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万華鏡

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第六十三話 第三試合その四

「五分と五分よ」
「そうなったらなあ」
「そこから一気ってことも」
「あるんだよな」
 こう口々に話すのだった。
 そしてだ、琴乃も顔を曇らせて話す。
「昨日はいい勝ち方だったけれど」
「それでもよね」
「今日がどうかよね」
「そうなの、負けたら」
 どうなるのか、それは琴乃も不安だった。
 だからだ、彼女もこう言うのだった。
「そこから四連敗とか」
「前みたいにねえ」
「あの時はストレートだったけれど」
「今回もとかね」
「あるわよね」
「阪神の場合は」
「阪神だからね」
 琴乃は自分が愛するチームのことがわかっていた、それでだった。
 そのうえでだ、こう言うのだった。
「一気に負けることもあるから」
「あるわよね、それ」
「阪神の場合は」
「期待したって思ったらね」
「そこからとか」
「そうでしょ、だからね」
 琴乃は心配している顔で皆に話した。
「最初に勝てたことは嬉しいけれど」
「安心は出来ない」
「そういうことね」
「まだシリーズは続くから」
「だから」
「最後まで勝ってくれたら」
 それでだというのだ。
「先に四勝してくれたらね」
「それでいい」
「そう言うのね、琴乃ちゃんは」
「三度まで負けられるし」
 シリーズで重要なことはこのことだ、三試合までは負けられるのだ。四試合勝たなくてはならないがこれだけ負けられるのだ。
「そうしたことも考えるとね」
「三度負けられるのよね」
「四度勝たないといけないけれど」
「何か前向きなそうでない様な」
 クラスメイトの一人が琴乃の言葉を聞いてこう言った。
「そんな風になってない?今の琴乃ちゃん」
「そうかしら」
「四連敗しなければいいって言ってね」
「それで三度まで負けられるからって言うところがなのね」
「どうにもね」
 前向きかどうかわからない感じだというのだ。
「そんな風に思えるわ」
「そうかもね、自分でもね」
「その辺りはなの」
「矛盾してると思うし」
 腕を組み考えている顔での言葉だった。
「そこはね」
「嬉しいし不安で」
「どっちの感情もあってね」
 本当にだ、その辺りはというのだ。
「矛盾してると自分でも思うわ」
「けれどどっちが勝って欲しいかっていうと」
「阪神よ」
 このことはもう言うまでもなかった、だから今もはっきりと答えることが出来た。
「阪神が勝たないとね」
「嫌よね」
「だって久しぶりのシリーズよ」
 あのロッテに惨敗した時以来のだというのだ。
「それならね」
「相手もその因縁の相手ロッテだし」
「余計にね」
「日本一になって欲しいわよね」
「シリーズ前はもうダントツで日本一って思ってたけれど」
 いざシリーズがはじまるとだというのだ、それまでは殆どなかった不安、シリーズで負けた場合を考えてだというのだ。
「どうもね」
「不安になるわよね」
「お祈りしようかしら」
 遂にはこんなことを言う琴乃だった。 
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