機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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desire 3 レイ・ザ・バレル
前書き
レイ視点での物語。
デュランダル「着任おめでとうレイ。これで君も一人前のパイロットだな」
ギルからの言葉に俺は頷くことで答える。
しかし、1つだけ疑問がある。
レイ「…ギル、一つお聞きしてもよろしいですか?」
デュランダル「何だね?」
レイ「何故…彼に?」
レイが疑問に思っているのは最新鋭のMSインパルスであった。
セイバーは元々アレックスが乗ることを前提にしている機体だからまだ分かる。
しかし何故、FAITHであり適応力が高いナオトではなくシンにインパルスを授けたのか…?
デュランダル「ああ、インパルスのことか、彼が一番適している…そう判断したからだよ。ナオトではなく彼にインパルスを託したのは彼の資質を見込んでの決定だよ。本当の平和を実現するためには、アレックスや彼の力がいずれ必要になるはずだからね…」
その言葉に俺は少し疑問を感じながらもギルの言うことに間違いなどないと判断し、頷いた。
そしてギルは間違っていなかった。
再び起こった戦乱の中、シンは目覚ましい活躍を重ね、幾度もアレックスと共にミネルバの危機を救った。
そして仲間の助力があったとはいえ、ついにはあの男…キラ・ヤマトのフリーダムをも討ったのだ。
シンは精神的に幼いところもあり、決して模範的な軍人ではなかったが…その実力はアレックスと比べても遜色のない程に成長していった。
しかし。
ジブリール捕獲作戦。
シン・アスカはオーブ本土への攻撃に対し、心理的抵抗があると思われたが、自らの意志により出撃。
フリーダム及びジャスティスの改良型と見られる機体の参入あり。
パイロットはキラ・ヤマト及び、アンドリュー・バルトフェルド。
不測の事態によりザフト側の状況悪化。
ジブリールが乗っていたと見られるシャトルを補足するも、セイバーとデスティニーはこれの撃墜に失敗。
世界は今、ギルの手で生まれ変わろうとしている。
理念だけでは革命は為し得ない。
必要なのは理念とそれに伴う“力”だ。
現在の俺はアレックス達と共にジブラルタルに戻ってきていた。
奴らの思惑に気づいたアレックスがミーア・キャンベルとギルを守るための策。
アレックス「準備はいいか?」
ナオト「ばっちりだよアレックス!!」
アレックス「各々任務内容は完璧か?」
ナオト「私はオーブの回線の妨害を」
レイ「俺は全メディアに彼らの罪状を」
シン「俺はアレックスと一緒に歌姫の護衛を」
アレックス「よし合格だ。やる時はやるんだな」
レイ「当然です。俺達にはこれ以上の失敗も…小さなミスすら許されない」
ただでさえ、ジブリールの捕獲に失敗している。
これ以上のミスは許されない。
シン「うわ、レイ、すげぇ殺る気満々だよ」
ナオト「そうだね…とにかく私達はどこまでもアレックスに付いていくよ!!」
アレックス「ありがとう。ではミーアを…仲間を助けに行くとするか!!」
俺達には全てお見通しだ。
奴らの思惑など。
ならばこちらも、全力でいかせてもらうとしよう。
カガリ『過日、様々な情報と共に我々に送られたロゴスに関するデュランダル議長のメッセージは確かに衝撃的なものでした。ロゴスを討つ。そして戦争のない世界にというの議長の言葉は、今のこの混迷の世界で政治に携わる者としても、また生きる一個人としても確かに魅力を感じざるを得ません。ですが、議長は、ロゴスが意図的に“世界”とやらを操作し、戦争を起こしてきたと言う。これはつまり、ロゴスという、民間の一組織が、世界各国の世論を誘導し国家間紛争を誘導してきたという意味であると解釈している。個人的にはこれだけで既に大いに疑問があるが、仮にそうだとして、これを裏付ける証拠はどこにあるのか?議長はまず、これを立証するべき……』
画面が乱れ、ミーアが現れる。
ミーア『私はラクス・クラインです。過日行われたオーブでの戦闘はもう皆さんも御存じのことでしょう。プラントとも親しい関係にあったオーブが、何故ジブリール氏を庇うような発言をするのか理解することは出来ません。ブルーコスモスの盟主、プラントに核を放つことも巨大破壊兵器で街を焼くことも、子供達をただ戦いの道具とするこもと厭わぬ人間を、何故オーブはそうまでして庇うのでしょうか。私達の世界に、誘惑は数多くあります。より良きもの、多くのものをと。望むことは無論悪いことではありません。ですがロゴスは別です。あれはあってはならないもの。この人の世に不要で邪悪なものです。私達はそれを……』
?『その方の姿に惑わされないでください』
また画面が乱れ、再びオーブのカガリ・ユラ・アスハが映る。
そしてその横には……。
ラクス『私はラクス・クラインです。私と同じ顔、同じ声、同じなの方がデュランダル議長と共にいらっしゃることは知っています。ですが、私、シーゲル・クラインの娘であり、先の大戦ではAAと共に戦いました私は、今もあの時と同じ彼の艦とオーブのアスハ代表の下におります。彼女と私は違うものであり、その想いも違うということをまずは申し上げたいと思います。私はデュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません』
画面はテレビ局のものが気を利かしたのだろう。
左右に分割され、ラクス・クラインと、ミーアが同時に映っている。
ラクス『戦う者は悪くない、戦わない者も悪くない、悪いのは全て戦わせようとする者。死の商人ロゴス。議長のおっしゃるそれは本当でしょうか?それが真実なのでしょうか?ナチュラルでもない、コーディネーターでもない、悪いのは彼等、世界、あなたではないのだと語られる言葉の罠にどうか陥らないでください。無論私はジブリール氏を庇う者ではありません。ですがデュランダル議長を信じる者でもありません。我々はもっとよく知らねばなりません。デュランダル議長の真の目的を』
…答えも出せずに惑わせているのはどちらの方だ?
アレックス『ふざけたことを言わないで頂きたい。破滅の歌姫よ』
ミーアの隣には彼女を守るように立つアレックスとシンの姿があった。
アレックス『こんにちは、プラント、地球の皆さん。俺は、アスラン・ザラです』
AAの彼らに、妨害されるという考えはなかったのだろうか?
歌姫自らの言葉を疑う者は誰もいないと思っていたのだろうか?
アレックス『プラントを守るアスラン・ザラであると、どうか民衆にはご理解頂きたい。このようにメディアをお騒がせしたこと、心よりお詫びしましょう。ただ私は皆さんに伝えたかったのです。“真実”を。かつて彼女は先の大戦で、地球連合軍に所属していた者に赤服を着せザフトに侵入させ、そしてフリーダムを与えた。』
ラクス『っ、えぇ、それは事実です。ですがそれは…』
アレックス『他にも。行方不明になったエターナルを、クラインの名の下、秘密裏に所持し補給してきた。プラントの財を使って…更にザフトの技術を盗用し、MSを建造していた。』
ラクス『私達には力が必要でした、それは、オーブにもプラントにも全て平和な未来のためです。私はオーブにもプラントにも平和を』
アレックス『笑わせるな、ラクス・クライン。俺達を、ザフトを舐めるのもいい加減にして頂きたい…。それにしても、そんなにあっさり認めるとは思わなかった…。あなた方の罪状を集めた資料も映像も意味がないな』
ラクス『資料?映像?』
シン『ええ、あなた方の罪を纏めた資料と映像ですよ。否定した場合の証拠を集めてたんですよ。あ、ちなみに流れてますから』
ラクス『罪などと…』
アレックス『そうやってあなたはプラントを傷つけるんだな…無自覚に…“偽者の歌姫”』
ラクス『いいえ、アスラン。あなたはご存知でしょう。あなたの傍にいる方こそが偽者だと』
アレックス『ええ、彼女は“ラクス・クライン”の偽者だ。けれどあなたは、“歌姫”の偽者だと言ったんです』
ラクス『…それは、どういう』
シン『プラントの歌姫はプラントに平和と癒しの歌を響かせる存在です。彼女はプラントの歌姫なんですよ。本物の」
ラクス『っ、ですからあの方は、議長に騙された偽者の…』
アレックス『ええ、彼女は…ミーアは確かに偽者だ。“ラクス・クライン”にはどんなに頑張ってもなれない…他人がどうやっても…」
ラクス『なら…』
アレックス『だが、今まで傷ついた人々を癒したのは、紛れも無い彼女だ。』
カガリ『アスラン!!』
ラクス『アスラン、ただ私達は平和のために』
アレックス『平和のためなら何でも許されると思うなよ。これ以上は俺が許さない』
シン『プラントの歌姫は…彼女です。いい加減、俺達を馬鹿にするのは止めてもらえませんか?俺達は生半可な覚悟で戦ってきたわけじゃない』
ミーア『シン…アレックス…』
今頃ナオトはこの回線を妨害しようとするオーブとクライン派を排除している頃だろう。
ならば自分はこの放送を全メディアを電波ジャックしてクライン派の犯した罪と共に放映させ続けることだ。
プツリと、対面するように映されていたラクスの映像はそこで途切れた。
シン『あれ?モニターの故障ですかね?』
アレックス『いや、レイの演出だろう?』
確認したアレックスは笑った。
そんなレイの行動にシンも笑った。
アレックス『プラント、地球に住む皆様、お騒がせしたこと、心よりお詫びします。ですが後悔はしていません。混乱していることをお察しします。2人のラクス・クライン…ですが考えて頂きたい。もう一度、彼女の言葉。先ほどの、このプラントに今いない、ラクス・クラインの言葉。そしてミーア・キャンベルという、ラクス・クラインを偽った少女のことを。確かに彼女はラクス・クラインを偽りました。しかし彼女は世界のことをひたすらに思い続けた。彼女を、俺は偽者という言葉で済ませて欲しくない。そうして理解して頂けたなら、どうか。彼女を受け入れて頂きたい。』
恐らく民衆はミーア・キャンベルを選ぶだろう。
当然だ。
裏切り者の歌姫を望む馬鹿がいるものか。
そしてオーブの放送後、間もなく行われたプラントへの攻撃。
シン「何で……何でこんな……」
レイ「ジブリールだな」
俺の言葉を聞いたシン達が俺を見遣る。
レイ「月の裏側、ダイダロス基地から撃たれた。こっちがいつも通り表のアルザッヘルを警戒している隙に。ダイダロスにこんなものがあったとは……」
ルナマリア「何で!?裏側からってそんなの無理じゃない!!どうやって?」
レイ「奴等は廃棄コロニーに超大型のゲシュマイディヒパンツァーを搭載してビームを数回に屈曲させたんだ」
シン「そんな……」
レイ「このシステムならどこに砲があろうと屈曲点の数と位置次第でどこでも自在に狙える。悪魔の技だな」
シン「くっ、そんな、そんなことを……」
アレックス「俺達がジブリールを逃がしてしまったからか…」
ナオト「そんな…っ!!」
クレア「……」
タリア『みんな連戦で疲れてると思うけど、正念場よ。ここで頑張らなければ帰る家がなくなるわ。いいわね』
ミネルバはカーペンタリアから月艦隊と合流すべく発進した。
ナオト「砲の本体を私達だけでですか?」
タリア「だけかどうかは分からないけど。ともかくそれが本艦への命令よ」
レイ「確かに、ここからではダイダロス基地の方が近い。そういう判断でしょう」
タリア「ええ。あれのパワーチャージサイクルが分からない以上、問題は時間ということになるわ。駆け付けたところで間に合わなければ何の意味もないものね」
アレックス「敵が月艦隊に意識を向けているのならうまくいけば陽動と奇襲になるということですね」
タリア「そういうことよ」
シン「奇襲……」
タリア「厳しい作戦になることは確かよ。でもやらなければならないわ。いい?」
クレア「はい。分かりました」
ハイネ「了解しました。またあれを撃たれるなどもう絶対あってはならないことですから」
タリア「頼むわね」
全員【はっ!!】
アレックス「ブリーフィングを始める。第二射までに月艦隊が第一中継点を落とせれば辛うじてプラントは撃たれない。だが奴等のチャージの方が早ければ艦隊諸共薙ぎ払われるぞ。トリガーを握っているのがそういう奴だということは知っているだろう」
ステラ「うん」
クレア「全ての元凶はあいつだよ。ロゴスのロード・ジブリール!!」
シン「俺がもっと早くセイラン家に着いていれば…」
ナオト「シンのせいじゃないよ。シンもアレックスもあそこで出来る精一杯をやったんだから…」
ハイネ「とにかく続きを説明するぞ。ルナマリアとクレアが直接砲を狙う。もちろん相手の防御も厚いだろう。今までに出てきた陽電子リフレクターを備えた大型MAが出てくる事も考えられる。じゃあ作戦を話す……」
それは、アレックスのセイバー、ハイネのデスティニー、俺のレジェンド、そしてミネルバのタンホイザーまで囮に使った陽動に、更に時間差をつけ、シンのデスティニー、ステラのガイア、ナオトのストライクノワールが攻撃に加わり、ルナマリアのインパルスとクレアのデスティニーインパルスがその混乱した隙に砲のコントロールルームを墜とすという物だった。
メイリン『ブリッジ遮蔽。コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機してください』
アレックス「ではいいなルナマリア、クレア。タイミングを誤るなよ」
ルナマリア「はい」
クレア「分かった」
レイ「俺達も可能な限り援護をする。だが基本的にはあてにするな。すれば余計な隙が出来る」
ルナマリア「分かってるわ。ご心配なく」
アレックス「では行こう…今度こそ失敗は許されない。これ以上、プラントを討たせはしない」
シン「行こう」
シン達がブリーフィングルームを後にした。
クレア「レイ、気をつけてね」
レイ「お前もな」
クレアの言葉に俺はそう返すとブリーフィングルームを後にした。
ダイダロス基地攻略作戦。
ミネルバのMS隊は敵軍の激しい迎撃の中、見事に任務を遂行。
離脱中のジブリール氏を確認後、これを撃破。
…これでいい。
もうすぐだ…。
もうすぐ終わる。
シン達の苦しみも…。
俺達のような苦しみも。
デュランダル『……今私の中にも皆さんと同様の悲しみ、そして怒りが渦巻いています。何故こんなことになってしまったのか。考えても既に意味のないことと知りながら私の心もまた、それを探して彷徨います。私達はつい先年にも大きな戦争を経験しました。そしてその時にも誓ったはずでした。こんなことはもう二度と繰り返さないと。にも関わらずユニウスセブンは落ち、努力も虚しくまたも戦端が開かれ、戦火は否応なく拡大して私達はまたも同じ悲しみ、苦しみを得ることとなってしまいました。本当にこれはどういうことなのでしょうか。愚かとも言えるこの悲劇の繰り返しは。一つには先にも申し上げたとおり、間違いなくロゴスの存在所以です。敵を創り上げ、恐怖を煽り戦わせてそれを食い物としてきた者達。長い歴史の裏側に蔓延る彼等、死の商人達です。だが我々はようやくそれを滅ぼすことが出来ました。だからこそ今敢えて私は申し上げたい。我々は今度こそ、もう一つの最大の敵と戦っていかねばならないと』
シン「……え?」
デュランダル『そして我々はそれにも打ち勝ち、解放されなければならないのです。皆さんにも既にお分かりのことでしょう。有史以来、人類の歴史から戦いの無くならぬわけ。常に存在する最大の敵、それはいつになっても克服できない我等自身の無知と欲望だということを。地を離れて宇宙を駈け、その肉体の能力、様々な秘密までをも手に入れた今でも人は未だに人を解らず、自分を知らず、明日が見えないその不安。同等に、いやより多くより豊かにと飽くなき欲望に限りなく伸ばされる手。それが今の私達です。争いの種、問題は全てそこにある!!だがそれももう終わりにする時が来ました。終わりに出来る時が。我々は最早その全てを克服する方法を得たのです。全ての答えは皆が自身の中に既に持っている!!それによって人を知り、自分を知り、明日を知る。これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。私は人類存亡を賭けた最後の防衛策としてデスティニープランの導入実行を、今ここに宣言いたします!!』
シン「議長…」
デュランダル『デスティニープランは我々コーディネーターがこれまで培ってきた遺伝子工学の全て…また現在最高水準の技術をもって施行する究極の人類救済システムです。人はその資質の全て…性格、知能、才能…また重篤な疾病原因の有無の情報も本来体内に持っています。まずそれを明確に知ることが重要です。今のあなたは不当に扱われているかもしれない。誰もあなた自身すら知らないまま、貴重なあなたの才能が開花せずにいるのかもしれない…それは人類全体にとっても非常に大きな損失なのです。私達は自分自身の全てを、そしてそれによって出来ることをまず知るところから始めましょう。これはあなたの幸福な明日への輝かしい一歩です』
ギルが正しい未来を作るまで、俺が出来ることは後どれくらいあるのだろう?
後書き
レイ視点は難しい…。
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