戦国異伝
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第百五十九話 巨寺その十五
「我等は勝てます」
「確実にな」
「このまま押しましょうぞ」
長可は確かな声で言った。
「第二陣と合流したうえで」
「これで勝ったのう」
中川は自分の読み通りに進んでいることに満足しつつ長可の言葉に応えた。
「雑賀衆を降した後はな」
「うむ、いよいよ石山ですな」
原田もこれからのことを満足し笑顔になる。織田家は本願寺との戦が最後の局面に入ろうとしていることを感じていた。
森も同じだった、大軍を率いつつ雑賀衆に向かいつつ周りに言った。
「よし、ではな」
「このまま雑賀衆の横を攻めますか」
「そうしますか」
「うむ、第一陣と共にな」
彼等と動きを合わせてだとだ、森は共にいる加藤と福島に言った。森は今彼等をはじめとした七将を率いている。加藤嘉明に黒田長政、細川忠興、蜂須賀家政、池田輝政だ。他には石田や大谷、それに島もいる。
「攻めるぞ」
「では鉄砲に注意して」
鉄砲のことは黒田長政が言う。
「一気に攻めますか」
「鉄砲を撃ったその直後にじゃ」
既に森の中では鉄砲の破り方があった、一度撃たれることは仕方ないとしてだ。
「すぐに騎馬隊を突進させるぞ」
「そして鉄砲隊が次の鉄砲を込める前に」
「一気にですな」
「騎馬隊の突進で突き崩す」
そうするというのだ。
「それで倒すぞ」
「わかりました、では」
「その様に」
忠興と輝政が応える、彼等もまた勝利を確信していた。
しかしここでだった、不意に。
法螺貝が鳴った、雑賀衆の向こう側からだ。その声を聞いて誰もが目を瞠ってそのうえで言った。
「?法螺貝?」
「これは一体」
「何故雑賀衆の向こうから」
「法螺貝が」
「まさか」
ここでふとだ、大谷が怪訝な声で言った。
「一向宗が」
「一向宗!?では紀伊からか」
「あの国から来たのか」
家政と嘉明が大谷の言葉に応える、そして島も言った。
「まさかと思いますが」
「あの闇の服の者達か」
「はい、あの者達ではないでしょうか」
こう言ったのである、森に対しても。
「これまで摂津等では出なかったそうですが」
「ここ出て来たのか」
「はい、若しそうであれば」
島はその目を鋭くさせて森、そして他の者達に言う。
「これは大きな戦になりますぞ」
「うむ、これはな」
厄介なものになるとだ、森も身を引き締めた。すると大谷の懸念通り。
闇の服の者達が来た、その彼等がだった。
雑賀衆の後ろから出て来た。またしても彼等との大きな戦になろうとしていた。
第百五十九話 完
2013・11・9
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