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外から来た邪

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第五章

「ですから」
「狩り場に行ってそうして」
「倒しましょう、ですが」
「ですが?」
「ですがっていいますと」
 フェリペだけでなくエンリコも神父の言葉に問い返した。
「何かありますか?狩り場に行く為に」
「何かが」
「はい、あります」
 神父は真剣な面持ちでその二人に答えた。
「狩り場に行くのなら餌が必要ですね」
「餌、ですか」
「それですか」
「そうです、今私達は十字架と聖書で自分の身体を護っていますが」
「その十字架と聖書を外す必要がある」
「そういうことですか」
「そうです、しかも相手は銀を持っていても反応しますので」 
 銀は異形の者が嫌う、彼等を倒す力だ。それでなのだ。
「それも外さないといけません」
「じゃあ俺達じゃ無理だな」
「出来ないですね」
「そうです、囮になってくれる人がいて欲しいのですが」
 神父が今困っているのはこのことについてだった、それでだった。
 彼はその囮を誰にしてもらうのかで何とか知恵を出そうとした、しかしその知恵はフェリペが出して来た。 
 フェリペはだ、エンリコとフェリペ親戚ということもあり実によく似ているというかそっくりの二人に言うのだった。
「依頼者に頼むか」
「依頼者?」
「依頼者っていいますと」
「まあ俺に任せてくれよ、その人に頼むからさ」
「囮をですか」
「それをしてくれそうな人にですか」
「ああ、頼むからな」
 こう言ってだった、そのうえで。
 彼はその日のうちに囮役の人を連れて来た。その人はというと。
 最初にこの話を持って来た役人だ、役人はフェリペとカルロスから話を聞いて驚いた顔になって言った。
「おい、僕がかい」
「はい、囮役です」
 明るい笑顔でだ、フェリペは役人ロベルト=ネイに話した。
「お願い出来ますね、依頼者として」
「依頼して終わりじゃないのか」
「いえいえ、依頼者のお仕事は途中経過を見ることもですから」
「そんなことは初耳だよ」
「今そうなりました」
 笑って答えるフェリペだった。
「めでたく」
「めでたくないよ、けれどだよ」
「はい、ご安心下さい」
 今度は親父が答える。
「妖怪は私達が責任を以て」
「倒してくれるんだね」
「そうします」
「まあ神父さんが仰るのなら」
 信頼される立場の彼がだというのだ、フィリピンは信仰心の篤いお国柄なので神父は信頼されるのだ。
「それなら」
「はい、それではご協力をお願いします」
「わかりました」
「何か俺の時と対応が違いますね」
 フェリペは神父には礼儀正しい役人の言葉を聞いて言った。
「何でですか?」
「それは信頼の差だよ」
「信頼のですか」
「神父さんを信頼しなくて誰を信頼するんだよ」
「俺しかいないじゃないですか」
「君の何処が信頼出来るんだ」
 容赦のない返答だった。 
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