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獣退治

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第七章

「安心しろ、絶対に全員生きて帰えることが出来る」
「わかりました、じゃあ」
「ここは」
 部下達もクレイドルの言葉に応えた、そしてだった。
 四機のモスキートは夜の闇の中を行きの時以上に高速で飛んだ、速度をやや上げたのは全速を出せる速度にする為に。
 実際に全速でだ、彼等は逃げた。
 しかしドイツ軍も追いすがる、彼等とてやられっぱなしでは気が済まない。
 機体が分解されそうな速度でモスキート達を追う、そして。
 後ろから攻撃を仕掛けて来る、これにまた部下達が言って来る。
「隊長、来ました!」
「敵の攻撃です!」
「あの三機が来ました!」
「しつこく追ってきますよ!」
「安心しろ、届かん!」
 彼等の有効攻撃射程には、というのだ。
「当たっても精々へこむだけだ!」
「だからですね!」
「ここは!」
「安心して逃げろ!振り切れる!」
 無事にだというのだ。
「何度も言うがモスキートだからな」
「高速で、ですね」
「逃げられますね」
「ああ、だからだ」
 ここは落ち着いて行けばというのだ。
「安心しろ、航続距離も大丈夫だ」
「ええ、モスキートは航続距離もありますから」
「有り難いことに」
「だからこいつはいいんだ」
 それ故に様々な目的に使われてきたのだ、モスキートは速度が速いだけでなく航続距離も長いのだ。それ故に器用貧乏に使われてきているのだ。
 それでだ、ここでもこう言ったクレイドルだった。
「ではいいな」
「はい、では」
「このままですね」
「敵を振り切り」
「そのうえで」
「メッサーシュミット109でもだ」
 ドイツ軍の主力機であるこの機体でもだというのだ。
「今のモスキートにはな」
「追いつけないですか」
「絶対に」
「だから安心しろ」 
 安心して逃げろというのだ。
「いいな」
「わかりました、じゃあ先導をお願いします」
「そうして下さい」
「下から二十ミリが来てもだ」
 二十ミリ四連対空砲だ、ドイツ軍が四号戦車の車体に機関砲座を設けた対空自走砲である。彼等にとって驚異の一つだ。
「安心しろ」
「それもですか」
「怖くないですか」
「夜だ」
 彼等が今飛んでいる時間から言うことだった。
「夜に狙ってきてもな」
「排気炎は思いきり出していますが」
「それでもですね」
「そうそう当たるか」
 だから安心していいというのだ。
「ではこのまま帰るぞ」
「はい、基地まで」
「それで祝杯ですね」
「スコッチを」
「好きなだけ飲め」
 スコッチ、それをだというのだ。こう部下達に告げてだった。
 クレイドルは先頭を進み部下達もついていく、そうして。
 遂にメッサーシュミット110を振り切りそのまま逃げた。対空陣地はクレイドルが上手く抜け部下達もはぐれなかった、そしてだった。
 遂に基地に戻った、幸い被弾はしていても微々たるものだった。四機のモスキートは無事全機帰投した。戦死者も負傷者もいなかった。
 それでクレイドルは部下達に約束していた最高級のスコッチを奢った、この日彼も酒を心ゆくまで楽しんだ。
 そして次の日だ、彼はノルバートのところに呼び出された。そのうえで彼の口からこう言われたのだった。 
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