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獣退治

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第八章

「どうなったか確認されたのですね」
「昼間偵察に出たアメリカ軍から報告が届いた」
「そして何と」
「列車砲は破壊されていた」
 つまりだ、作戦は成功したというのだ。
「完全にな」
「それは何よりですね」
 クレイドルはノルバートのその言葉を聞いて微笑んだ。
「苦労した介がありました」
「そうだな、ご苦労だった」
 ノルバートも労いの言葉を贈る、だが。
 ここでだ、彼はこうクレイドルに言った。
「ではこれからはだ」
「これからは?」
「早速、二日後になるがだ」
「まさかと思いますが」
「我がイギリス軍の戦略爆撃は夜だが」
 ドイツ本土への戦略爆撃だ、彼等の重爆撃機ランカスターが装備や装甲がアメリカ軍のBー17に比べてかなり弱いので昼に行くと損害が多いから夜間担当になったのだ。
「その護衛に行ってもらいたい」
「今度はそれですか」
「そうだ、だからだ」
 それでだというのだ。
「二日後からな」
「今度はそちらの作戦への参加ですか」
「君も部下達もだ」
「そうですか、今度は」
「モスキートは使える」 
 この事実をだ、ノルバートは淡々とした口調で述べた。
「だから出てもらう」
「まあ列車砲への奇襲に比べてリスクは少ないですが」
「頼むな、それではな」
「返答は一つしかありませんね」
「軍隊だからな」
 これは命令だ、それならばだった。
「わかったな、ではな」
「了解です」
 クレイドルも敬礼で応えた、彼も軍人だからだ。
「それでは」
「勝利は近い、それまでの辛抱だ」
「だといいですがね」
 クレイドルも部下達も再び出撃することになった、列車砲という獣を倒してもまだ戦わねばならなかった。戦争が続く限り。
 それでだ、彼の言葉を聞いた部下達も苦笑いで言うのだった。
「そうなりますか、やっぱり」
「モスキートですからね」
「何でも使われますね」
「あらゆる目的に」
「仕方ない、戦争が終わるまではな」
 クレイドルはノルバートに言われた言葉を思い出しつつそのうえで言うのった、そしてだった。
 彼もまた出撃する、彼等は今日もモスキートで空を駆るのだった。


獣退治   完


                      2014・1・26 
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