の決断その九
「好きです」
「ならいいですね」
「はい、それでは頂きます」
「日本のカレー、いえインド文化圏以外で食べるカレーは」
ここでだ、マガバーンは銀色のスプーンを手に取りつつこうも話した。
「スプーンを使いますので」
「本来のカレーはですね」
「インドでは手で食べますので」
だからだというのだ。
「カレーもです」
「手で食べるんでしたね」
「手でも味わいます」
「触った感触をですか」
「それも楽しむのです」
口で味わうだけでなくだ、指でもだというのだ。
「そうしています」
「そうなんですね」
「はい、では」
「それではですね」
「今から食べましょう」
「わかりました、それじゃあ」
上城もスプーンを手に取った、そのうえで。
カレーを食べる、そのカレーの味はというと。
「甘口ですね」
「今日のカレーは」
「この甘さは林檎と」
「パイナップルを入れています」
見ればルーの中に確かにあった、パイナップルを細かく切ったものが。
「林檎はすって入れています」
「そうですよね。甘い美味しさですね」
「甘口のカレーも気に入りまして」
「日本に来てからですか」
「インドでは辛いカレーが多いですが」
日本の甘口のカレーもだというのだ。
「こうしたカレーもいいですね」
「はい、僕も好きです」
「それは何よりです」
「それでなんですけれど」
「はい」
「僕にお話があるんですよね」
マガバーンを見てだ、上城は彼に問うた。
「そうですよね」
「はい、ですから」
彼を食事に止めたというのだ。
「それでなのです」
「やっぱりそうですか」
「剣士のことです」
単刀直入にだ、マガバーンは言ってきた。
「貴方が最後の剣士になります」
「そしてですね」
「闇の剣士を止めるのですが」
「かなり強いですよね」
「確かに貴方は強くなりました」
このことは間違いないというのだ、マガバーンも。
だが、だ。彼は上城にこうも言った。
「しかし彼はです」
「より強いんですね、僕よりも」
「そうです、今は同等でも」
「これからですか」
「彼はただひたすら闘っています」
「闘えばそれだけ倒した相手の力を手に入れられるからですね」
「その意味での成長は尋常なものではありません」
それ故にというのだ、加藤のその闘いを経ていく中での成長がだ。
「ですから貴方よりも」
「強くなるからですか」
「彼は戦いが好きなのです、言うならば」
加藤は何であるのかもだ、マガバーンは言った。
「アスラなのです」
「修羅ですね、仏教の」
「そうです、阿修羅とも呼ばれますね」
「はい、あの人は修羅なんですか」
「ただひたすら戦いそれのみを楽しみとしている」
インドにいる魔族の一つだ、場合によっては神ともなる。
ページ上へ戻る